M&A
2020/07/22
会社売却を進める際、社員や金融機関にどのタイミングで売却についての報告をするかは慎重に決断することが大切です。
報告のタイミングを間違えてしまえば、上手くいくはずの会社売却で無用のトラブルが発生する可能性もあります。
具体的にどのタイミングで会社売却の報告をするべきか、よくある失敗例を紹介しながら対策方法を解説します。
目次
会社売却を検討し始めて、M&Aの相談に来る多くの経営者は、なるべく早く社員や金融機関、取引先に会社を売却するということを伝えようとしがちです。
日本の企業は特に、経営者と社員や取引先が苦楽を共にし、信頼関係や情のようなもので結びついていることも多く、秘密裏に話を進めることを良しとしない文化があります。
しかし、会社売却についての報告は早いほど良いわけではありません。
社員や金融機関に知らせるタイミングを間違うと、後々トラブルが起こる可能性が高くなります。
会社売却について社員や金融機関に報告するタイミングを間違ってしまうと、どのようなトラブルが起こり得るのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
会社売却について詳しい人は少ないものです。
友好的な会社売却だとしても、会社を売ることは身を売ることなのではないか、リストラされるのではないかと社員の間では不安が不安を呼んでしまいます。
会社に不安な空気が流れる状況になってしまうと、心配になった社員たちが一斉退職するリスクが最も危険です。
不用意な形で会社売却の話が伝わることのないように、会社売却は極秘で進めてください。
企業売却の検討段階であることを金融機関に報告すると、融資などに影響する可能性が高いです。
買収されるということは、赤字経営で危険な状態だと評価されることもあるでしょう。
万が一、売却の話がなくなり事業を継続することになった時、追加融資を渋られるなどのリスクがあります。
会社売却について説明するタイミングは、最終合意契約を締結した後がベストです。
出来れば、決済後つまりクロージング後が理想的なタイミングとなります。
最終合意契約書は法的な拘束力を持っています。
最終合意契約を締結すれば、契約事項は余程のことがない限りは遂行されるのです。
契約事項を遂行しなければ、損害賠償請求ができる契約となります。
つまり、売手側の企業にとっても、リスクを軽減した中で説明が可能となります。
どのような契約でも、最終的な決済に至るまでは何が起こるかはわかりません。
もし、最終合意契約を締結する前に報告してしまい、最終的には決済に至らなかったとしたら、経営者(売主)は大きな損害を受けることになるでしょう。
最終合意契約の前に社員に報告することは、売主側のリスクを考えると避けるべきです。
取引先に会社売却について報告するタイミングも最終合意契約後がベストとなります。
なお、買手側の企業が取引先との継続取引を条件としている場合もあるため、重要な取引先については新旧経営者が会社売却に関して報告・説明に赴くことが一般的です。
買手側の企業が取引先に対して先にアプローチし、売却情報が漏れることがないように、取引先に対する情報開示については慎重に進めてください。
会社売却に際して、買手側の企業は売主側の会社について前もって様々な情報を得ることになります。
具体的な売却価格、主要顧客や取引先の社名や企業価値、従業員リスト、借入金などの情報がなければ、買手側も利益につながるのか、買うかどうかの判断はできません。
そのため、売主側の企業に関する多くの機密情報を買い手側企業が把握している状態で、会社売却の話は進んでいきます。
取引先情報についても詳細に知っていることから、会社売却について買い手が取引先に情報をリークする可能性はあります。
しっかりと機密保持契約を締結しておくことが必要です。
会社売却の情報開示については、どの情報をどのタイミングで開示するかと同時に、誰に、どの深さの情報を開示するかも含めて慎重に進めましょう。
会社売却では、何でも正直に話せば信頼が保たれるわけではありません。
段階に応じた情報開示が必要となります。
会社売却を依頼しているアドバイザーと十分に検討しながら交渉を進めていきましょう。
金融機関への情報開示のタイミングは決済後がベストです。
売却側企業の財務状況等にもよりますが、基本的には決済完了後の報告で問題ありません。
金融機関に対しては、金融機関へのリスク説明の場合にもご説明しましたが、早期の相談はリスクでしかありません。
買手側は早期の相談が必要ですが、売り手側は万が一商談がなくなった場合のリスクを考え、決済完了後が望ましいと考えます。
売手側企業と取引金融機関の関係性を考えた場合、売手側の借入を全額返済する場合や借入の連帯保証を変更する場合などの問題が継続してありますが、基本的には買手企業の取引銀行で借り換え等が行われることが一般的です。
そういった観点からも決済完了後で問題はありません。
事業譲渡の場合は、少し話が違ってきます。
事業譲渡の場合は、継続して企業は存続し、代表者も事業を継続する場合は、最終合意契約締結時に取引金融機関へ報告する方がよいでしょう。
株式譲渡と事業譲渡での報告のタイミングの違いは、金融機関との取引が継続するかどうかがポイントとなります。
どちらにしろ、関係各所への報告のタイミングはそれぞれの企業の状況によって若干変わってきます。
依頼しているアドバイザーと相談の上、適切なタイミングでの報告を行いましょう。
一般的に、会社売却の成功率はそれほど高くないと言われています。
失敗の原因は様々なものの、従業員への説明タイミングを間違えたことが原因でM&Aが破談になった事例は意外と多いです。
建材の卸会社を経営するA社は、会社売却の手続き中であることを従業員のキーマン数名を集めて話しました。
会社売却の話を聞いた従業員の一人が、慣れ親しんだ会社が変化してしまうのではという不安を口にしていたことを、別の社員が耳にし、会社売却の噂は一気に従業員に広まってしまいました。
キーマンにだけ事前に報告するという選択が完全に裏目となり、事実とは違う債務超過の噂まで流れ始めて現場は混乱に陥ってしまいました。
その後、混乱は取引相手にまで及び、会社売却は中止となりM&A失敗に至っています。
このように、中小企業のM&Aでは従業員の間で不安が広まったことが失敗の原因となるケースは少なくありません。
中小企業には経営者が築いてきた文化や風土があることが多く、従業員にとっては経営者が変わることは企業文化や風土が大きく変わることと感じられるものです。
そして、買手側企業の規模が大きければ、「売却後にリストラされるのでは」「待遇が悪くなるのでは」、「仕事内容が変わるのでは」と想像して、不安になってしまいます。
告知のタイミングを間違えれば混乱が起き、従業員離職が発生したり、M&A自体が白紙になったりすることもあるのです。
会社売却を行う際は、適切なタイミングで社員や金融機関に売却の報告をすることが重要となります。
M&Aで起きがちな問題の多くは、間違ったタイミングでの報告、あるいは情報漏洩などにより発生する混乱から起きています。
一度混乱が起きてしまえば、事態の収束は非常に困難です。
発表する時期はいつでもいいだろうとタイミングの問題を軽く考えてしまうと、失敗する結果に陥る可能性もあります。
最終合意契約を締結するまでは、社員や金融機関には極秘で話を進めることが大切です。
そして、情報を開示する際の開示対象とタイミング、開示する情報の深さと広さを慎重に見極めるために、専門家に相談し早めにアドバイスを受けることをおすすめします。
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