財務戦略
2021/01/23
今回は借り換えのメリット、デメリットについて解説します。
目次
借り換えとは、既存融資(今ある借入)を新しい借入で返済することで、金利や返済額などのメリットを生み出すものです。
表現を変えると、新しい融資で旧融資を返済する「融資のリセット」とも言えます。
借り換えには、その方法によりいくつかの種類があります。
1つ目は同じ銀行で既存融資を借り換える場合です。
複数の借入があり、返済を一本化して毎月返済額の増加を防ぐなど、既存融資の見直しに用いられます。
基本的に、その銀行にとっては融資残高が増えないため、積極的に進めてはくれません。
他行から借り換えされそうな場合の防衛措置として、あるいは取引条件に不満を訴えられたために、条件を良化させて取引をつなぎ止めようとするときなどに行ないます。
運転資金や新規設備導入の設備資金とともに、銀行の融資で主流となるのが他行の借り換え融資です。
当然ながら、他行より有利な条件でなければメリットが出ないので、金利や返済条件、あるいは担保(有担保を無担保に)や保証人(保証人2名を1名に、あるいは保証人なしに)などの条件面で既存融資より好条件になります。
借り換え融資を受ける側にとっては、借り入れする相手が変わるだけで残高は変わらないので、メリットがあります。
業績悪化などで返済が困難になり、返済額を減らしてもらうリスケでは、原則として返済年数を延長するだけです。借り換えと違い、既存融資はそのままで条件だけを変更します。
しかし、最近の銀行では監督官庁である金融庁などの方針の変化から、リスケしている債務者の融資も借り換えするようになりました。
借り換えに類似した折り返し融資というものがありますが、これはまったく意味の異なる融資です。
折り返し融資とは、銀行がよく使う言葉です。
例えば10年返済の融資を借りて5年が経つと、当然ながら残高も半分まで減ります。10年の返済の中間地点として、マラソンなどの折り返しになぞらえて、中間時点でもう一度元の借入額まで増やす(貸し増し)するのが折り返し融資です。
例えば1,000万円・10年返済で5年経過すると残高は半分の500万円になります。そこで折り返し融資として新規で1,000万円融資して既存融資を借り換えるのです。
実質は借り換え融資と同じことなのですが、融資残高を維持したい銀行が
「ご利用頂いてから、時間も経ったのでそろそろ折り返し融資などはいかがですか?」と提案してきます。
企業経営的に必須の借入ではなく、あくまで銀行の営業手法としての呼び方が折り返し融資です。メリットを打ち出して既存融資を借り換える、借り換え融資とはここが違うところです。
ここからは借り換え融資のメリット、デメリットについて説明します。
借り換えには返済負担の軽減と、真水融資が可能になるという2つのメリットがあります。
まず返済負担の軽減ですが、借り換えすることで返済額が少なくなり、負担が軽減されます。
例)A社の既存融資は3明細あり、
①残高500万円、毎月元金返済8万円
②残高300万円、毎月元金返済3万円
③残高200万円、毎月元金返済2万円
この場合の毎月返済合計は13万円になります。
上記①から③の借入計1,000万円を一本化して、10年返済で借り換えると、毎月元金返済は83,000円になり、毎月47,000円返済負担が軽減されるのです。
また上記の例で借り換えを1,500万円、10年返済で借り換えると毎月元金返済は125,000円で、まだ5,000円の返済負担軽減があり、しかも手元に500万円のお金が残ります。借り換えをして既存融資にプラスして借り換えると、手元に増やした分のお金が残り、これを「真水」と呼んでいます。
真水融資が出るのも、借り換えのメリットです。
既存融資の借り換えをして返済負担が軽減されるのは、返済年数が延びるからです。
返済があと5年残っている既存融資を10年返済で借り換えれば、毎月元金返済額は少なくなります。借り換えによって、トータルすれば借入している年数が増えることになり、支払う利息も増えることになります。これが借り換えのデメリットです。
また、真水融資の場合も同様です。500万円の既存融資を1,000万円で借り換えすれば、今までの500万円に真水500万円の利息も合わせて支払うことになります。
借り換えは公的融資の日本政策金融公庫や、信用保証協会融資では制度として確立されています。
日本政策金融公庫の借換制度「公庫融資借換特例制度」は 、経済環境の変化や金融機関との取引状況により資金繰りに困っている人や、大規模災害や新型コロナウイルス感染症の影響により融資返済に支障が出ている人が、既往公庫融資を借換できる制度です。
既存融資の借換だけではなく、原則として新規融資(真水)も含まれることになっています。その他条件等は日本政策金融公庫に確認してください。
信用保証協会の借換はいくつか種類がありますが、代表的なのは「借換保証」です。
複数の信用保証協会保証付き借入があり、毎月の返済負担が大きい場合に借換保証で借入を1本化することで、毎月の返済額を少なくするための制度です。
信用保証協会では、借り換えのとき新規融資(真水)を増額するか、そのままの残高で借り換えるかをセント無くすることができます。
借り換えをする上での注意点は、利息を含めた総額の支払いを考えるのが必要です。
既存融資を、同じ金利で借換して返済期間を延ばした場合は、延ばした期間の分利息を多く支払うことになります。
また真水融資があれば、増額した金額に対する利息も増えます。
毎月の返済額は、元金と利息の組み合わせで決まりますので、自分で計算して考える場合、あるいは銀行員から提案を受けて検討する場合でも
「毎月元金と利息の合計で今より少なくなるか?それとも増えるのか?」をしっかり計算することが重要です。
銀行間で競い合わせることにはメリット、デメリットがそれぞれあります。
言うまでも無く、銀行間で競い合わせる(銀行では競合と呼んでいます)ことは金利を引き下げる要因になります。
例えば今あなたがA銀行から年利3%で融資を受けているとします。A銀行はあなたを3%で融資する顧客と考えており、2%で融資を受けている人に比べれば金利で冷遇されているとも言えます。これは業況や取引実績などで金利が決まる銀行ではある意味仕方が無い部分です。
しかし、競合することで例えばB銀行が2%の借り換え金利を提示してきたとすれば、B銀行はあなたを2%で融資しても良い顧客だとみていることになります。A銀行があなたとの取引を維持したければ、2%まで金利を引き下げるでしょうし、取引継続の意思が無ければ何も対応しないでしょう。
いずれにせよ、他行の競合があれば実際に借り換えをしなくても既存融資の金利が引き下げられる可能性も高まりますので、これがメリットです。
他行から借り換えを提案されたなら良いのですが、自分から競合させようと他行に声を掛けたり、あるいは実際には無い借り換え提案を匂わせたりすることは避けた方が良いでしょう。
銀行と顧客は対等で、決して銀行がエラいわけではありませんが「恩知らず!」と銀行内部では考える場合もあります。こうなると借り換えをしないで留まったとしても関係性は悪化します。
まして自分から競合を狙ったり、匂わせて金利を引き下げようとしたりしたことが判明すると、今度は信用を失ってしまいます。
金融機関を選択するのは個人の自由で、借り換えすることも自由です。ただし、銀行員の立場から見た時にこれだけは気をつけて頂きたいことをまとめとして最後にお話しします。
借り換えをする場合、3本ある融資の借り入れ1本だけ借り換えすることは無理です。また全面借り換えをしたあとで、元の銀行に新規融資を申し込んでも、まず貸してもらえません。
銀行にはプライドもありますし、プライドを抜きにしても自行と決別していった人を、すぐに受入れることはしません。
借り換えするときは、二度と元の銀行と取引できなくなる覚悟は必要です。
ご相談は無料です。お気軽にお声かけください。
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