経営改善
2020/06/01
会社経営では赤字決算に陥ってしまう場合も少なくありません。
そもそも、あえて赤字決算を選択するケースもあります。
ただし、赤字決算が長期的に続くとさまざまな経営リスクを招いてしまうため、あまりおすすめできません。
赤字決算が会社経営に対してどのような影響を与えるのか、また健全経営を行うためにできることは何か、ご紹介していきます。
目次
赤字決算とは、会社の売上よりも仕入れや経費が多く、結果として営業・経常の損失を出すことを指します。
会社の経営は利益を追求して行うことが基本なので、赤字決算は原則的には避けるべきです。
会社経営は、商品を仕入れ、その仕入れた価格よりも高い価格で売ることで、手元に残るお金が増え利益を出すことで成立します。支出を少なくし、収入を大きくすることをサイクル化することで黒字決算を目指すのが企業の本来のあるべき姿です。
しかし、さまざまな理由で最終的な決算で赤字を出してしまうことがあります。
一般的に赤字という言葉自体にはマイナスイメージがあるものの、赤字決算にはデメリットがある反面、メリットもあるので、経営者は赤字決算の影響をしっかり把握しておきましょう。
赤字には主に4種類あります。
1. 営業赤字
2. 経常赤字
3. 当期純損失
4. キャッシュフローの赤字
国税庁の調べで、日本の全法人の中で、赤字経営となっている法人の割合、6割を超えることが分かっています。
日本国内の法人の99%は中小企業ということから考えると、多くの中小企業(全体の6割以上)が赤字経営に陥っているのが現状です。
それぞれの赤字タイプごとに、赤字経営に陥る理由を見てみましょう。
経理上の営業赤字は、本業の営業で上げた利益がマイナスになることで起こります。つまり、本業での赤字と言えます。
企業が衰退する危険度が高い状態で、取引先や金融機関の信用度も下がる経営状態です。
ただし、減価償却費は現金の支出を伴わない経費のため、減価償却費を含めた赤字の場合と、そもそもの営業赤字とは区別して考える必要があります。
経理上の経常赤字は、本業の事業と営業外の収支がマイナスになることで起こります。営業で利益を上げて黒字になっていても、金利などの負担が大きいなどの理由で全体として赤字に陥るケースです。
企業が衰退する危険度は高く、取引先や金融機関の信用度が下がります。
特に金融機関は、利息が大きな収入の一つです。利息を払った後の利益が赤字ということは、金融機関からは利益を還元してくれない企業と見られ信用が下がるのは言うまでもありません。
経理上での当期純損失は、最終的な利益がマイナスになったときに起こります。法人税などを支払った上での経営活動の成果が赤字ということを意味します。
営業利益や経常利益がプラスの場合でも、最終的な利益がマイナスになれば当期純損失の状態です。
中小企業では資産の売却損などで当期純損失となるケースも多くなります。
4つの「赤字」の中で、最も注意が必要なものが、キャッシュフローの赤字です。
営業利益や経常利益、当期の最終利益が赤字であっても、減価償却費のように現金の支出がなくても経費計上できるので、キャッシュフロー上は黒字で損益上では赤字という会社が多くあります。
キャッシュフローの赤字は、現金の収支でマイナスが出ることで起こります。
現金がないという状況では経営の継続は困難であり、経営破綻に突き進むしか道はありません。
もちろん、赤字経営となれば会社は成長できません。
しかし、数多くの中小企業が赤字経営に追い込まれながらも、実際に清算や破産に追い込まれる会社は全体の1%程度です。つまり、キャッシュフローが赤字であることが経営上、大きな問題なのです。
赤字会社には「経営者」「取引形態」「過度な節税」に、ある共通点があります。
それぞれの特徴を詳しく見てみましょう。
会社が赤字になるのも黒字になるのも、責任の9割は経営者にあります。赤字から脱却したければ、経営者を変えるしかないとさえ言われるほどです。
赤字経営から抜け出せない経営者の多くは、なぜ赤字に陥っているかを客観的に分析していません。
財務状況を的確に判断できず、やみくもに人件費を削減するなどの間違った対策を行って、より業績が悪化して赤字が深刻化してしまうことも少なくありません。
なぜ赤字になっているかの本質を見極められない経営者は、正しい経営判断も行動もできないでしょう。的確な赤字打開策も打ち出せず、資金を投入してもコストに見合った効果を得られない結果となります。
また、「やりたいこと」と「やれること」を勘違いしている経営者も多くいます。
なぜ顧客から自社が選ばれているのか?
その理由を知ることが、赤字脱却の第一歩と言えるでしょう。
赤字決算になるということは、社会情勢の変化に経営判断がマッチしていないことにも原因があります。
既存の商品やサービスに固執する下請け体質だと、時代を先取りした新しい経営戦略は打ち出せません。
取引形態や取引先、顧客を過去の成功だけに頼って選択すると、変化する時代に取り残され赤字に陥ってしまいます。
経営者は税金の支払いを渋る傾向があります。資金繰りで悩んでいるからこそ、できる限り節税をしたいと考えるのも理解できますが、赤字のことよりも節税にばかり意識が向いています。
税金を支払うことが“悪”という価値観(税金を払う=お金を取られるという価値観)を持っている経営者が非常に多いです。
節税自体が悪いということではありません。
消費税はお客様や取引先からの預り金であり、支払義務があります。法人税は、確かに諸外国と比べ高い傾向にありますが、税金をしっかりと払うことで得られるメリットもあります。
節税はあくまでも、税の繰延に過ぎません。決められた法律の中で、適切な節税をされることをおすすめします。
赤字決算のメリットは、節税できることです。
赤字決算になると税金を納めずに済むという制度があり、あえて赤字決算にする会社もあります。
法人税の計算は利益をベースに計算するため、利益が発生していない赤字決算の場合は法人税の支払いが不要です。赤字分は翌年度以降に繰り越して、翌年度以降の法人税の節税もできます。
さらに中小企業の場合は、赤字を出した前の期に収めた法人税も還付金として受け取れます。
このように、赤字決算には税金上のメリットがあるのです。
赤字決算となってもすぐに倒産するわけではないものの、経営上のデメリットはあります。
最も大きいデメリットは、金融機関からの信用が低下し融資が受けにくくなる点です。
新規の銀行融資が受けにくくなるため、運転資金が足りない場合は資金調達が難しくなり倒産リスクが高くなってしまいます。
特にキャッシュフローが赤字の会社は注意が必要です。
赤字決算が続いて赤字が累積していくと、問題は深刻となります。
会社を存続させるためには、事業活動を通して利益を出し続けることが大切です。累積赤字が増え続ければ、最終的には債務超過となり倒産します。
赤字決算を出した会社を買収する事例は少なくありません。なぜなら、実は買収する側にとって赤字会社の買収はさまざまなメリットがあるからです。
赤字決算の会社でも将来性や技術力がある会社など、資金投入で価値があれば会社売却できる可能性は高くなります。
ニュースを賑わせたメルカリやノーリツ、ライザップなどによる赤字会社の買収劇が記憶に新しいでしょう。
赤字決算だから会社が売却できる可能性が低くなるのではなく、売却の可能性は会社としての価値に左右されると言えます。
赤字清算そのものよりも、赤字清算から債務超過に陥ることが危険です。
赤字にはさまざまなタイプがあり、事例によって深刻度は異なります。創業期に起こりがちな創業赤字や、アクシデントによる臨時的な赤字など、一過性の赤字は大きい問題とはなりません。
会社創業から5年以内で、事業計画上で合理的に赤字の計画となっていて黒字化が見込まれる創業赤字については、金融機関は正常と判断します。
設備投資や固定資産の売却損、災害などの一過性の赤字で次年度以降の黒字が見込まれる場合も、金融機関の信用度に影響はありません。
では、赤字決算が続き債務超過になった場合、どのような影響が出るのか解説します。
節税目的も含めて2期連続で赤字決算にすることは避けるべきです。
一般的に、連続で赤字決算をすると既存の借入部分について、追加での融資が受けられなくなる恐れが出てきます。
当然、新たな融資を受けるための審査も厳しくなり、黒字化が見込める経営改善が必須となるでしょう。
節税効果を期待しすぎて漫然と赤字決済を続けていると、累積赤字が膨らむ場合があります。
資金繰りが厳しくて事業を再建できずに赤字決算を続けるのも危険です。最終的には債務超過に陥ってしまいます。
決算内容が債務超過となれば、会社に残っている財産よりも、借り入れや支払うべき給与・退職金、未払金などの額のほうが多い状態ということです。
つまり、会社を清算するのではなく、倒産となってしまうため経営者の個人破産も避けられないケースが多くなります。
会社を創業した時より、廃業する労力と時間のほうが負担は大きくなるので、赤字決算を続けて債務超過になることは極力避けましょう。
赤字決算を回避するため、会社の継続を目指すためには、キャッシュフローをきちんと管理することが重要です。
ここでは、キャッシュフローについて解説します。
会社を経営することは、会社の事業が継続されていくことを示します。
会社は現金がなければ倒産してしまうため、会社を継続していくためには運転資金が必要です。最低でも月商(年商÷12)の1ヶ月~2ヶ月程度の運転資金は確保すべきでしょう。
会社の現金の流れを徹底して管理するキャッシュフロー経営の考え方は、中小企業の経営者にこそ重要です。
会計上では利益が上がっていたとしても、手元に現金がなければ税金などの支払いが滞ってしまいます。手元に現金がなければ、納税のための資金を金融機関から借り入れることになるでしょう。
実際に手元にある現金の動きを正確に把握するキャッシュフロー経営は、健全経営に欠かせません。
中小企業こそ、損益計算上の利益だけでなく、キャッシュの動きを把握することが大切です。
利益と実際に手元にあるお金は違います。現金が何に使われ、どこから調達できるかさえ把握しておき、資金が回っていれば倒産はしません。
キャッシュを生み出さない事業で売上を上げても、手元にお金が入ってこないなら事業資金は確保できないので、経営判断をする場合にはキャッシュフローが回るかという視点が重要と言えます。
安全に経営を続けるために、キャッシュフローを回す意識を持っておくことで、結果的に常にお金や支払いを心配せずに経営に集中できるようになります。
金融機関からの借入に頼り切った経営ではなく、現金を生み出し回す経営を目指しましょう。
勘定は合っているのに銭が足りないということを防止するためにも、資金繰り表を作成しましょう。資金繰り表は決まった書式はないので、自分の会社に合った項目を設けて作成します。
実績だけでなく計画についても資金繰り表を作ることで、実際の会社のお金の流れだけでなく、今後のお金の流れも見える化できます。
資金が足りなくなる前に、しっかりと資金繰り表を作成し会社のお金の流れを見極めてください。
赤字決算から倒産に至るまでの流れを、具体的な事例で紹介します。
創業して数年、赤字と黒字を繰り返しながら、会社の売上高が増えてきた会社がありました。売上の増加により、取引銀行も融資を継続してくれている環境です。
順調に思っていたところ、売上が停滞するようになります。その結果、資金が足りなくなり融資をさらに多く受けることにしました。
借入金が増え、返済の負担が大きくなってきました。赤字を補填するために融資を受けることもありましたが、返済が厳しくなり、リスケジュールをすることに。
社会保険や税金関係の滞納が発生するものの、リスケジュールしたことで銀行からの追加融資は受けられません。
さらに経営状況は悪化していきます。そこで、個人的にビジネスローンなどを借りて、会社の資金繰りに充てることにしました。
しかし、なかなか経営状況の改善には至らず、取引先への支払い遅延、未払金の増加などが発生。自力での再建は厳しい状況となり、倒産してしまいました。
前項の事例で、赤字から倒産に至ってしまった理由を解説していきます。
年々売上が順調に増加していても、どこかで必ずストップする時期がきます。
銀行は各企業に関して、業種業態に違いはありますが、おおよそ月商の3ヶ月~6ヶ月程度の借入総額までは、融資対応をしてくれます。(注:会社の財務状況で判断は変わります)
借入総額とは一つの金融機関からではなく、日本政策金融公庫や保証協会付などすべての金融機関からの融資総額という意味です。
ある一定額に達した会社に対して、金融機関は追加融資に対して厳しく審査するようになります。
いくら銀行と良い付き合いができていると思っても、いくらでも融資が受けられるわけではありません。
赤字補填のための融資(キャッシュフローが赤字で、その補填のための融資)の場合、ある一定額の融資総額に達した段階で、金融機関からの融資を受けることはできなくなります。
融資が受けれなくなると企業の選択肢としては、返済を継続して融資総額が減ってきた時期に折り返し融資を受けるか、金融機関への返済をリスケジュールしか方法はありません。
新規融資や追加融資が受けられない、目先の資金も潤沢にないとなれば、まずは銀行への返済負担をなんとかしたいと考え、リスケジュールを選択する企業が少なくありません。
ただし、リスケジュールを選択した時点で、銀行からの融資を受けることは困難な状況となりますので、自らの収益のみで資金繰りを行っていく必要があります。
最大の問題は、営業キャッシュフローが赤字であったことです。
どこかで、赤字(営業キャッシュフローの赤字)を止めるべく、経営者としては、改善を図るべきでした。
金融機関が融資してくれるからという安易な考えで赤字を見過ごしてきた経営者の責任は当然に重いです。
こういった状況に至らないためには、赤字体質からの脱却が必要です。仮に、自らの手で対応できない場合は、早期に第三者へ相談することが望ましいでしょう。
銀行から融資を受けられている状況であれば、まだ経営改善できる可能性は十分にあります。また、抜本的な改善としてM&Aによる事業売却や法人の譲渡による改善方法も十分に検討できるはずです。
しかし、リスケジュールをして、負債が大きくなった財務状況では、その選択肢は限りなく狭くなってしまいます。
経営者としては、その点は十分に認識した上で、早期の対応することをおすすめします。
赤字決算が経営に与える影響は、赤字の種類により異なります。
計画的な赤字決算で節税をすることも可能ですが、資金繰りに悩み赤字決算を続けてしまえば、会社は倒産し経営者個人も破産してしまうでしょう。
そのため、赤字決算で債務超過に陥ることは避けなければいけません。
赤字決算による債務超過を避けるために経営者がすべきこと3つ
1.早めに専門家からアドバイスを受けること
2.相談する相手を見極めて選ぶこと
3.経営者としての正しい決断をすること
まずは経営者としての判断で何が正しいのかを知るために、早めに実績のある専門家に相談してください。早めに相談すれば最悪の事態を回避できる確率は高まります。
赤字決算の会社に関する専門性の高いアドバイザーを選んで依頼し、健全経営への道を進んでください。
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