経営改善
2021/06/21
銀行が取引先企業の経費削減にメスを入れるタイミングをご存じですか?
主に新規融資の申し込みがあった際の審査で指摘されることが多く、担当が事前にチェック、確認してきます。
また、業況が悪化し返済困難となりリスケ(リスケジュール 返済猶予)や、返済が延滞しているなど破綻が懸念される企業に対する経営指導でもチェックすることがあります。
今回は、銀行(銀行員)が取引先企業に行う経営指導の実例を踏まえ、経費削減のポイントを解説していきます。
目次
経費削減のチェックに入る前に、まず現状の問題点、改善点を洗い出す必要があります。
なぜかというと、改善すべき点がしっかり把握できなければ、その後の改善案も有効に機能しないからです。
銀行の担当者は決算書を融資時や毎年の決算報告されるタイミングで、内容を確認します。そこで、目につく経費について指導してくることがあります。
自社のどこに問題があり、どこを改善するか見えていない経営者(数字を把握していない/数字に弱い経営者)は多くいます。
こういった経営者は銀行からの印象は悪く、「業績が芳しくないのは経営者の問題では?」とのレッテルを貼られることもあります。そのため、経営者自身が現状の把握をしておくことは非常に重要です。
分析方法は2種類あり、一つは時系列(前年比)での比較、もう一つは業界内での比較です。
関連記事→事業計画作成のポイント【銀行融資編】/融資審査で銀行員がチェックするポイントとは?
まず前年との比較ですが、大前提として去年より削減されているかが重要になってきます。
「来年〇〇を100万円削減します」よりも「去年より▲▲が5万円削減できました」のほうが銀行員からは評価されます。
続いて、業界内の比較です。実は、銀行では同業他社や業界平均を重視する傾向があります。
たとえば同じ仕事、同じ規模なら売上、利益から経費構造まで似ている部分が多く、対象先企業を判断するときは同業他社が有効な「モノサシ」になります。
銀行は取引先企業も多く、また金融業界全体で業界を網羅するビッグデータを共有しているので、
対象企業の経費削減計画が競合他社と比べてどうか?
同業において妥当な計画か?
など判断できるのです。
銀行から指摘される際も、同業他社との比較を持ち出されることがあるのは、こういった理由からです。
ここからは、より具体的な経費削減のポイントを解説していきます。経費削減すべき改善点とその具体策、注意点などについて説明します。
自社生産を外注(アウトソーシング)にすることで、工場生産ラインや人件費が削減できる場合があります。
経費削減のためには、業務フローの見直しをすることが有効なのです。
生産ラインのIT化をすることで、ランニングコストの削減や人件費の削減が期待できます。
IT化も含まれますが、設備投資では「コストダウンを図る」というのが大きな目的の一つです。
従来、設備投資と言えば業容拡大、売上増加をねらったものが主流でしたが、競争激化により今では拡大よりもコストダウンを重視した設備投資が目立つようになりました。
デスクやイスなど、社内の設備品を購入するときは、新品ではなく新古品や中古品を選ぶようにするのも経費削減につながります。
関連記事→銀行を使い分ける必要はあるのか?上手な銀行との付き合い方を解説
役員報酬は、経費削減でメスを入れやすい項目です。まず、業界平均と比較し、同業、同規模の競合他社の役員報酬と比べてもらいすぎではないか?逆に少なすぎないか?を判断します。
本来、企業を経営する目的は経営者として報酬を得て、経営の成果を享受するものです。「役員報酬を得るため会社を経営している」とも言えます。
ただし
「業績が芳しくないのに、役員報酬だけは同業の黒字企業並みにもらっている」
「業績はまずまずなのに、役員報酬が少なすぎる」
といったように適正な水準でないと、銀行から注視されることがあります。
基本的には、業績に応じて適正な報酬を得ることが望ましいでしょう。
人件費の見直しも、経費削減の代表格です。人件費は経費の中でも占める割合が大きく、削減を検討する重要性があります。事務や総務部分のIT化やペーパーレス化により従事する人員を削減する方法などがあります。
広告や宣伝は、やみくもに費用をかければいいというものではありません。
たとえば地方の中小企業が、無理をして全国区のテレビCMを大々的に行い知名度を上げても、店舗は小さな町に限られていたのでは費用対効果はまったく望めません。
広告宣伝費に関しては、社内で費用対効果を測定し、支出に対する効果(どの程度、売上に繋がったのか?)を説明できるようにしておきましょう。
新しい生活様式、働き方改革といった時流の変化で、従来の接待も見直されるようになりました。やはり銀行員が決算書を見たとき、接待交際費の額を注視します。
金額の大小にもよりますが、接待交際費の内容(相手企業が取引期先かなど)をチェックしてメスを入れることもあります。
往々にして、広告宣伝費や接待交際費を使い、架空の経費計上をするなど粉飾を行う企業もあり、銀行もその点を経験則で知っているので、この費目は注視しているのです。
出張費の見直しも経費削減には有効です。
コロナ禍の影響で出張しにくい状況にあることを逆手に取り、ムダな出張がないか、オンラインで済むものはないかを検討してみることがおすすめです。
企業に不可欠な地代家賃はあまり問題になることはありません。ただし中小企業などの場合、経営者や一族から土地を借り、あるいは工場や店舗が役員名義で地代家賃を払っているケースが良くあります。
地代家賃が適正なものなら問題ありません。業績が芳しくない状態、たとえば融資返済を減額している、あるいはリストラや給与削減をしている企業が、以前から変わらない地代家賃を経営者に払っている場合では、経費削減の面で問題があるばかりでなく、経営者の意識の面でも、銀行から疑問を呈される場合があります。
他にも、家賃の経費削減として、長期的に借りることなどを条件に家賃交渉をする、家賃が安い地域に移転するという方法もあります。
つきあい、あるいは取引先の力関係でなかば無理やり年会費を払わされているなど、前時代的なケースがいまだに見受けられます。
こちらは銀行から削減を命じられたと、無駄な会費をやめる口実にできる場合もあります。
金利や返済額も見直しできる場合があります。精緻な計画をもって銀行としっかり目線を合わせることができるなら、金利引き下げに応じてもらえるケースもあるのです。
経費削減には、従業員の協力が不可欠です。ただ「経費削減しろ」と威圧的に伝えるだけでは、協力は得られにくいでしょう。
そこで、社内で経費削減のアイデアを募集する方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。普段業務をするなかで、「ムダなことはないか」を考えてもらうのです。可能であれは、良いアイデアに報奨金を出すなどのインセンティブがあると、より従業員の経費削減の意識が高まります。
ここまで経費削減について、細かい部分まで説明してきました。
しかし、たとえば人件費にしても、削減ばかり考えて人を減らしすぎれば、今度は生産など企業経営自体が立ちゆかなくなります。人員整理(リストラ)を急ぎすぎると、残った社員も「次は自分がリストラされるのでは?」とモチベーションが下がったり、自発的に退職したりして貴重な人材とノウハウが流出してしまう恐れもあります。
「会社は人なり」人件費ばかりにとらわれ、この大原則をおろそかにするなど、無理な経費削減は、業績を下げる要因になるので、注意が必要です。
銀行がチェックする経費削減のポイントは、説明してきたように「微に入り細を穿つ」ともいえる細かさがあります。しかし、経営者であるあなたに、家族や会社関係者以外で、ここまで真摯に(ズケズケと)忠告、アドバイスする人間もいないでしょう。
銀行員は、取引先企業を立ち直らせるために、経費削減を進言してきます。もちろん銀行として、担当者として業務の範疇ではありますが、耳を傾ける価値はあります。
本記事で紹介した経費削減のポイントは以下の通りです。
具体的な経費削減できるポイント
自社生産
生産ライン
設備投資
役員報酬
人件費
広告宣伝費
接待交際費
出張費
地代家賃
諸会費
金利や返済額
銀行のアドバイスを受けつつ、できるところから経費削減に取り組みましょう。
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