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株式譲渡のメリット・デメリットとは?

2019/12/03



中小企業が会社売却・M&Aを行う場合、主に「株式譲渡」と「事業譲渡」と呼ばれる取引形態となります。


事業譲渡を行う前提で話を進めていたにも関わらず、取引先が事業を引き継げなかったり、賃貸借契約が変更できなかったり、許認可の引継ぎがなかなかできなかったりするなど、結果的に事業譲渡できなかったことで経営者に大きな損失がのしかかってくる可能性が高いです。


そこで今回は、もう1つの方法である「株式譲渡」にスポットを当て、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのかをご紹介していきます。


会社売却は中小企業の経営者にとって重要な決断となるため、失敗しないためにも株式譲渡の知識を身に付けていきましょう。


株式譲渡について



株式譲渡とは会社を売却する方法の1つで、株式を譲渡させることで第三者に会社を譲ります。


株式というのは会社法に基づいた株式会社へ出資した人に対し、発行されるものです。


会社にお金を出した代わりに株式を譲り受け、株主になります。

簡単に言えば、株式があることで会社のオーナーのような存在になれるのです。


大手企業だと経営者や会社役員の他にも、投資家が株式を購入していますが、非上場の中小企業だとほとんどの株式を経営者と会社役員、もしくは親族が一部所有するケースが多く、会社に直接関係しない投資家や第三者が持っていることはほとんどありません。


つまり、中小企業が株式譲渡を行うと、譲渡代金は経営者個人へ支払われる可能性が高いです。



株式譲渡のメリット



中小企業のM&Aにおける株式譲渡のメリットは2つあります。

1. 手続きが簡単な点
2. 創業者利益を個人として受けることができる点
3. 税務上のメリット

この3つについて詳しく見ていきましょう。

1.  事業譲渡に比べて手続き簡易



買手企業が株式譲渡を行う最大のメリットは、株主(オーナー)が変わるだけで、特にそれ以外の変更を行わなくても、事業継続が可能になる点です。


手間をほとんどかけずに事業の引継ぎが可能なので、事業譲渡に比べるとスムーズに譲渡することができます。


事業譲渡の場合、従業員や取引先、事業に関わる許認可や一切の契約など、売り手企業から買い手企業へ移行する際に契約のし直しや許認可の申請などを進めていかなくてはならず、非常に時間が掛かってしまうものです。


また、M&Aを行うと多くの従業員や取引先は将来的にどうなるか不安を感じ、最悪の場合離脱するリスクもあります。

しかし、株式譲渡であれば雇用契約もそのまま引き継がれますし、会社のサービスなどはそのまま存続するため従業員と取引先が離脱するリスクを抑えられるのです。


2.  創業者利益を個人で受け取れる



中小企業の経営者は自社の株式をほとんど保有している状態かと思いますが、株式を売却すれば第三者に移せるだけでなく、創業者利益を受け取れるようになります。


もしも後継者がいなあった場合、第三者に株式譲渡を行えば経営者を退く際の退職金がもらえ、なおかつ創業者利益も受け取れるため、ハッピーリタイアにもつながるでしょう。


これまで責任を持ちながら会社を支えてきた経営者が持つべき権利と言えます。


3.  税率が低い


事業譲渡に比べて株式譲渡の方が発生した利益にかかる税率が低いという点も、メリットに挙げられます。


事業譲渡だと法人税に加えて消費税もプラスされます。



しかも、事業譲渡の法人税率は利益額によって変化しますが、40%前後の税率が掛かると言われているのです。


株式譲渡の場合、株式の売却額(譲渡所得)に応じて税金が発生するのですが、譲渡所得に対する税率は所得税15%・住民税5%の20%になるので、事業譲渡と比べると非常に税率が低くなることがわかります。


>>株式譲渡と事業譲渡の具体的な違いとは


株式譲渡のデメリット



株式譲渡はメリットが多い方法ですが、デメリットが全くないわけではありません。

主に2つのデメリットが存在します。

1. 負債の引継ぎ
2. のれん代が買い手企業の財務負担となる

具体的にどのようなデメリットなのか、解説していきましょう。

1. 負債の引継ぎ



株式譲渡のデメリットの1つに、負債の引継ぎが挙げられます。

株式譲渡は会社をそのまま引継ぐようなイメージなので、利益だけでなく負債も全て引継がなくてはなりません。


また、決算書に記載されていない、「簿外債務」まで引継ぐ必要があるため、買い手側は大きな負債を抱えてしまうリスクとなるでしょう。


会社を買収する前に簿外債務の存在を知っていれば、株式譲渡契約書の中で売り手側と買い手側、どちらが負担するのか取り決めを行うことができます。


しかし、近年は労働問題などの影響から買収する時点で表面化されず、買収後に発覚するケースもあります。


買い手側は簿外債務のリスクを回避するためにも、念入りにデューデリジェンス(買収監査)を行っておきましょう。


>>会社を買収する場合の簿外債務のリスクとその対処法とは


2.  のれん代が買い手企業の財務負担となる



のれん代とは、買収価額と売り手側の時価評価純資産(簿価)の差額を指します。


デューデリジェンスを行う時、決算書の数値(簿価)は時価(買収した時の現在価値)に置き換えてから企業価値を調べていきます。

近年中小企業のM&Aで行われている企業評価は、「時価評価純資産+営業利益の○年分」というコストアプローチ法における【時価純資産+営業権】を活用するケースが多いです。


そのため、時価評価純資産に営業権分の価値も加わったものが、のれん代となります。


会計上ではのれん代を毎年一定の金額で減価償却しなくてはなりません。

M&Aの場合、得られるはずだった収益が出せないとののれん代における償却分が本業の足かせとなり、営業利益の圧迫につながる可能性が高いです。


上場を目指す企業や利益を確保したい企業にとって、のれん代の償却もデメリットの1つと言えるでしょう。


>>M&Aにおけるのれん代とは


株式譲渡の注意点



株式譲渡を行う際には、いくつかの注意点があるので必ずチェックしておきましょう。


株券発行の有無



株式を譲渡する際には手続きが必要となりますが、株券発行の有無でその内容は変わってきます。


会社法が制定される平成18年(2006年)よりも前に創業・設立された会社であれば、株券を発行しないと明記しない限り、「株券発行会社」になります。


平成18年以降にできた会社は、定款で特に示されていなければ基本的に株券不発行会社です。


株式譲渡の場合、手続きの中で株券の受け渡しを行わないと株券の効力が発揮されないので注意しましょう。


株式譲渡制限の有無



株式は比較的自由に売買されているのですが、例えば会社が不利益を被ったり、トラブルが起きたりしないよう、売買する量に制限がかけられています。


譲渡制限が掛けられている場合、当事会社から株式譲渡の承認を得なくてはなりません。


これは、定款もしくは法人登記簿の確認で確認できますので、売却する際は、事前にチェックしておきましょう。


株式譲渡の承認手続きの有無



譲渡承認する場合と非承認となってしまった場合では、それぞれ対応が異なるので気を付ける必要があります。

譲渡承認する場合



譲渡を承認する場合、請求後2週間以内で株式譲渡を行う当事者に対し、承認した旨を知らせる必要があります。


譲渡非承認する場合



非承認する場合は、制限譲渡株式の買取を行う必要があります。

株式の買取やその数は株主総会で決議されますが、この時株式譲渡の証人請求者には議決権が与えられないので注意してください。


簿外債務へのリスクヘッジ



買い手側は簿外債務へのリスクヘッジとして、デューデリジェンスをしっかりと行うことが大切です。 デューデリジェンスには大きく「財務DD」と「法務DD」に分けられ、それぞれ細かな部分まで調査を行いますが、さらに書類や資料では見られないような事項も、徹底的に調べることで簿外債務のリスクを回避できるでしょう。


株価の算定方法



非上場の中小企業の株価を算定するには、上記でもご紹介したように「コストアプローチ法」が主に活用されています。


純資産額がわかると比較的簡単に株価を算定することができるため、非上場の中小企業を算定する際にも向いています。


ただし、あくまでも現時点での純資産額から割り出されるもので、将来的な価値は一切データとして使いません。


企業の将来的な部分を加味せずに株価を算定するため、株式譲渡との相性はバツグンと言えます。


1. 簿価純資産価額法



簿価純資産価額法は、純資産をそのまま株主価値として考え、発行済み株式の総数と割って算定する方法です。

非常に簡単な算定法として知られています。


2. 時価純資産価額法



時価純資産価額法は、純資産を時価換算してから株価を算定する方法です。

こちらの方が現時点での株価となるので、簿価純資産価額法よりも精度の高い方法になります。


ただし、知的財産権や営業権などの無形資産を時価換算するのは非常に難しく、専門的な知識を要します。


この他にも、企業が持つ資産・負債を改めて取得するのに必要な費用(再調達原価)を用いた「再調達原価法」、清算の場面に特化し、正味売却価額を基本として算定される「清算価値法」なども活用されています。


>>企業買収の価格はどのような決め方をするのでしょうか?


株式譲渡に向いている会社



許認可



株式譲渡に向いているのは、恩恵を受けたい・取得したいと考える売り手側の事業が、許認可を受けないと営業できない場合です。


事業譲渡の場合、買い手側で再度許認可を受ける必要がありますが、許認可を受けるまでに時間と手間が掛かってしまいます。


できるだけ手間を減らし、譲渡後迅速に営業を開始したい場合は株式譲渡の方が向いているでしょう。


債務超過ではない



株式譲渡は会社をそのまま譲り受けることになるため、債務超過であると買い手側は買収後に負債が大きな負担となってしまう可能性が高いです。


債務超過の会社を買収する場合は、まずはその原因をしっかりと把握しましょう。


その上で、経営改善による黒字化や、そもそも事業譲渡より株式譲渡の方が明らかにメリットがる場合などは、債務超過の企業であっても株式譲渡のスキームを採用しても良いと考えます。


また、売手企業の場合は、債務超過があり、赤字経営から脱出したい場合は、株式譲渡による抜本的な経営改善という選択も検討しては如何でしょうか?


事業規模が大きい



売り手側のメインとなる事業規模が大きく、1本に絞って営業している場合や、1つの事業における各業界への影響が大きい場合などは事業譲渡にするよりも、株式譲渡でまとめて買収した方が手間もコストもかからずに済みます。


企業にブランド価値がある



事業だけでなく、企業そのものにブランド価値がある場合、そのブランド力で売上を伸ばしていくことも可能です。


そのため、企業自体にブランド価値がある場合も株式譲渡が向いていると言えるでしょう。


まとめ



中小企業のM&Aでは株式譲渡が活用されるケースもあります。

株式譲渡を活用する場合は、きちんとメリット・デメリットを把握しておくことが重要です。


株式譲渡のメリット



株式譲渡は事業譲渡に比べて、引継ぎをスムーズに行えることが1つの魅力になっています。

また、株式を売却することで株主自身がキャッシュを受け取れるでしょう。

その他、税務上でのメリットも大きいです。


株式譲渡のデメリット



一方、株式譲渡で一番のデメリットとなるのは、負債の引継ぎです。

買収後に多額の簿外債務が発覚し、買い手側に大きな負担がかかってしまわないよう、買い手側は入念なデューデリジェンスを行う必要があります。


株式譲渡と事業譲渡はメリットとデメリットにも違いがありますが、そもそも企業価値の評価方法が異なります。


現時点での財務状況・企業状況を踏まえて、どちらの譲渡方法が大きなメリットを得られるのか調べるためにも、まずは現時点の企業価値を算定してみましょう。


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