経営改善
2020/06/24
近年の中小企業では、後継者不足の問題が深刻化してきています。後継者不足により、廃業になってしまう企業が増加するのではないかとの懸念が生まれています。
次々と中小企業が廃業に追い込まれてしまえば、経済の衰退につながる恐れもあります。
そこで今回は、後継者不足により本当に廃業は増えてしまうのかという点に注目しながら、実際に廃業した事例や解決策などをご紹介します。
現時点で跡継ぎについて悩んでいるという方や、将来的に後継者問題に陥るかもしれないと危機感を覚えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
経営自体は何の問題もなくても、経営者の高齢化や健康状態の問題で会社経営を退こうとしたとき、後継者不在でやむなく廃業するケースがあります。
後継者不足に陥る理由はいくつか挙げられます。少子高齢化の影響でそもそも人手不足になっていることや、親族への事業承継はトラブルが起きやすいことから承継したがらない場合があります
他にも事業承継を拒否する理由として挙げられるのは、その会社の業種に将来性を感じられないというものです。
経営者が急に体調を崩すなどして、急ぎ事業承継したい状況に陥り、後継者を育成する時間がなくやむなく廃業を選ぶというケースもあります
後継者不足の中で廃業が問題となっていますが、改めて、廃業と倒産の違いについて確認しましょう。
廃業は自主的に会社運営をやめること、倒産はこれ以上会社を運営できないことです。それぞれもう少しくわしく解説します。
廃業とは、跡継ぎがいなかったり、経営者の高齢化や病気などが原因で、事業をストップさせたりすることを言います。そのため、後継者問題がクリアされれば事業をそのまま継続することができます。
経営者自身が経営から引退しても、親族への事業承継や第三者へのM&Aを行うことで問題解決に至るケースが多いです。
倒産とは資金繰りがうまくいかず、会社経営をストップせざるを得なくなることを言います。跡継ぎとなる人材はいるのに、経営面の悪化で事業が続けられなくなってしまうのです。
倒産にも種類があり、主に「法的倒産」と「私的倒産」に分けられます。
法的倒産は法的手続きから債務整理を実施し、経営の立て直しを図ったり支払い不能なら破産申告を行ったりすることになります。私的倒産は取引の停止処分や任意整理(内整理)を行った結果、倒産する場合を指します。
後継者不足による廃業は、特に老舗と呼ばれるような企業・店舗で見られます。どのようにして廃業していったのか、具体的な事例をご紹介します。
駄菓子としても親しまれていた梅ジャムは、梅の花本舗が製造した商品です。梅の花本舗では昭和22年から元祖梅ジャムを販売しており、駄菓子屋を中心に商品が展開されました。
経営は比較的順調でしたが、社長の高齢化によって体力が落ち、関節を痛めてこれ以上無理できない状態にまで至ったため、廃業を決めたそうです。
廃業を決めた後、事業を引き継ぎたいとの申し出もあり、会社を存続することは十分に可能でした。それでも、徐々に駄菓子屋が減少していったり、少子化が進んだり、さらに昔に比べて子どもの味覚が変化していることから、今後続けていても採算が取れなくなると判断し、廃業の道を選択したのです。
金沢の湯涌温泉にあった老舗旅館「新右ヱ門・秀峰閣」も廃業しました。
北陸新幹線の開通にともない、業績が上がっており、テレビアニメの舞台とされ話題になりました。ところが、後継者不足に加えて従業員不足に悩まされ、廃業の道を選んでいます。
土地と建物は第三者に売却されるそうです。
羽衣文具株式会社は、チョークを製造する会社として経営を続けてきましたが、2015年に廃業の道を選びました。
愛知県春日井市を中心にチョークの製造・販売を手掛けていた羽衣文具は、国内のシェアも約3割で1990年には約9,000万本も作っていたそうです。
しかし、経営者の体調悪化を理由に後継者探しを始めましたが、結局後継者になり得るような人物を見つけられず、会社自体も赤字が続いたため廃業を選んだそうです。
東大阪にあった鋳物業者、上田合金は2015年に廃業しています。上田合金は工業製品だけではなく、博物館向けに銅鐸などの復元も行っていました。
廃業の理由は、社長が急死したことです。後継者についての話をしておらず、負債もあったため廃業することになりました。
八景亭は、滋賀県の彦根城の園庭にある料理旅館です。江戸時代からある建物でおいしい料理を楽しめると人気でした。
経営者が病気になったため、後継者探しをしました。しかし、なかなか合う人が見つからず、建物の老朽化という理由もあって、廃業という選択をしています。
昔から親しまれていた商品の販売や、国内シェア3割という数字を誇っていた企業であっても後継者不足の影響で廃業を選択しています。
中小企業が後継者問題を解決しようと考えたとき、親族や従業員から後継者を選ぶだけではなく、M&Aでは第三者へ会社を譲渡する方法があります。
第三者へ会社を譲渡するというと悪い印象を思い浮かべる方もいますが、実際にはさまざまなメリットが得られる方法です。
廃業とM&Aでは、純粋に経営者の手取りが変わってきます。
例えば廃業した場合、現在の預金から在庫の処分費用や借入金の返済など、大きな負債を抱えてしまう恐れがあります。しかし、M&Aなら会社が保有する建物や機械などを評価してもらい売却できるため、負債をなくすこともできるのです。
特に、企業価値が高ければ高いほど会社を高額で売却でき、引退後の生活にも困らないでしょう。
廃業するということは、従業員の働く場所もなくなってしまうということです。そのため、従業員は路頭に迷ってしまう可能性があります。
M&Aなら雇用契約はそのまま継続されるため、従業員も安心して働けます。
また、これまで長きにわたり築き上げてきた取引先との関係も、M&Aを行えばお世話になってきた取引先に迷惑をかけることなく関係を守れるのです。
後継者問題に悩む経営者をサポートするために、国や自治体などが支援体制を整えています。東京都を例にし、どのような支援が受けられるのか紹介します。
東京都事業承継・引き継ぎ支援センターは、国の事業です。経済産業省関東経済産業局から委託を受け、東京商工会議所が運営しています。
後継者問題で悩んでいる中小企業に対し、情報提供や専門の支援機関をつなぐといった支援を行っています。そして、M&Aに関する相談が無料でできます。
買手側と売手側の条件が一致した時、M&Aの際にお互いの情報が社外に漏れないよう、秘密保持契約の手続きを行ってから条件交渉に入ります。交渉が進み、両者合意となったら事業承継の手続きを行うのですが、この時M&Aの専門家を紹介してもらうことも可能です。
後継者がいないことで悩んでいる企業経営者と、起業を目指す人材をマッチングさせる後継者人材バンクも事業の一つです。
後継者人材バンクは、企業経営者に向けて後継者になる人材をマッチングさせる取り組みを行っています。後継者人材バンクを利用する際には、申し込んでから面談をし、ノンネームシートと呼ばれる会社情報を記載した書類を作成して手続きを済ませます。
マッチング後は秘密保持契約を結び、お互いの情報が社外に流出しないようにするため、安心してサービスを活用できるでしょう。
事業承継補助金は、事業承継から新たな取り組みを目指している後継者を対象にした補助金制度です。後継者承継支援型と呼ばれるⅠ型と、事業再編・事業統合支援型と呼ばれるⅡ型があり、Ⅰ型とⅡ型で目的と補助金の上限が変わってくるため、注意が必要です。
後継者が会社を引き継いだ際に、新たな事業を開始するための一部経費の補助を目的としています。
小規模事業者だと200万円の上限で補助率が3分の2、それ以外の事業者だと150万円の上限で補助率は2分の1となります。また、事業所の廃止や事業の集約・廃止を行う場合、最大300万円の上乗せが可能です。
Ⅱ型はM&Aを行い、新たな事業を開始しようと考えている方向けの補助金制度です。Ⅰ型とは異なり、上限額は審査結果によって決められます。
例えば、審査結果で上位に入れば600万円の上限で補助率が3分の2、上乗せ額は最大600万円まで可能です。逆に上位ではなかった場合、450万円の上限で補助率が2分の1、上乗せ額は最大450万円までとなります。
中小企業にとって後継者問題は非常に深刻な問題です。本来であれば業績も問題なく、存続すべき会社であっても、後継者不足によって廃業を選択せざるを得なくなっています。
しかし、廃業以外にも選択肢は存在します。M&Aは廃業よりもオーナーや従業員、取引先にとってメリットの大きな方法です。
M&Aを選ぶメリット
・経営者の手取りが増える
・従業員の雇用が継続でき取引先との関係を守れる
後継者不足で廃業を選択するよりも前に、M&Aについて検討してみましょう。
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