M&A
2022/10/21
高齢化やアーリーリタイアなどを理由に後継者を探しているものの、どこに後継者候補がいるのかイメージできない方は多いのではないでしょうか。
一般的には従業員や親族を後継者にしますが、相手が承諾するとは限りません。
場合によってはM&Aを選択することも検討した方がよいでしょう。
本記事では、後継者探しの方法について、方法別にメリット・デメリット、注意点などを詳しく解説します。
目次
後継者探しの方法はさまざまですが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
自社に適した方法を選ぶためにも、それぞれの特徴やメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
後継者を従業員から探すことには次のメリット・デメリットがあります。
従業員は企業の業務内容を理解しているため、比較的スムーズに後継者として活躍できるようになります。
また、他の従業員としても馴染みのある人物が後継者になれば、モチベーションも低下しにくいでしょう。
後継者の教育にも十分な時間を確保できるため、より良い形で会社を引き継げる可能性があります。
後継者として選びたい従業員が必ずしも後継者になることを希望するとは限りません。
また、後継者に適性がある人物だとも限らないため、十分な見極めが必要です。
さらに、中小企業の場合は個人保証の引き継ぎも問題となります。
個人保証とは、会社の借金を代表者が連帯保証人になることです。
後継者が連帯保証人になる場合、もし会社が多額の借金を抱えて倒産すると、一緒に個人破産することになります。
このようなリスクを許容できなければ、後継者になることは承諾してもらえないでしょう。
また、退任時に対価として譲渡益を受け取りたい場合、従業員に十分な資力があるかどうかもポイントとなります。
続いて、親族から後継者を選ぶ際のメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
経営者のために仕事を続けてきた従業員は、その経営者が退任すると離職する可能性があります。
経営者の人柄に魅力を感じてここまで仕事を続けてきた従業員が多い場合は、親族を後継者とすることで離職のリスクを軽減できます。
血縁関係のある後継者であれば、従業員としても受け入れやすいでしょう。
従業員に引き継ぐ場合と同じく、本人にその気がなければ引き継ぐことはできません。
また、個人保証の引き継ぎや譲渡対価の支払いも問題となります。
そのほか、注意したいのは現場の仕事を理解していない親族には引き継がないことです。
初代経営者は優秀であったものの、親族の2代目経営者になってから経営が傾くケースは少なくありません。
自分が頑張って盛り立ててきた会社を親族に引き継ぎたいのは自然な考えではありますが、結果的に会社が倒産することがないように、後継者は慎重に選びましょう。
事業承継・引継ぎ支援センターとは、中小企業の事業承継を支援する公的機関です。
各都道府県に設置されており、後継者探しをはじめとした各種サポートを行っています。
後継者になりたい起業家と後継者を探している経営者をマッチングさせることも業務の1つです。
事業承継・引継ぎ支援センターで後継者を探すメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
事業承継・引継ぎ支援センターは公的機関のため、無料で相談できます。
また、他の公的機関や商工会議所、金融機関、士業事務所などと連携しており、中小企業の事業承継を法律や税金、金融などさまざまな角度から支援します。
普段から相談している身近な専門や機関に相談できることは大きなメリットです。
事業承継・引継ぎ支援センターで紹介された候補者が必ずしも後継者に相応しいとは限りません。
また、どのような人物か理解していないため、後継者として育成の途中で辞退されるリスクも比較的高いと言えるでしょう。
また、マッチングに成功した場合、その後の契約手続きや紹介先の士業事務所への依頼には費用がかかります。
M&Aとは、「合併と買収」を意味し、ここでは会社を第三者に譲渡することを指します。
M&Aを行うメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。
M&Aは、通常ではアドバイザリーや仲介会社などに買い手を探してもらい、譲渡完了までさまざまなサポートを受けます。
後継者候補の選出から選定のアドバイス、各種手続きまでサポートを受けられるため、安心して引き継ぎを進められるでしょう。
また、資力が不足しているために十分な対価を得られない心配もありません。
双方同意のもとで契約を交わし、法律に則って手続きを進めるため、もしキャンセルとなった場合は違約金の支払いを受けることも可能です。
M&Aは、後継者不足を解消する手段として多くの企業が行っています。
M&Aのデメリットは、仲介会社やアドバイザリーの質によって結果が左右されることです。
後継者の条件を満たしていない、半ば強引に契約を進めようとするなど、さまざまな問題が起きる可能性があります。
仲介会社やアドバイザリーを選ぶ際は、自社の規模に合ったM&Aを得意としているかどうか、実績、得意分野などを確認しましょう。
後継者探しが難航する場合、次のような原因が考えられます。
後継者探しを始めるのが遅かった場合、焦って探すことで従業員や親族が警戒する恐れがあります。
また、業務を行いながら後継者を探すことになるため、それだけ時間がかかります。
会社の後継者は、会社の経営権を得られるうえに、状況次第ではより多くの収入を得られます。
しかし、将来性が不透明な会社を引き継ぎたいとは思わないでしょう。
もし、個人保証も引き継ぐことになり、将来倒産してしまえば、後継者は個人破産を迫られる恐れがあります。
そのため、後継者は目先の利益ではなく会社の将来性にも注目します。
会社の将来性が不透明で、安心して引き継ぐことができない場合は、後継者探しが難航するでしょう。
個人保証は引き継ぎたくないと考える後継者は多いでしょう。
中小企業の多くは個人保証をしているため、会社が多額の借金を抱えて倒産した場合は、連帯保証人の経営者が代わりに返済することになります。
しかし、それほどの個人資産を持つ経営者は通常いないため、多くの場合は個人破産することになるのです。
個人破産すると、99万円以下の現金や生活必需品などを除く財産を没収されます。
このように、後継者になることにはリスクもあるため、後継者探しが難航するケースが少なくありません。
必ず従業員から選出したい、後継者は親族であるべきなど、1つの選択肢にこだわっている場合は、後継者探しが難航するでしょう。
こだわりが強い場合、その理由について分析することが大切です。
分析した結果、それほどこだわる必要がないことがわかり、別の方法で後継者を探せるようになる場合があります。
経営方針や取り扱い商品・サービスの関係で、マッチする人材が見つかりにくいケースがあります。
また、従業員に一癖も二癖もあり、受け入れられる後継者が見つからない場合もあるでしょう。
マッチする人材が見つかりにくいかどうかを踏まえて、後継者選びを始める時期を決めることが大切です。
後継者探しを成功させるには、次のポイントを押さえる必要があります。
後継者の選定には予想以上に時間がかかるため、十分に時間を確保しましょう。
途中で健康状態が悪くなり、急遽退任することになる可能性も踏まえ、退任予定の10年以上前から始めることが大切です。
また、会社の業務内容に精通しており、経営のノウハウも持っている後継者へ育成するために、10年程度の期間が必要でしょう。
余裕をもって後継者探しを始めて、育成の時間も十分に確保することで、後継者への引き継ぎの成功率が高まります。
会社の業績や将来性を資料にまとめて、後継者に伝えることが重要です。
どれだけ口頭で「景気がいいから大丈夫」「業界でトップシェアだから今後も大丈夫だと思う」などと言われても、後継者になるかどうかの一大決心をすることはできません。
過去のデータを用意して、説得力のある資料を作製しましょう。経営者としても自社の現状や将来性を知る良い機会になります。
企業価値を高めることで、企業の将来性や安定性がより良いものとなります。
企業価値を高めて、良いタイミングで後継者に引き継ぎましょう。
企業価値の高め方はさまざまですが、単に売上を伸ばすだけではなく、画期的な商品やサービスを開発して地位を確立したり、事業を広げて安定性を高めたりする方法もあります。
社内や親族内に後継者候補がいないとわかった時点で、早めにM&Aを検討しましょう。
M&Aも買い手探しに難航する可能性があるため、早めに相談することがポイントです。
ただし、焦って売却を進めると、先方と細かなところまで打ち合わせができず、譲渡後に経営方針が大きく変わって従業員に負担がかかるなど、不本意な結果になる可能性があります。
信頼できるアドバイザリーや仲介会社に相談しつつ、慎重に買い手を選定しましょう。
また、より多くの譲渡益を得たい場合は、依頼主にとって最良の結果になるように尽力してくれるアドバイザリーに相談することをおすすめします。
なお、仲介会社は中立な立場のため、そのような対応は通常行いません。
後継者は従業員や親族から選出することが一般的ですが、なかなか見つからない場合はM&Aも視野に入れましょう。
いずれの場合も早めに後継者探しを始めなければ、急遽退任することになったり、慎重に後継者を選べなくなったりする恐れがあります。
今回、解説したポイントを押さえて、より良い承継ができるように進めましょう。
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