M&A
2023/01/04
M&Aはやみくもに買い手・売り手を探して実行しても、本来の目的を達成することはできません。
M&A戦略を立てたうえで必要準備を適切な手順で進めることが重要です。
また、M&A戦略の立て方は目的に応じて異なる点にも注意しましょう。
本記事では、M&A戦略の立て方や重要性・必要性、注意点などについて詳しく解説します。
M&A戦略とは、M&Aの目的を達成するために立案する戦略のことです。
従来では、大企業が中小企業にM&Aを持ちかけて、それに対して売り手は受け身の姿勢で対応することが多くみられました。
しかし、昨今ではM&A市場の競争激化が起きており、売り手としてはより多くの譲渡価額で契約することが求められています。
買い手としても、買収したい企業を競合に買収されないように、適切な戦略を立てて準備を進めることが重要です。
M&Aの戦略は、M&Aの目的や自社・相手企業の状況などで立て方が異なります。
戦略を立てずにM&Aを行う問題点を知ることで、M&A戦略を立てる必要性が見えてくるでしょう。
例えば、事業拡大を目的に売り手を探すケースがあります。事業を増やすために、すでに業界での地位が確立しており、多くの顧客を抱える企業を買収すれば、そのまま自社の事業として収益源にできます。
しかし、安定していない事業や自社との親和性が低い事業を買収すれば、瞬く間に赤字に陥る可能性があるでしょう。
まずは、目的を明確化したうえで、自社が買収すべき企業像を明確化することが重要です。
M&A戦略を適切に立てると、本来の目的を達成できる可能性が高まります。
M&A戦略を立てる必要性について、さらに詳しくみていきましょう。
M&Aを行いたいから、買い手・売り手を探そうと思っても、条件に合致した企業が見つかるとは限りません。
また、条件に合致していたとしても、相手企業が掲げる条件をこちら側が満たしていない場合もあるでしょう。
M&Aは、買い手・売り手の双方の合意を持って成立するため、お互いに条件に合致している状態となるように、戦略を立てる必要があります。
希望条件で買収・売却するには、さまざまな準備が必要です。
例えば、売り手側が希望譲渡価額で譲渡するためには、買い手が求める条件を満たしていることはもちろん、さらに企業価値を高めるために対策を講じなければなりません。
買い手側は、売り手の企業価値を正確に算定するとともに、売り手が出した条件を承諾する必要があります。
例えば、従業員を全員移籍することが条件の場合、現実的に可能かどうかを確認のうえで、移籍に向けて準備したり、移籍人数を減らすための交渉をしたりします。
好条件での契約を目指すにあたり、どのような企業であればこちら側が提示する条件を承諾してくれるのかを考える必要があります。
好条件で契約できる企業像を明確化したうえで、必要な準備を確認しましょう。
例えば、後継者問題を解決したい売り手企業は、後継者さえ見つかれば他の条件は強くは求めない場合があります。
ただし、後継者に対する条件が厳しいなど、スムーズに買収できないケースも少なくありません。
自社が求める条件を挙げたうえで、どのような企業であれば承諾してくれやすいのか、売り手がどのような条件を出しそうなのかなどを想定しましょう。
M&A戦略を立てる際は、いきなり自社が求める条件を出したり、相手が出してくるであろう条件を想定したりするのではなく、まずは目的の明確化から始めることが大切です。
M&A戦略を立てる流れについて詳しくみていきましょう。
M&Aの目的に応じて戦略の立て方が異なります。
売却側の目的は、不採算事業の売却による会社全体の赤字の解消、後継者問題の解決、ベンチャー企業のイグジットなどです。
ベンチャー企業は、ベンチャーキャピタルからの出資金をもとに企業価値を高め、上場することで一般投資家に株式を売り出す「IPO」か、会社を売却して利益を得る方法を選択することが一般的です。
買収側の目的は、既存事業の拡大・強化、サービス提供範囲の拡大、事業構成の転換などです。
このように、達成するのが難しい、時間がかかりすぎるといった目標がある場合にM&Aを検討します。
M&Aは買い手と売り手の双方が合意した場合に実行できるため、どのような会社が条件に当てはまるのか、また自社が相手が提示する条件に合致するのかなどを把握しなければなりません。
そのためには、まず会社の現状を分析する必要があります。
例えば、売り手側が希望の金額で売却するためには、企業価値を高めなければならないケースがあるでしょう。
現状では希望の金額で売却できないと考えられる場合は、企業価値を高める施策を立てる必要があります。
目的の明確化と現状分析が完了したら、詳細な市場調査を行います。
買収先・売却先の候補、M&Aの状況などを把握し、戦略の方向性を決めます。
異業種企業とのM&Aを目指す場合は、馴染みのない市場を調査することになるため、必要な時間・労力が大きくなるでしょう。
自社の価値を高める必要がある場合は、その戦略を具体化しましょう。
事業の収益力を高めることで、企業価値が向上します。
収益力が高くてもコストが高いと利益が低くなるため、コストの比率にも注目が必要です。
また、特定の顧客が多くの売上を占める場合、企業の安定性が高いとは言えません。
収益力と安定性はセットと考えて、両方の向上を目指しましょう。
そのほか、自己資本と銀行からの借り入れなどの他人資本の構成を見直し、経営リスクを軽減することも重要です。
株式資本よりも金利が低い有利子負債を活用すれば、資本コストの低下により企業価値の向上が期待できます。
ただし、有利子負債が増えると財務の安全性が低下するため、借入比率を増やしすぎないように注意しましょう。
そのほか、知的財産権の取得、特許の取得、それらの効率的な運用など、無形財産の活用も企業価値の向上につながります。
自社の状況に応じて、複数の方法を組み合わせて企業価値を効率的に高めましょう。
M&A戦略の立て方は、その目的に応じて異なります。「事業拡大」と「後継者問題の解決」におけるM&A戦略の立て方について詳しくみていきましょう。
事業拡大を目的とする場合、シナジー効果を得ることに注目しましょう。
シナジー効果とは、買い手と売り手が統合することで生まれる相乗効果のことです。
例えば、売り手の人材を取得することで事業の成績が飛躍的に伸びる場合、シナジー効果が高いと言えます。
それでは、事業拡大を目的としたM&Aにおける戦略の立て方を詳しく解説します。
どれだけ事業を拡大したくても、多額の負債を抱える事業を買い取ると会社の財務に悪影響が及びます。
多少の赤字であれば、事業を見直すことで黒字化も期待できますが、あまりにも多額の赤字はリスクが高まります。
リスクを把握することで、売り手の候補となるかどうかが明らかになるでしょう。
事業拡大を目的に買収するメリットを確認しましょう。
メリットは買収先によって異なります。
例えば、ある地域に強いコネクションを持つ企業を買収すれば、その地域での販路を拡大しやすくなります。
このメリットを得るために掲げるべき条件を考えましょう。
また、譲渡価額の予測を立て、M&Aの実行に必要なコストも把握する必要があります。
売り手においても、希望譲渡額でM&Aを行うには企業価値をどれだけ高めるべきかを確認しましょう。
M&Aの実行によって得られるシナジー効果を確認しましょう。
1+1が2になるM&Aよりも、1+1が3にも4にもなるM&Aを目指すことが重要です。
例えば、物流企業を買収すれば、その経営資源を得られるだけではなく、物流ノウハウを活かして商品の流通コストを軽減できます。
シナジー効果を得られるかどうか、どれだけの効果が期待できるのかを踏まえて、買い手・売り手を選定しましょう。
後継者問題を解決するために買い手企業を探す場合は、次のように戦略を立てましょう。
企業の傘下に入り、その企業から派遣された人物が社長となります。
どのような企業でも後継者が簡単に見つかるわけではなく、後継者にとってメリットがなければM&Aは成立しません。
自社の現状を把握し、買い手にとってどのような点が魅力なのか、何をアピールすればよいのかを考えましょう。
理想の後継者像から、自社にとって最良の譲渡先のイメージを固めましょう。
企業理念、従業員数、資本金、事業内容・数、その他のリスクなどの条件を設定することで、理想の買い手企業を探しやすくなります。
より多額の譲渡金を得るために、自社の強みを伸ばしつつ弱みを減らしましょう。
企業価値が高まることで、譲渡額が高くなります。
また、後継者が問題なく経営できるように、企業体制を整えることも重要です。
M&A戦略を立てる際は、次の注意点を押さえましょう。
簿外債務や訴訟、不要な資産などは経営統合の妨げや無用なトラブルの原因になります。
これらのリスクを洗い出して早期に解消させましょう。
買い手としても、このようなリスクがないか調査するため、放置するとM&Aが成立しない原因にもなります。
しかるべきときまでM&Aに関する情報は一切漏らさないようにしておくのが大切です。
従業員や取引先にM&Aを予定していることが伝わると、退職者が出たり取引を断られたりする恐れがあります。
いずれは伝えて理解を得る必要がありますが、M&Aを進めている段階で噂が広まると、「経営状況に問題があるのではないか」「次の経営者は大丈夫なのか」など不要な不安や疑念を持たせてしまうでしょう。
基本合意締結の前に、会社の経営に貢献している重要な役職の人物に伝えましょう。
基本合意締結後は、各事業部の責任者や役員クラス、クロージング後は一般の従業員に伝えます。
M&Aは、自社のみで進めることは難しいでしょう。
FAを頼れば自社にとって最良の結果になるようサポートしてくれるため、M&Aによって得られる利益を最大化できます。
条件に合致した売り手が見つかるうえに、その後の交渉も有利に進めることができるでしょう。
M&A戦略は、速やかにM&Aを成立させるとともに、メリットを最大化するために必要なものです。
戦略なしで準備を進めても、本来の目的は達成できないでしょう。
今回、解説した内容を参考にM&A戦略を立ててみてください。
また、戦略の立て方、売り手・買い手探し、準備、交渉、各契約のサポートなどまで対応できるFAに相談することをおすすめします。
ご相談は無料です。お気軽にお声かけください。
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