M&A
2020/08/29
事業承継ガイドラインは、円滑な事業承継を実現すべく、中小企業庁が策定しているガイドラインです。ガイドラインの内容に従うことで、トラブルを防ぎつつスムーズに事業承継できます。しかし、事業承継ガイドラインの内容がわかりにくいと感じる方もいるでしょう。そこで今回は、事業承継ガイドラインの策定の背景から掲載内容の活用方法まで詳しくご紹介します。
目次
まずは、事業承継ガイドラインの概要から詳しくみていきましょう。
事業承継ガイドラインとは、円滑な事業承継や中小企業の後継者問題や経営に関する悩みを解消する目的で中小企業が策定したガイドラインです。
事業承継の重要性や具体的な方法、サポートの種類などが記載されています。ガイドラインを冒頭から最後まで読み込むことで、円滑な事業承継のための知識を身につけ、円滑な事業承継の手助けとなるでしょう。
事業承継ガイドラインが策定されたのは、中小企業が抱える後継者問題に起因します。中小企業の経営者は高齢化に伴い続々と引退していますが、後継者不在を理由にやむを得ず廃業するケースが増えてきているのです。
このままでは、経済に大きな影響が及ぶばかりか、大量の失業者が出てしまいます。そこで役立つのが第三者へ事業を承継するM&Aです。
事業承継ガイドラインでは、親族内承継だけではなく、M&Aのスキームや種類なども詳しく解説されています。
そのため、事業承継ガイドラインを読み込むことで、経営者が抱える悩みに応じた事業承継が可能になります。
事業承継ガイドラインの第1章の2項には、事業承継の類型が3つ記載されています。
親族内承継は、経営者の子供だけではなく、夫や妻、兄弟などの親族に承継する方法です。現経営者の血縁者であれば、従業員や取引先からも受け入れてもらいやすい一方で、必ずしも経営の素質があるとは限らないという問題点があります。
また、企業が赤字経営であれば、親族に引き継がせたくないと考える経営者もいるでしょう。また、親族側としても、赤字経営の企業を引き継ぎたくないと考える場合があります。そのため、親族内承継は安易に選択できる方法ではありません。
役員・従業員承継は、役員や従業員に承継する方法です。これまで一緒に働いていた人物であれば、経営方針への理解があるため、企業を大きく変革する必要がありません。そのため、経営者の後退を期に大量の退職者が出るリスクを抑えられます。
ただし、親族が大多数の株を保有している場合、後継者は名ばかりで、親族が実権を持ってしまうケースがあります。そのため、現経営者が親族間で調整し、全員が納得できる形で承継することが大切です。
M&Aは、第三者の個人や法人に事業を承継する方法です。株式譲渡や事業譲渡で会社全体、あるいは一部を譲渡します。経営者は売却益を得られるため、退任後の生活費に充てたり新事業の資金にしたりできます。
M&Aの成功には、企業価値の向上が欠かせません。赤字でも、譲渡先にとって価値があれば譲渡が可能です。できるだけ早く専門家に相談して、企業価値を上げていくことが重要でしょう。また、譲渡先が見つかったとき、即決するのではなく、複数回の面談と交渉を経て慎重に進めていくことが大切です。
後継者問題の解消が困難な場合は、自主廃業も1つの選択です。無理に経営を続けることで経営が悪化すれば、倒産に追い込まれる可能性があります。経営状況に問題がないタイミングで廃業すれば、従業員に十分な退職金を支払うことも可能です。
また、早い段階で廃業の意思を従業員に伝えることで、転職先を見つける猶予も与えられるでしょう。ただし、従業員数によっては廃業に多額のコストがかかります。
事業承継対策は、できるだけ早く始めることが大切です。後継者が決まっていても、経営のノウハウや技術、知識などが未熟な状況で引き継ぐことになれば、瞬く間に廃業に追い込まれる可能性があります。
そのため、数年~10年程度かけて後継者を育成する必要があるのです。
経営者がある程度の高齢の場合、急病で急遽承継が必要になる可能性があります。そのため、早い段階で事業承継対策を始めて、万一のときに備えることが大切です。
事業承継ガイドラインの第二章では、事業承継のための準備について記載されています。準備の流れについて詳しくみていきましょう。
まずは、経営状況や経営課題を把握することが大切です。把握したうえで、事業承継までの成長率の予測、弱みの改善、強みの強化などを進めましょう。現状の把握は、各専門家や金融機関に協力を求めることで、効率的に進めることが可能です。
事業価値を高めるために、経営改善を進めていくことが大切です。業界のシェア率を高めるために強みを作り、弱みを改善しましょう。また、従業員のパフォーマンスを発揮するための適切な権限の付与、円滑な業務を実現する管理体制などを実施することが重要です。
経営状況の改善だけではなく、内部にも目を向けましょう。従業員が納得できる事業承継を実現することで、後継者にバトンタッチしてからも変わらずに成果を挙げ続けてくれます。
事業承継を進めるうえで、事業承継計画の策定は必須です。事業承継計画には、会社の10年後を見据えた経営計画や誰にいつどのように承継するのかなどを含める必要があります。
従業員や取引先、金融機関などとの関係を踏まえ、全員が納得できる形で策定することが大切です。その結果、関係者の協力を得られやすくなり、承継後も信頼関係が維持できるようになります。
事業承継計画を策定するにあたり、経営に対する想いや価値観などを再確認することが大切です。それにより、自分や親族、従業員、取引先にとって最良の選択ができるようになるでしょう。
例えば、従業員を大切にすることを信条とするのであれば、後継者も同じように従業員を大切にできる人物でなければなりません。
退任後に従業員に迷惑がかかり、大量に退職するようなことがあれば、その後継者を選んだことに責任を感じてしまうでしょう。事業承継計画は、自分の経営に対する想いや価値観などを見直したうえで、関係者全員が納得できる形で承継できるものを策定することが大切です。
>>経営者としてハッピーリタイアするには?会社を高値で売却する方法とは
事業承継ガイドラインの第6章には、中小企業の事業承継をサポートする仕組みについて記載されています。事業承継をサポートする機関や制度について詳しくみていきましょう。
事業承継支援ネットワークは、全国の自治体に設置された中小企業の事業承継をサポートする機関です。事業承継の課題解決に向けて、士業や中小企業診断士などの専門家と連携し、きめ細かな支援を行います。事業承継診断を無料で受けられるため、事業承継に対する漠然とした不安がある段階でも気軽に相談できます。
事業承継補助金とは、経営者交代を機に新たな取り組みを行う後継者を支援したり、M&Aに伴う新たな取り組みを支援したりする制度です。例えば、後継者へ会社を引き継いだ後、このままでは会社の財源が尽きるといった状況で新たなビジネスを始めるときに、後継者が補助金を受け取れます。
それにより、後継者候補が後継者になることを承諾しやすくなります。事業承継補助金を受け取るには、さまざまな条件を満たしたうえで、審査に通過しなければなりません。
事業承継補助金については、こちらで詳しく解説しています。
日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金は、事業承継計画の実施に必要な設備資金や運転資金などを7,200万円(うち運転資金4,800万円)を上限に借り入れられる制度です。返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が7年以内で、どちらも2年の据置期間が設けられています。
対象者は次のとおりです。
・経営者と後継者(候補者を含む)が一緒に中期的な事業承継計画を策定している(融資後10年以内の事業承継の実施が見込まれる)
・安定的な経営権の確保などによって、事業承継・集約を行う予定がある
・経営承継円滑化法第12条第1項第1号の規定に基づく認定を受けた中小企業の代表者
・事業承継の際に個人保証の免除などを金融機関に申し入れたことで、新たな資金調達が困難になっており、なおかつ日本政策金融公庫が融資の際の個人保証を免除する方
・事業承継・集約に伴い、経営の多角化や事業転換、新たな取り組みなどを実施する方
資金の上限が高いため、事業承継計画の内容の幅が広がります。
事業承継ガイドラインには、事業承継を円滑に進めるために必要な情報が掲載されています。その全てを読み込むことで、事業承継の成功率が高まるでしょう。事業承継の成功には、M&Aアドバイザーや税理士、会計士などの専門家のサポートが欠かせません。
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