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経営改善

廃業・倒産の危機を回避する方法とは?/ M&Aという選択肢

2020/03/12

 

後継者不足や経営難で廃業・倒産を考える人は少なくありません。しかし、会社や事業を売ることで最悪な事態を回避できる可能性があります。


第三者への譲渡(M&A)のほうがより多くの退職金を得られる可能性もあり、経営者が抱える悩みを解決できるなどメリットは廃業・倒産よりも多くあります。


今回は、廃業と倒産の違いからM&Aのメリットなどについて解説していきます。


「廃業」と「倒産」の違い

 



廃業と倒産、どちらも業績の悪化からやむを得ず経営をやめるものと考えられています。


しかし、実際はそれぞれ異なる意味合いを持っています。まずは、廃業と倒産の違いから確認していきましょう。


廃業とは



経営者が自主的に経営や事業を辞めて会社を解散させることを廃業と呼びます。廃業の場合、経営者の意思で決まるので経営・事業を辞める理由はさまざまです。


廃業は解散時期を自分で選べるので、準備期間をしっかり設定し取引先と従業員に対して、真摯に説明をし、混乱を避けるように対応しましょう。

 

倒産とは



法的な定義はありませんが、会社経営の継続が難しい状態でやむを得ず辞める際に倒産という言葉が使われます。


会社の経営継続が難しい状況とは、主に資金不足で取引先への買掛金の支払いや従業員に給与の支払い、借入金・負債の返済が厳しい状態を指します。


倒産の場合、弁護士に依頼して民事再生・破産、私的整理などの法的手続きを行うのが一般的です。


倒産は余裕のある準備期間を設けられず、取引先や従業員には直前での説明になるケースが多く混乱が起こりやすいといえます。

 

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中小企業が廃業する理由3つ

 



中小企業の経営者が廃業を選択する理由は色々ありますが、代表的な理由として次の3つが挙げられます。


後継者不足

 

中小企業庁の報告では、1995年の日本国内の経営者は47歳前後が最も多いという記録があります。ところが、2021年には62歳前後にまで年齢が上昇しており、経営者は高齢化が進んでいます。

 

経営者が高齢化して自分で経営が難しくなってきた時、よくあるのは後継者に引き継いでもらうことです。しかし、現代は後継者の確保に悩む人が多くみられます。

 

経営者の中には様々な事情から子どもがいない人もいます。また、子どもがいても親である経営者自身が子どもの将来を縛りたくないと考えていたり、そもそも子どもが事業や経営に興味を持っていなかったりするケースも少なくありません。

 

 

社内から後継者を選ぶにしても育成に大きなコストと時間がかかり、外部から招いての事業承継にも十分な労力が求められるので、ハードルは高いです。


その結果、会社は黒字であっても自分の代で辞めてしまおうと考え、廃業する経営者は少なくありません。


人材不足



後継者の不足以上に倒産のリスクがあり、問題となっているのが人材不足です。少子高齢化に伴い日本の人口と生産年齢人口は減少しています。


2022年2月に発表された有効求人倍率は1.16倍で、ほぼ横ばいの状況が続いており、どの企業も労働力の確保に苦戦を強いられている状況です。

 

また、働き方の価値観も変化しています。働き手にとって「ここで働きたい」と思える企業でないと、求人を出しても応募が来ない、もしくは早期退職という事態を招くでしょう。


仕事内容によっては特定の技術や知識を必要とする場合があります。


業界によっては技術者や資格者自体の不足により人材を確保できないというケースも多いです。


経営悪化



事業の収益力が低下し、業績が上がらず悩む会社も多くあります。特に中小企業は特定の取引に依存しやすいので、主要取引先との取引がなくなると黒字から赤字に転落する恐れがあります。


他にも時代の変化により業界や事業の需要がなくなった、日本や世界経済の悪化、社内での不祥事などが様々な原因で経営難になる場合があります。


経営状況が悪化しても、その後立て直しができれば廃業を選択する必要はありません


しかし、中小企業は事業再生の知識が乏しく、再建は難しいと考えて廃業が選ばれる傾向にあります。


倒産/廃業件数の推移

 



2000年以降、日本の企業は廃業や倒産が増加しています。商工リサーチの調査によれば、2013年以降の休業・廃業・解散にいたった企業件数は、3万件台、倒産は8000件~1万件台で推移しています。


2021年も約5万4千件の企業が休廃業・解散・倒産に至っている状態です。


では、コロナ禍での倒産・廃業の状況や今後の状況はどうなっているのでしょうか?


コロナ禍の影響による倒産/廃業の状況

 

帝国データバンクの情報によれば、コロナ禍での倒産・廃業は2021年が1770件で、前年2020年の842件の約2倍となっています。

 

緊急事態宣言やまん延防止等重点措置による人流抑制策のため、観光業界や飲食店などの対面サービスを行う産業などを直撃し、関連企業でも倒産や廃業が相次ぐとみられていました。

 

しかし、その数をみると活発な資金供給や補助金などによって倒産や廃業の抑止効果が出ているといえる状況です。

 

とはいえ、コロナ禍のため財務内容に余力があっても休廃業する「あきらめ休廃業」をする企業も少なくありません。

 

廃業や倒産を検討する基準

 

 

廃業や倒産のリスクは経営者なら誰でも抱える悩みです。最善の選択をするためにも、事前に検討基準を設けておきましょう。

 

経営者自身の年齢

 

廃業・倒産のリスクがあれば、できるだけ若いうちから考えておいたほうがよいです。高齢の経営者は病気や体力・判断力の低下といった問題が起こりやすいからです。

 

また、だんだん世の中の流行についていけず、そこから経営が落ち込み、対応できずに経営難になる中小企業も少なくありません。

 

後継者の確保や育成、事業譲渡にしても時間がかかるので、まだ自分の意思で判断できる健康体の時点で準備したほうが廃業・倒産以外の選択ができる可能性が増えます

 

まだ若いから大丈夫だとは先延ばしにせず、早めに行動に出ましょう。

 

後継者の有無

 

後継者の有無も廃業・倒産を決める要因となります。身内や社内に後継者がいれば、引退の時期までじっくりと育成しましょう。

 

後継者の育成には最低でも5年は必要と言われていますが、余裕を持って育てる場合は10年ほど見積もっておく必要があります。

 

つまり、経営者は引退時期の目安から逆算して育てていかなければなりません。

 

まだ後継者がいない場合は後継者探しから始めることになるので、なかなか適任が見つからない時や自分がすでに高齢化している場合は、事業承継も視野に入れて準備していきましょう。

 

経営状況(廃業できるかどうかの判断)

 

経営を続けるかどうかは、損益計算書の営業利益が黒字か赤字かによって判断できます。

 

営業利益は「売上総利益(総売上高-仕入れ等の売上原価)-(販売費+一般管理費)」で算出でき、企業は得ている本来の利益を求められます。

 

これが黒字であれば経営は継続可能、赤字なら早急の対策を講じないと復活は難しいです。

 

施策を立てても黒字化の見通しがなければ、経営が大きく傾く前に廃業することである程度の資産を残すことが可能でしょう。

 

ただし、債務超過は通常清算での廃業ができないので、倒産という形になってしまいます。経営状態で今後の判断が変わってくるので、しっかり把握しておきましょう。

 

廃業や倒産から取引先や従業員を守るためのM&A

 



廃業と倒産で会社の状況はそれぞれ違いますが、取引先と従業員に迷惑をかけることには変わりはありません。


取引先の経営悪化や従業員が路頭に迷う事態ことを回避する方法として、M&Aは有効策です。


M&Aは株式や事業を他の経営者に承継する方法であり、取引先との関係性や従業員との契約をそのまま引き継いでもらうことが可能です。他にも後継者問題や人材不足といった問題の解決にもつながります。


特に今の日本社会は人材不足が大きな課題となっており、人材確保が難しい中小企業は多額の広告宣伝費をかけるところが多いです。


人材の獲得競争は激化に向かっているため、効率良く人材を確保しようと中小企業間でも積極的にM&Aが行われるようになりました。


また、資金力の高い買い手であれば事業の一部を売却し、安定した経営基盤を整えて再建を図ることも可能です。


廃業・倒産では残るものが少なくデメリットの方が大きいですが、M&Aでは様々なメリットに期待できます。


 

廃業を考える企業がM&Aをするメリット



M&Aでは、株式譲渡と事業譲渡の2パターンがあります。


基本的には買手企業の意向に従う形になりますが、廃業の場合はどちらかを選択できる可能性があります。


株式譲渡は事業承継や経営基盤の強化などを目的に行われる手法です。一方、事業譲渡は赤字事業の撤退や事業の選択、特定の事業に集中したいといった目的に最適です。


手法を選べるのであれば、経営者の希望にマッチした譲渡方法を選択できます。


また、経営者の退職金においてもM&Aのほうがメリットは大きいです。


廃業では会社保有の資産から借入金や負債を支払い、残りの資産が経営者の退職金となります。しかし、M&Aなら売却した金額が丸ごと経営者の退職金になります。


廃業にかかるコストよりも売却で得られる資金のほうが多いのであれば、M&Aを考えてみてください。


倒産を考える企業がM&Aをするメリット



赤字や業績不振で倒産しそうな会社でもM&Aは可能です。全ての倒産寸前の会社がM&Aに成功しているわけではないものの、譲渡により倒産を回避している事例は多いです。


倒産が近付いている会社の場合、経営者は視野が狭くなり、選択肢が倒産という考えに至りがちです。


しかし、M&Aが可能かどうか早めに相談することで、それを回避できる可能性は十分にあります。


M&Aに成功すれば後継者問題の解決、連帯保証からの解放、資金力のカバー、自社にない技術の取得によるさらなる発展などの恩恵を受けられます。


 

POINT
会社売却による経営者としてのメリットとデメリットは

メリット
「創業者利益を得られる」 「会社の成長が期待できる」 「連帯保証債務が解除できる」 「経営に関するストレスから解放される」 「第二の人生をスタートできる」

デメリット
「雇われ社長としてのストレス」 「従業員や周りからの見られ方が変わる」 「業績不振の場合、借入債務の問題が残る」 社内の状況や経営者の立場などで、メリット・デメリットのどれを優先すべきかが異なってきます。
メリット・デメリットを活用するためにも現在の状況を全て把握し、自社の場合を考えて会社売却するかどうかを検討してみてください。 >>企業を買収する場合の簿外債務のリスクとその対処法とは

 

 

廃業や倒産を回避するためにまず行うこと

 



倒産や廃業に悩んでいる時は、できるだけ早めに相談してください。検討を長く続けていても、経営状況はどんどん悪くなる一方です。


相談は早ければ早いほど、廃業・倒産以外の選択肢を増やせるメリットがあります。


今置かれている状況や他にどんな選択ができるのか、それを知る意味でも第三者の相談は重要です。その上で、経営者や会社にとって最善な選択を決定してください。

 

第三者への相談というと、銀行や弁護士、つながりがある他の経営者などが挙げられるでしょう。しかし、どの相手も廃業・倒産の相談相手にはやや適しません。


例えば、銀行は廃業・倒産のリスクがあると分かれば、支援に後ろ向きになってしまうでしょう。弁護士は倒産の処理も大事な仕事なので、廃業や倒産の方向で話が進むケースも少なくありません。同じ悩みやリスクを持つ他社の経営者は、どこからか話が漏れて風評被害を受ける可能性があるのでおすすめしません。


それでは、誰が相談相手の相応しいのかというと、顧問税理士か中小企業のM&Aに強い専門会社です。


顧問税理士は経営状況をよく把握している人物なので、良きアドバイザーになってくれるでしょう。ただ、会社や事業の売却に強いかどうかは、税理士によって経験や実績が異なる点がデメリットです。


一方、M&A専門の会社は経験豊富で、ケースの応じた選択肢の提案をしてもらえます。


赤字企業でもM&Aで会社や事業を売却できる可能性はあります。業績が悪い、債務が多いからと諦める前に相談してM&Aを検討してみてください。

 

MEMO
赤字の会社であっても売却は可能です。
赤字会社売却の成功へのポイントは3つあります。

1つ目は、早期の専門家への相談
2つ目は、依頼するアドバイザーの選定
3つ目は、社長としての覚悟

>>赤字会社や債務超過の企業の売却は可能ですか?

 

まとめ



廃業と倒産は混同されがちですが、正確には異なります。

 

廃業は負債を会社の全資産で賄え、自主的に選択する方法ですが、倒産は負債を賄えきれない会社が選ぶ手段です。


しかし、M&Aで会社や事業を売却すれば、メリットがあります。

M&Aのメリット

・取引先や従業員を守れる

・廃業よりも多くの退職金を確保できる

・後継者問題が解消する

・連帯保証から開放されることがある

 

日本の中小企業の8割は赤字と言われていますが、そこから抜け出す方法は廃業・倒産以外にもあります。


自社にはどんな選択肢があるのか、早めに第三者に相談して廃業・倒産を回避しましょう。



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