財務戦略
2021/03/22
CFOの役割は、企業の資金管理や財務戦略の立案・執行などです。CFOは主にアメリカをはじめとした諸外国の企業に配置されており、日本ではまだ馴染みがありません。
しかし、近年ではCFOを配置する中小企業が増加傾向にあります。ここでは、CFOの役割や他の役職との違い、求められるスキルなどについて詳しくご紹介します。
目次
CFO(チーフファイナンシャルオフィサー:Chief Financial Officer)とは、日本語で「最高財務責任者」のことです。企業の生命線ともいえる財務戦略を立て、執行するという重要な役割を担っています。それでは、CFOの役割や他の混同されやすい役職との違いについて、詳しくみていきましょう。
CFOの役割は、適正な財務管理を行いつつ、的確な財務戦略を立案して執行することです。
財務管理とは、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表の記録管理をすることです。そして、経営資源の分配、M&Aを含む戦略などにおける意思決定にも関わります。
経営層として企業の財務の全てを握るため、非常に重要なポジションといえるでしょう。
CFOは最高財務責任者で、財務部長と名称が似ているため、両者の違いがイメージできない方もいるでしょう。CFOは財務部長と同様に財務における長ではありますが、仕事内容は資金調達と管理、予算管理、内部統制など多岐にわたります。
対して財務部長は、あくまでも財務部における長であり、経営の意思決定に関わるような仕事は行いません。経営層から与えられたタスクをこなし、財務を管理するのが主な仕事です。
CFOは経営戦略に基づいた財務戦略を立案するため、CEOを含む経営層と密に連携をとる必要があります。CFOは経営層の1人として会社のかじ取りを行いつつ財務戦略の立案・執行をし、財務部長は経営層が立案した戦略に基づいたタスクを実行します。
COO(チーフオペレーティングオフィサー:Chief Operating Officer)とは、日本語で「最高執行責任者」のことです。CEOが定めた方針に従い、業務を遂行します。業務遂行における最高責任者のため、経営方針への理解が必要です。それを一般社員に落とし込み、事業方針に適した形で業務を遂行するように促す必要があります。
このように、CFOが財務戦略の立案・執行の責任者であるのに対し、COOは事業方針に業務計画の立案・執行の責任者なのです。
CEO(チーフエグゼクティブオフィサー:Chief Executive Officer)とは、日本語で「最高経営責任者」のことです。日本では「CEO=社長(代表取締役社長)」のイメージがあり、事業方針の決定から執行まで行いますが、アメリカではCEOが決定した事業方針に従ってCOOが業務を遂行します。
また、CEOを含む経営層が決定した経営戦略に従って財務戦略を立案し、執行するのがCFOです。
CMOとは、(チーフマーケティングオフィサー:Chief Marketing Officer)で、「最高マーケティング責任者」のことです。
主にマーケティングに関わる部署やチームをまとめます。ですが、市場で勝ち残るためには企業一丸となって戦略を考え実行していく必要があるため、CMOが置かれることが増えてきています。
CFOと同様に経営層として企業経営に関わりますが、CMOはマーケティングにおける責任者です。
日本の中小企業には、CFOを設置しないことが一般的でした。しかし、近年では海外の例にならってCFOを設置する企業が増えてきています。CFOが注目されている理由は次のとおりです。
1990年代前半までは、担保となる土地の価値が高かったため、金融機関から容易に融資を受けられました。しかし、バブル崩壊後は土地の価値が大幅に下落したため、土地の担保性が失われてしまったのです。この場合、会社と金融機関の信頼関係や事業の内容、会社の資産などを総合的に見て融資できるかどうか判断されます。
そのため、発足から間もないベンチャー企業は、投資家からの資金調達を行うことが一般的です。しかし、投資家から資金調達するには、市場の成長性や事業の価値、将来性などをわかりやすく伝え、大きなリターンを生み出せると納得してもらう必要があります。そのため、与えられたタスクをこなすだけの財務部長では、投資家に魅力的なプレゼンを行えません。
だからこそ、経営層の1人として財務の全てを統括するCFOが必要なのです。
トレンドは短期間で変化するため、同じ財務戦略で会社の利益を増やし続けることはできません。CFOが不在の企業では、財務戦略の細かな見直しまで手が回らず、キャッシュフローに問題が起こりがちです。10年、20年と運よく財務戦略を変えることなく成長できていても、その後の10年のキャッシュフローに問題が生じれば、会社が倒産する恐れもあります。
財務戦略の細かな見直しをするためにも、CFOは必要な存在と言えるのです。
それでは、CFOの仕事内容について、それぞれ詳しくみていきましょう。
資金調達の方法には、「融資」と「出資」があり、いずれか一方、あるいは両方の手段で必要な資金を調達します。融資は金融機関からの借入、出資はベンチャーキャピタルやエンジェル投資家に対して第三者割当増資を行います。
融資や出資を受けるための書類作成、交渉、契約書の作成・精査などのレベルが高いほど、資金調達の成功率が高まります。
事業拡大を目指して適切な財務戦略を立てる必要があります。収益だけではなく、人件費や不動産の維持費、広告宣伝費などの経費や仕入れなども管理し、問題があれば速やかに調整します。また、コストカットできるところの洗い出し、部署ごとに使える資金額の割り出し、目標達成率と残りの資金額のバランスなども必要です。財務状況を常に把握し、最適化することで企業のキャッシュフローを良好に保てるでしょう。
上場の準備段階では、監査法人や証券会社の選定や渉外をCFOが行います。CFOと投資家や関係者との交渉次第で上場後の先行きが大きく変化します。そのため、CFOには優れたコミュニケーション能力が欠かせません。また、法務や財務などを分業する必要があるため、マネジメント能力も必要になります。
CFOは中小企業に必要かどうか議論されるケースは少なくありません。CFOは企業価値向上を最終目標として、財務管理だけではなく資金調達や無駄の削減、渉外業務なども行います。また、他の経営陣と議論を交わし、企業価値向上に向けて尽力します。このように、CFOは必須ではないものの企業価値向上において重要な役割を果たすため、可能であれば配置したほうがよいでしょう。
ただし、CFOの存在が形骸化しないように、役割を十分に認識している人物に任せる必要があります。また、CFOの必要性について従業員に説明し、理解を得ることも大切です。
CFOがいても、財務状況が好転しない場合、スキル不足の可能性があります。優秀なCFOに求められるスキルや経験について詳しくみていきましょう。
企業によっては、公認会計士資格やMBAを必須としているところもあります。
財務戦略を立案するには、財務だけではなく経営や法務などの知識が必要です。部門の垣根を越えた幅広いビジネス経験を積むことで、的確な財務戦略を立案できるようになります。
財務戦略を立案時は、データの活用が欠かせません。市場調査や将来の予測収益などでデータを活用すれば、より精度の高い情報を入手できます。また、データから新たな施策や予測を導き出した際には、その根拠を経営層や一般社員に伝えるための説明能力も必要です。
財務戦略を立案するときは、企業の明るい未来だけではなく、暗い未来も想定する必要があります。起こり得るトラブルやリスクを割り出し、現実的な財務戦略を立てなければなりません。財務戦略がうまくいかない場合、現場や外部要因などに目を向けがちです。CFOには、リスクまで考慮した財務戦略を立案するために必要な論理的思考力が求められます。
財務戦略に問題があり、純利益が思うように上がらないときは、冷静に収益と支出を見直す必要があります。支出を必要以上に削減したり、収益を増やすために多額の資金を投入したりすると、短期的な利益は生み出せても長期にわたり利益を生み出し続けることはできません。
どのような状況でも冷静さを保てることはCFOに必須なスキルです。
それでは、優秀なCFOになるためにクリアしたい4つのステップをご紹介します。
まずは、財務の知識を身につけるために、資金調達や投資などの経験、スキルを習得できる財務部門に入りましょう。可能であれば、大企業の財務部門で巨額を動かす経験を積むことがおすすめです。
続いて、経理部門で経理スキルを身につけましょう。上場間近のベンチャー企業では、厳しい会計監査を受けるため、より高い経理スキルが身につきます。また、決算業務や税務業務など、複数の業務を任せられるため、数年で豊富な知識と経験を習得できます。
財務戦略は事業計画に基づいて立案すべきであるため、経営戦略や経営管理のスキルや経験が必要です。コンサルティング企業や投資銀行の財務アドバイザリー部門などに入るとよいでしょう。
ベンチャー企業のCFOとして、難題を解決しながら企業価値の向上に向けて財務戦略の立案・執行、資金管理などを行います。ここがゴールではなく、自分に合った企業を見つけ、CFOとして転職するのもよいでしょう。
最高財務責任者であるCFOは、企業価値向上を目的としています。
仕事内容は以下のとおりです。
CFOの仕事内容
・資金調達
・財務戦略の立案や資金管理
・監査法人や証券会社の選定や渉外業務
CFOは中小企業に必須なわけではありませんが、上場を目指すのであれば配置したほうがよいでしょう。CFOが正しく機能することで、良好なキャッシュフローを長期にわたり保てます。
また、時代の目まぐるしい変化に対応した財務戦略を立案できることで、企業の利益を高めることも可能です。優秀なCFOを目指している方は、財務や経理などの経験を積むほか、マネジメント能力や論理的思考力の習得を目指しましょう。
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