M&A
2019/09/25
M&Aのサポートを専門業者に依頼する場合、「M&Aアドバイザー」か「M&A仲介サービス」のどちらを選ぶか迷うこともあります。
似たような印象を受けますが、双方は目的からして大きな違いがあるのです。
M&Aアドバイザーの業務は、依頼主の立場からさまざまなリスクを回避し、希望に沿ったM&Aを実施にすることが目的となります。
M&A仲介サービスの業務はあくまでもマッチングから案件を成約に導くことが目的であり、買い手・売り手両者の妥協点を見つけていくことが仕事です。
これが、M&AアドバイザーとM&A仲介サービスにおける決定的な違いと言えるでしょう。
今回は、それぞれのより具体的な業務内容や報酬体系の違いまで、詳しく解説させていただきます。
目次
現在、多岐にわたる業界でM&Aが実施されていますが、一昔前までM&Aはあまり良いイメージを持たれていませんでした。
買収というと自社の力が衰え、大手企業の傘下に収まったり、敵対的買収が繰り広げられたこともあり、経営者にとって悪いイメージが定着してしまったのです。
しかし、最近は知名度が高い企業同士でM&Aを実施したり、中小零細企業が他の中小企業や大手企業と手を組むためにM&Aを行ったりと、前向きなM&A案件が増えています。
特に中小企業は現在、オーナーの高齢化や後継者不足による事業承継の問題を抱えるケースが増えており、従業員や顧客、取引先のためにM&Aを問題解決の手段として用いる傾向にあるのです。
ただし、中小企業の中にはM&Aの知識がなく、買い手となってくれる企業を探せずにいる企業もあります。
そんな企業をサポートするために、M&Aアドバイザーが存在しています。
また、企業や事業を買収したいと考える企業に対して、スムーズに売り手企業を見つけるために、M&A仲介サービスを利用する方も増えてきています。
企業買収をしたい、もしくは経営難や事業承継の問題で会社や事業の譲受先を探しているといった場合、自社の人脈のみで希望の条件が揃った相手先を見つけるのは非常に困難です。
なぜなら、日本もしくは世界中にある企業の中から自社と相手先、それぞれのニーズや条件がマッチしないと、お互いにとってメリットがあるM&Aが行えないためです。
M&Aを行う相手を見つけるために、幅広いネットワークを持つM&Aの専門家に相談するのが賢明と言えます。
丁寧なヒアリングで会社のニーズを引き出し、現状の企業分析と将来的な事業展開なども考慮しながらコンサルティングを行うM&A専門サービスを活用しましょう。
M&Aの相談からマッチング、成約のサポートまで行ってくれる専門サービスには、M&Aアドバイザーと仲介サービスの2種類があります。
どちらも同じように見えますが、業務内容や報酬体系などに違いが見られます。
M&Aアドバイザー(FA:ファイナンシャルアドバイザー)は、買い手側と売り手側のどちらか依頼された一方のアドバイザーとしてサポートしていきます。
例えば売り手側から依頼されれば、依頼主の立場に立って希望に沿ったM&Aが実施できるように交渉を進めてくれるのです。
M&Aアドバイザーには弁護士や公認会計士、経営コンサルタントなどの専門家や、経営戦略も含めたアドバイスが可能なアドバイザリー会社などがあります。
また、既にM&Aを行う相手が見つかっている場合に、本当にその企業と契約を結んでも良いかチェックする“セカンドオピニオン”的な役割を依頼する場合もあります。
具体的にはトラブルを回避するためにM&Aを進めるにはどうすればいいかの相談や実際に対策を提案してもらえたりすることについてアドバイスが受けれます。
メリットは、売り手と買い手、どちらであっても自社が希望する条件を相談しやすく、なおかつプロが交渉してくれるので希望した条件が満たされる可能性が高い点が挙げられます。
仲介サービスだとどうしても買い手側の条件を優先してしまう場合があります。
これは、買い手企業はこの先リピーターとなってくれる可能性があるためです。
そのため、売り手側が自社の希望条件を少しでも通りやすくして、高値の売却を狙うならM&Aアドバイザーに依頼した方が成功しやすくなります。
M&Aアドバイザーは売り手側にとって大きなメリットをもたらしますが、買い手側が依頼しても依頼主の立場になって交渉を進めてくれるため、基本的にどちらが依頼してもメリットは得られます。
デメリットは、手数料が高額になりやすいという点です。
仲介サービスは買い手と売り手の両者から報酬を受け取れるため、高額な手数料を取る必要もないのですが、一方からしか報酬が受け取れないM&Aアドバイザーは手数料の負担もその分大きくなってしまいます。
買い手の場合、高額な手数料が発生したことで資金不足に陥り、せっかく買収したにも関わらず経営に悪影響をもたらしてしまう恐れがあります。
また、売り手側も想定した売却利益を下回ってしまい、引退後の資産に不安を感じる可能性もあるでしょう。
さらに買い手と売り手、どちらもM&Aアドバイザーに依頼していた場合、お互いの利益を優先して交渉を進めるため、交渉期間が長引きやすく破断になるケースは多いです。
早めの売却を考えている経営者にとっては、不利益を被ってしまうでしょう。
M&A仲介サービスは、M&Aの相談にも応じているものの基本的には依頼主が希望する条件をクリアできる相手を見つけ、紹介することを業務として取り組んでいます。
マッチング後は成約となるまでスケジューリングや契約書作成といったサービスも行いますが、アドバイザリー業務とは異なりマッチング後の案件を成約させることが目的となっているため、買い手側と売り手側の双方から妥協点を見つけ、成約を促します。
メリットは、手数料がアドバイザーに比べて安価であり、成約までのスピードも速くなりやすいという点です。
上記のデメリットでも述べたように、アドバイザーは1社との契約になるためその分手数料が高額となってしまいます。
また、条件を優先するよりも成約を優先するため、早めに会社・事業を売却したいと考える売り手側にとっては良い部分と言えます。
成約を優先するからと言って、適切なM&Aが実施されないわけではありません。
きちんと双方の状況が把握できているからこそ妥協点も見つかりやすく、駆け引きに時間を掛けずに済むのです。
デメリットは、やはり必ず希望の条件が叶うわけではないという点です。
早く話し合いも進む分、お互いが妥協することになるため、最優先にしたい希望条件がある場合だと仲介サービスは向いていません。
また、仲介業者は双方にとって妥協点を見つけることが業務となりますが、リピーターになる買い手側を優先して妥協点を作ってしまう可能性があります。
そうなると売り手にとって不利な条件でM&Aが成約してしまう恐れがあるため注意しなくてはなりません。
M&Aアドバイザーと仲介サービスは業務の目的だけでなく、報酬体系にも違いが見られます。
まず、仲介サービスは通常紹介した相手同士が成約となることで、その成功報酬(仲介手数料)を買い手・売り手から受け取る形になります。
一方、アドバイザーの場合は相談に応じることで、相談料やコンサルティング料が発生してきます。
体系も細分化されているケースも多く、事務所・会社によって大きく異なります。
現在はパッケージプランとして、コンサルティング料から企業とのマッチング、成約までのサポートをまとめたプランを用意するところも増えてきました。
報酬体系の種類は以下の通りです。
レーマン方式はM&Aで取引された金額に応じ、報酬金率が変動する仕組みを指します。
例えば、買い手が売り手を買収した際にかかったお金が約5億円だと5%、10億円なら4%というように、取引額の変動に応じて報酬金率も変わっていくのです。
リテーナー報酬はいわゆる定額顧問料であり、毎月決められた金額を報酬として支払います。
月額は企業によっても異なりますが、コンサルタントの技量や人件費、案件の難易度に応じて変化し、数十万円以上になることが多いです。
リテーナー報酬の場合6ヶ月や1年など最低契約期間も設けられるので、リテーナー報酬でかかる費用の総額も算出しやすくなっています。
着手金報酬とは、M&Aアドバイザーや仲介サービスが依頼を受けた際に支払われる手数料を指します。
着手金は成功報酬と異なり、例え成約に失敗したとしても返ってきません。
きちんと条件に合った会社を探してもらうための先行投資とも言えます。
相場は50万円~200万円と言われており、中には着手金無料で対応してくれるところもあります。
できるだけコストをかけたくない場合は着手金無料のところも候補の1つとして考えてみましょう。
完全成功報酬とは、通常の報酬体系でかかってくる着手金や中間金、リテーナー報酬などが一切かからず、成約するまで費用が発生しない仕組みです。
完全成功報酬の方が、明確な料金総額が出やすいというメリットもあります。
ただし、中には完全成功報酬であっても中間金が発生する場合もあるため、契約前には必ず確認しておきましょう。
M&Aアドバイザーと仲介サービスはどちらも似たような報酬体系を取っているケースは多いですが、違う部分は買い手と売り手の双方から報酬を受け取っているか、どちらか一方から報酬を受け取っているかという点です。
M&Aアドバイザーは買い手もしくは売り手と契約を結んでいるため、報酬を受け取るのも基本的には1社からのみです。
しかし、仲介サービスの場合はマッチングさせて成約となった買い手と売り手の双方から報酬を受け取ることができます。
つまり、M&Aアドバイザーの方が報酬金や手数料などが高めに設定されやすく、仲介サービスは2社から受け取れるため1社にかかる金額の負担が少ないのです。
レーマン方式や最低報酬制度の特徴と手数料の決まり方を解説します。
M&Aのサポートやマッチングを依頼する会社を選びたい場合、どのようなポイントを参考に選べば良いのでしょうか?
会社を選ぶ時のポイントとしてまず押さえておきたいのが、取り扱い案件の規模です。
アドバイザーや仲介サービスは、主に業種に特化しているケースと売上の規模に特化しているケースに大きく分けられます。
業種に特化しているケースでは、例えば調剤薬局に特化している会社もあれば飲食店を中心に手掛けている会社もあるのです。
ある業種を専門的に取り扱うことで、ネットワークがより密なものとなり、業種や仕事、経営の内容をきちんと理解してもらえるため、優良な相手先と出会いやすいというメリットがあります。
売り上げの規模に特化しているケースでは、最低報酬額を見るとその会社が取り扱っている規模が把握できます。
例えば最低報酬額が1000万円以上だった場合、譲渡金額は2億円以上となるため、大手の企業案件のみに対応している可能性が高いです。
一方、最低報酬額が150万円の場合、営業利益500万円程度の中小企業を取り扱っていることが分かります。
会社を比較した際にどちらも取り扱い案件の規模がほとんど同じであれば、無料相談やセミナーなどを活用してM&A以外の選択肢が提示されるか確認してみましょう。
もしもM&A以外に複数の選択肢を提示された場合、その会社に相談するべきです。
なぜなら、多くのM&A会社は自社に依頼してほしいからと、ベストな選択ではなくてもM&Aを勧めてくる可能性が高いためです。
逆に複数の選択肢を提示してくれる会社は、きちんと自社についてベストな選択を考えてくれるところだと判断できます。
結局、仲介とFA(M&Aアドバイザー)はどちらに依頼するべきなのでしょうか?
これは会社の現状によって大きく異なります。
例えば、経営状況が比較的良好であり、それほど売却を急いでいないのであればFAへの依頼がおすすめです。
どちらか一方の立場でアドバイスをして頂けるので、依頼主の利益を第一優先に相手方と交渉してくれます。
一方、業績不振や債務超過などで会社・事業の売却を急いでいる場合は仲介サービスがおすすめです。
仲介サービスの方がスピード感もあり、場合によっては経営戦略の立案までサポートしてくれる場合もあります。
経営者の方の中には、M&Aアドバイザーも仲介サービスも、業務内容や報酬体系に違いがほとんど見られないと感じてしまうかもしれません。
特に、近年はアドバイザーの中にも買い手と売り手の双方にアドバイザー業務を提供する会社もあれば、仲介サービスとほとんど似たような業務を取り扱っているコンサルティング会社もあります。
しかし、本来であれば売り手と買い手は利益相反の関係にあたり、双方の考えは全く異なるはずです。
この考えに従えば、M&Aをサポートする会社も売り手と買い手に分かれて行った方が良いと言えるでしょう。
銀行などの金融機関では、双方の代理は行っておらず買い手と売り手がどちらも顧客だった場合、どちらかのアドバイザリーとして入るようにしているところも多いです。
一概に、「アドバイザリー会社を選ぶべき」、「仲介サービスを選ぶべき」とは言えません。
自社にとって、どの会社を選ぶべきなのか、どんなサービスが適しているのかをしっかりと考える必要があります。
もし、自社がどの会社へ依頼すればいいか分からないという方は、下記の【アドバイザーを選ぶポイント】から判断できるので、ぜひ活用してみてください。
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