M&A
会社を売却する方法とは?
経営者は会社を辞めたいと考えたとき、どういった方法があるのでしょうか?
10年以上も前の話であれば、廃業、清算、親族内(息子などに)引き継ぐ事業承継という選択肢が一般的であったかもしれません。
もしくは、従業員や取引先だけでも知り合いの社長に引き取ってもらう、というのが第三者への引継ぎの選択肢だったのではないでしょうか。
それが、今では会社や事業が第三者へ売却できる時代になりました。
会社や事業が売却できるといっても具体的にどういった方法で売却できるのか、というのを知らない経営者も多いのではないでしょうか?
今回はそんな経営者のために、会社や事業を売却する方法を分かりやすくお伝えします。
目次
会社を売却する方法は2つ
具体的に会社を売却する方法は2つあります。
それは【株式譲渡】と【事業譲渡】という方法です。
それぞれ具体的に説明していきます。
株式譲渡とは
株式譲渡とは、簡単に言えば、会社をそのまま第三者へ譲渡することです。
会社が発行している株式を保有するオーナーが第三者へその株式を譲渡することにより、会社の経営権を譲り渡すことを指します。
一般的に中小企業の場合は株主(オーナー)=代表者ですので、株式を譲渡すること=会社をすべて(経営権を含めて)第三者へ譲渡することを意味します。
事業譲渡とは
事業譲渡とは会社の事業を第三者に譲渡/売却することです。
この場合に譲渡される対象は、事業を行うために必要な権利(許認可)、人、商品、機材などです。
また、対象となる事業は会社のすべての事業を売却することも可能ですし、一部の部門のみの売却も可能です。
株式譲渡ではないので、事業譲渡をした後に譲渡した法人はそのまま残ります。
基本的にはこの2つの方法で会社や事業は売却可能です。
どちらの譲渡を選択するかは、現在置かれている会社の状況や今後の会社の展開によって最良の選択は異なります。
次に【株式譲渡】【事業譲渡】を行う際の注意点についてお伝えします。
株式譲渡の注意点とは
株式譲渡の最大のメリットは手続きが事業譲渡と比べてスムーズである点が挙げられます。
会社ごと買手企業へ譲渡しますので、単純にオーナーが変わるだけで、会社と取引先や従業員との契約が変更になることはありません。
その代わりに債権債務をすべて引き継ぎますので、見えない負債が存在する可能性もあります。
以下、株式譲渡を選択した場合の売り手側と買い手側それぞれの注意点です。
株式譲渡における売り手側の注意点
売却する側の注意点としては、借入の引継ぎが大きな問題です。
基本的には、会社ごと買手企業へ引継ぎますので、借入金(経営者が連帯保証をしている借入)についても買手企業へ全て引き継がれます。
買手企業との交渉の中で、どのタイミングで、どういった方法で借入金を返済するのか。
もしくは、代表者としての連帯保証債務を解除するのかについては、しっかり話をしておきましょう。
また、代表者が会社へ貸しているお金(勘定科目で言えば【代表者借入金】)については、買手企業はその返済を基本的には認めないことが多いです。
つまり株式の譲渡代金以外に返済を買手企業に求めても認めてもらえないケースが多いです。
株式譲渡における買い手側の注意点
買い手側の注意点としては、会社ごと引継ぐので、目に見えない負債(リスク)に対してどのように対処するかという点です。
主な問題として、労働問題や隠れた債務、訴訟のリスクなどが挙げられます。
上場企業などの大企業の場合はある程度の企業ガバナンスがあるので、安心できる側面もありますが、中小企業の場合は企業ガバナンスが未整備の企業が多く、見えない問題(リスク)が潜んでいるケースがあります。
そういった意味で、デューデリジェンスはしっかりと行うことをお勧めします。
実際の現場では、ほとんどの買手企業が詳細なデューデリジェンスをしないで企業を買っています。
もちろん、調べてもキリがない、高額な費用がかかるなどの意見も十分に理解できますが、最低限の調査は行うようにしましょう。
また、万が一、買収後に何かしらの問題が発生した場合は、どちらがどういった保証を行うのかについては契約書にしっかりと記載しておくことをお勧めします。
事業譲渡の注意点とは
事業譲渡は株式譲渡と違い債権債務のリスクはほとんどありません。
リスクが少ない代わりに譲渡する手続きは株式譲渡に比べて煩雑です。
以下、事業譲渡を選択した場合の売り手側と買い手側それぞれの注意点です。
事業譲渡における売り手側の注意点
売り手側の注意点は譲渡した後の会社の取り扱いです。
複数の事業を行っており、その一部の譲渡であれば問題はありません。
また、すべての事業を譲渡し、その譲渡代金で会社が清算できる状況になる、もしくは譲渡代金で別事業を始めるということであれば特段の問題はないでしょう。
問題となるのは、譲渡金額よりも会社としての借入額が大きい場合、つまり、譲渡代金で借入が返済できない状況であり、かつ、売上を上げる事業が会社に何も残っていない場合です。
その場合は、事業譲渡した後の会社としての方針、残った借入の処理の方法など、しっかりと準備した上で取り組むかどうかの判断をすることをお勧めします。
>>株式譲渡と事業譲渡での借入金の取扱いの違いを教えてください
事業譲渡における買い手側の注意点
買手企業の注意点としては、諸々の契約をすべて買手企業へ移行する必要がありますので、その過程の中で、事業への悪影響が及ばないかをしっかりと買収前に確認しておく必要があるでしょう。
特に、許認可の引継ぎ可否、従業員の移籍、取引口座の変更、賃貸借契約の変更など、この変更ができないと事業に大きな影響を及ぼします。
特に、許認可の引継ぎ可否は事前にしっかりと確認をしておきましょう。
許認可の引継ぎができないと事業継続ができない場合などもあります。
また、従業員は転籍を嫌がり退職してします場合もあります。それがキーマンの従業員であった場合は事業への影響は非常に大きいです。
飲食業などでよくあることですが、賃貸借契約が引継げないケースもたまに見かけます。
そういった場合はどう対処するのかなど、事前に確認しておく必要があります。
>>M&Aではどのタイミングで従業員や金融機関に売却を報告するべきか?
まとめ
会社を売却する方法は2つあります。
それは【株式譲渡】と【事業譲渡】です。
それぞれに注意点があります。
【株式譲渡】の注意点
● 売手企業は借入金の取扱い
● 買手企業は隠れたリスクを最小限に抑えるための準備をすることです。
【事業譲渡】の注意点
売手企業は売却したあとの企業の方針について事前にしっかりと取り決めしておきましょう。
買手企業は諸々の契約等を引継ぐ必要がありますので、そもそも引継ぎが可能かどうかを含めて、譲渡まえの交渉段階で事前確認を可能な範囲で行いましょう。