M&A
2020/05/20
企業価値を上げるはずの企業買収も、失敗してしまえば大きな損失となります。
華々しい成功をイメージしがちな企業買収は、実は成功率が大変低く、全体の70%は失敗に終わるという事実を知っている人は多くないでしょう。
これから企業買収を予定しているなら、ぜひ失敗の要因を事前に把握しておくべきです。
今回は企業買収で失敗しないために大切なポイントをご紹介します。
目次
企業買収は、既存事業の領域を拡大したり、新規事業を効率的にスタートしたり、企業の成長スピードを上げたりなど、様々な経営目的で行われます。
企業買収に成功すれば、シェアの拡大や人材の取得も達成でき企業として成長できるでしょう。
国内でも大規模な企業買収から、小規模な企業買収まで様々な取引が実施されています。
基本的に、企業買収は明確な目的があって行われるべき取引です。
つまり、当初の買収目的が達成できなければ、その企業買収は失敗と言えます。
既存事業の領域拡大を目的とした企業買収で、既存事業の強化が達成できなかったケース、新規事業スタートに向けたコスト削減効果やノウハウの取得ができなかったケースなどは、結果として企業買収の失敗事例と言えるでしょう。
企業買収で当初の目的が達成できず失敗してしまう理由はどこにあるのでしょうか?
実は日本における企業買収の市場は2016年の時点で15兆円、その後も市場は拡大傾向です。
しかし、華々しい成功事例の陰で、多くの企業買収が失敗に終わっています。
企業買収が成功している割合は30%、失敗している割合は70%で、多くのケースで企業買収は失敗に終わっているのです。
なぜ企業買収に失敗してしまうのか、失敗の理由に迫ってみましょう。
企業買収は経営戦略上の目的をもって行うものです。
既存事業の強化や、新規事業のノウハウ獲得などの目的で行うべき企業買収を、買収そのものを目的としてしまうと失敗する確率は高くなります。
企業買収がゴールと考えてしまい、M&A自体が目的となってしまえば企業買収は失敗しやすいでしょう。
あくまでもM&Aによる企業買収は、経営戦略上では、スタートラインに立ったにすぎません。
M&A自体が目的となっている中小企業の経営者は意外と多いので注意が必要です。
企業買収の失敗は、買収前から始まります。
買収を成功させるためには買収前の戦略立案が重要で、企業経営戦略をしっかり練っておかなければ失敗の確率は高くなるでしょう。
買収先を選定する際には、明確な経営戦略に基づいての判断が必要です。
M&A仲介業者やアドバイザーから買収先の紹介を受けても、自社の経営戦略が明確でなければ選択ミスをしやすくなります。
事前準備で、何に期待してどのような企業を買収候補にするかなど、細かい部分まで設定しておくべきです。
単純に利益が出ているから、買収しようという安易な考えでM&Aを行えば必ず失敗します。
買収後に安易な考えであったと気付いても後の祭りとなってしまいます。
買収の交渉時にも失敗の原因は潜んでいます。
まず、デューデリジェンス(DD)不足は失敗の大きな原因となるので見落としは厳禁です。
対象となる企業の調査は、専門家に依頼することが重要となります。
典型的な失敗要因として、経営者自身や従業員が対象企業の財務状況やコンプライアンス、将来性やリスクなどの企業調査を行うことが挙げられます。
確かに、専門家に調査を依頼すれば時間もコストもかかるものの、企業買収の成功にはDDによって得た情報から正確な経営実態の把握が欠かせません。
特に、中小企業のM&Aにおいては、十分な企業監査が行えている企業が少ないため、簿外債務といった通常では見えにくい部分はDDの調査で実態が見えてきやすくなるため、失敗しないためにも専門家に相談・調査の依頼をしましょう。
また、交渉時の調整不足も企業買収が失敗する要因です。
コミュニケーション不足があれば、現場の従業員のモチベーションが下がり、結果として混乱が生じる可能性もあります。
企業統合の必要性、変革のメリットなどをお互いに納得できるように、丁寧に調整していきましょう。
企業買収の失敗理由は買収後のPMIにもあります。
PMIとは買収後の経営統合作業のことで、一連の企業買収プロセスの中で最も重要な部分となります。
統合のシナジーをより早く実現して、企業としての価値をいかに高めるかは、PMI策定にかかっていると言っても過言ではないでしょう。
買収後のPMIを進行計画の策定と、計画実行を行う人材の人選を買収前から行っていないと、PMIは失敗に終わり、結果として、M&Aによる買収自体が失敗となります。
企業買収の失敗例を確認しながら、失敗理由を探ってみましょう。
プライベートジムの事業を展開するライザップは、美容や健康分野、アパレル分野などの企業を積極的に買収してきました。
印象的なテレビCMで注目されたライザップは、2019年の3月期の最終損益で70億円という大きな赤字へと転落しています。
ライザップが買収してきた企業は主に業績不振の企業で、買収した企業の業績改善を進めて、グループ全体の成長を目指していました。
しかし、ゲームソフト販売事業を展開するワンダーコープレーション、フリーペーパーの「ぱど」、補正下着マルコの「MRKホールディングス」など、買収した子会社の連結最終損益は、2018年4~9月で85億円の赤字という結果になっています。
失敗要因は、成長投資としての見通しの甘さだと考えられます。
つまり、買収前の投資決定判断と買収後のPMIが想定以上に上手くいかなかったことが原因と言えます。
日本企業が海外企業を買収する事例も増えています。
国内での低迷を背景に、海外に活路を求める企業が増え、武田薬品工業がヨーロッパの医薬品メーカー「シャイアー」を約6.2兆円で買収したことも記憶に新しいのではないでしょうか?
ビールメーカー各社も、国内消費が冷え込んでいることから、アサヒ・サントリー・キリンそれぞれが海外企業の買収に乗り出し、明暗を分けました。
アサヒグループホールディングスは、オーストラリアの「カールトン&ユナイテッドブリュワリーズ」を約1兆2000億円で買収、サントリーHDはアメリカの「ビーム」を約1兆6500億円で買収し成功を収めています。
しかし、キリンHDは2011年に買収したブラジル事業「スキンカリオール」で大きな損失を出してしまいました。
約3000億円をかけた買収で、1100億円の損失を出し、結局は770億円で売却しています。
他社との激しい競争、景気の減速などによって業績不振に陥る結果となりました。
企業買収は大きく業績を上げられる分、大きなリスクも伴います。
失敗しないためのポイントを把握しておくべきポイントをご紹介します。
中小企業の場合やはじめてM&Aで企業買収をする際は、まずは足元を固めて身の丈に合った買収をすることが基本です。
身の丈とは、買収価格だけではありません。
社風や企業文化、従業員心理など、一緒にやっていけるというイメージが湧くかどうかがポイントとなります。
また、この会社なら失敗しても、次の売却先が見つけられるなど、投資前から失敗した場合を想定して投資判断をすることが重要です。
企業買収が成功するかどうかはパートナー選びも重要ポイントです。
失敗しないためには、企業買収・M&Aの経験が豊富で、業界に詳しい専門のアドバイザーを選ばなければなりません。
金融機関や弁護士、M&A仲介会社など様々なアドバイザーがいるので、企業買収をトータルでサポートしてもらえるかどうかを見極めましょう。
基本的に、金融機関は企業買収に必要な費用の融資が専門分野です。
弁護士も、法律に関する部分が専門分野で、専門分野以外については他のアドバイザーが必要となります。
企業買収には幅広い分野に関する専門知識が必要で、企業買収を成功させた実績があるアドバイザーに相談すべきと言えるでしょう。
企業選定のアドバイスから買収後の統合プロセスまでをトータルで任せられる、企業買収専門のアドバイザーを選ぶことが失敗を避けるポイントです。
企業買収を失敗させないために、事前に買収後のシナジー効果はしっかり考えるべきです。
シナジー効果を考えなければ、企業買収は失敗に終わります。
関東エリアで事業を展開している会社が、関西エリアでの販路を得るための買収を行う例で考えてみましょう。
規模の小さい関西エリアの会社を買収して、数年で会社の規模を拡大できると考えていても、実際に規模の拡大が実現するかどうかは未知数です。
だからこそ、この場合は関西エリアの市場調査をもとにシナジー効果を考えなければなりません。
欲しいシナジー効果が本当に得られるかを、丁寧に分析しなければ失敗のリスクは高くなります。
実際の買収にこぎつけた後のPMI、つまり経営統合作業の準備は確実に進めましょう。
具体的なプランを作成して課題を整理していきます。
まずは、経営体制や組織構造の統合をどうするか、そして、人事・総務系の制度面の統合、さらにはオペレーション系の業務システム統合、そして、事業内容・取引先の見直しなども必要となるでしょう。
また、業務評価制度の見直しも企業買収による統合の効果分析には欠かせません。
企業価値を効果的に上げるため、何を変革しどの部分を重点的に行うか、しっかりとPMIへの準備を整えておけば、失敗のリスクは下げられるでしょう。
企業買収は実際に買収後に失敗に気づいても遅いケースがほとんどです。
失敗しないためには、いかに買収前に準備をするかにかかっています。
買収し子会社化するということは、経営や管理を親会社と同じにするという単純なことではありません。
あくまでも目的はお互いの企業価値を上げることなので、どの部分を変えていくか、どんな方向性で変えていくか、結果として将来のビジョンはどうか、買い手側と売り手側がコミュニケーションを取りながら詰めていくことが不可欠です。
はじめに、「買収する目的を明確にする」ことが重要です。
その上で、買収する目的を基準として、買収候補の案件精査を行いましょう。
判断する中で、自らの会社に買収後の運営を任せられる人材がいるかどうかも投資判断をする上で重要です。
仮にいなければ、人材の教育や準備を進める必要があります。
買収候補が絞られたら、次は買収後のことをイメージします。
相手方(買収候補)から出される事業計画をもとに、買収後のシナジー効果を考慮した事業計画の再考をします。
その後、事業計画を遂行するにあたり、PMI計画(アクションプラン)を作成し、買収後のイメージをより具体化させましょう。
この様な点を踏まえて、総合的に投資判断をおこなえば、M&Aの失敗の確率は下がるはずです。
想定外のことが起こった場合も、柔軟に対応しながら課題を見つけて成功に導いていけるように、買収前から準備を進めましょう。
今回は、企業買収が失敗する要因について触れながら、失敗させないためのポイントをご紹介しました。
買収することは目的ではなく、買収によってお互いの企業価値が上がることが目的です。
目的を見失えば、事前の準備もおろそかになり、結果として買収は失敗してしまうでしょう。
時代の変化に合った会社にする、シェア拡大を図る、新規事業を発展させるなど、企業買収の目的は様々です。
目指す未来を手に入れるために、どんな企業を買収すべきか迷っているなら、検討の初期から相談でき、独自の企業データを保有している専門アドバイザーを活用しましょう。
企業買収の成功率は低いからこそ、経験とノウハウが豊富なアドバイザーを活用し、失敗しない準備を整えてから企業買収に臨んでください。
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