M&A
2019/08/09
経営者にとって会社売却を行った際に得られるメリットとデメリットは、当然気になってしまうものです。
例えば今会社を売却した場合、メリットが大きいのか、それともデメリットが大きいのかは、売却するタイミングにおいても重要なポイントと言えます。
そもそも会社売却によるメリット・デメリットにはどういったものが挙げられるのでしょうか?
今回は会社売却のメリット・デメリットについてご紹介していきます。
目次
これまで「会社売却」というと、あまり良いイメージを抱かない方も多くいらっしゃいました。
例えば、経営難となって会社を売却せざるを得なくなった場合に、仕方なく会社売却を行うといったイメージです。
しかし、近年は後継者問題を解消し事業承継で次世代につなげたり、事業を切り離すことで主力の事業1本に集中したりするなど、前向きに会社売却を検討する方が増えています。
会社売却を考える場合、主に2つの選択肢から売却方法を選ぶことになります。
株式譲渡は、会社の株式を買い手企業に売却し、会社の経営権を譲渡する方法です。
つまり、会社のオーナーチェンジです。
中小企業のM&Aにも多く活用されており、手続きがスムーズに進められる、経営者個人が株式を持っていれば売却益を個人が獲得でき、ハッピーリタイアにつながりやすいといったメリットがあります。
事業譲渡は、会社ではなく一部の事業だけを売却し譲渡する方法です。
株式譲渡よりも複雑な手続きが多く、スムーズに進められないケースも多いですが、売り手側は主力事業だけに集中できること、買い手側は簿外債務のリスクを回避できることから、M&Aを行った後にトラブルへと発展する場合が少ない点がメリットとなっています。
この表は、会社売却をした際のメリット・デメリットをまとめたものです。
会社売却をした際のメリット・デメリットを具体的に見ていきましょう。
会社売却のメリットは多くありますが、経営者個人にとってのメリットについて詳しく見ていきましょう。
創業経営者が創業利益を得るには、後継者(親族)に事業承継を行い、自身の退職金を得る方法と、第三者へ保有していた株式を売却し、売却益を受け取る方法の2つがあります。
会社の社長はサラリーマンとは異なり、勤続年数に応じて退職金が絶対に貰えるわけではありません。
これまでの企業業績が良ければ、その分受け取れる退職金も増えますが、逆に業績が悪ければ場合によっては退職金がゼロ円になってしまうこともあります。
しかし、基本的には長期にわたってコツコツと経営を続け、企業を発展させてきた経営者であれば、株式譲渡益によって多額の退職金が受け取ることもできます。
例えば、現在の大卒サラリーマンが将来得られる退職金は平均2,500万円前後です。
一方、後継者に事業譲渡を行った場合に得られる経営者の退職金は、仮に毎月の報酬額が100万円・勤続25年でも、最低でも2,500万円以上の退職金は計算上は得られ、サラリーマンの平均よりも大きく上回る退職金を得ることもできます。
第三者への株式譲渡であれば、より多くの退職金が得られるでしょう。
なぜ、第三者への株式譲渡の方が多額の退職金を受け取れるのかというと、営業利益がのれん代として株価に加算して企業価値を評価してもらえるため、経営状況が良ければ億単位の株式譲渡益を受け取れる可能性があるためです。
どちらの方法であっても、売却後には必ず譲渡益分の税金が発生します。
税金に関しては会社売却の経験がある税理士に相談した方が、数百万単位で手元の金額が変動するため、あらかじめ相談しておくと良いでしょう。
創業してすぐの会社、例えばベンチャー企業が会社売却を考えた場合、自信がある商品・サービスがあっても資金力や営業力によって会社の成長に限界を感じてしまうかもしれません。
そのような場合に第三者の企業傘下に入れば、資金力・営業力が共に向上し、更なる成長が期待できるでしょう。
このような考えを持つ経営者は増加傾向にあり、特に創業から間もないベンチャー企業が大手IT企業に買収されるケースは増えています。
会社売却の際に、銀行など金融機関からの借り入れや連帯保証人などはどうなるのか気になる方も多いかと思います。
あるアンケート調査によると、息子や親族へ事業承継を行わない理由の多くは、「借入を引き継がせたくない」というものでした。
息子や親族に借入の問題や資金繰りで苦しんでほしくないという想いが強いため、M&Aで第三者に会社売却するケースが増えているのです。
連帯保証債務からの解放は、経営者にとっても大きなメリットになると言えるでしょう。
経営を行っていると、様々なストレスに悩まされます。
いくら業績が良く、成長中の企業であっても経営面では何かしらのストレスを抱えていることが多いです。
連帯保証債務も経営者にはストレスに感じてしまうものです。
資金繰りの問題や業績を上げるための苦労は、経営者から退くことで解放されるでしょう。
会社売却をすると創業者の手元にはいくらか譲渡益が残ります。
この資金を元に、第二の新しい人生を切り開くこともできます。
将来のために投資を行うのも良し、趣味だったものを生業にするための資金に充てるのも良し、自分や家族のためにお金を使えるのは、これまで苦労して会社を発展させてきた経営者の特権とも言えるでしょう。
会社売却にはメリットだけではありません。
経営者にとってデメリットがあります。
ここでは主な3つの例からご説明させて頂きます。
会社売却後、経営者はそのまま引退するケースと会社に残って雇われ社長として働くケースがあります。
雇われ社長になるとこれまで自分の思う通りに経営を行えたものができなくなり、ストレスを感じてしまう人が多いです。
会社に残る・残らないは株式譲渡契約を締結させる際に、条件の1つとして取り入れられます。
買い手企業から「会社に残ってほしい」と言われるかもしれませんが、ここは買い手側と交渉すれば十分に回避することができます。
会社に残らない場合でも、通常は引継ぎ期間として、6ヶ月~1年程度は売却後も会社に残る場合が多いです。
雇われ社長になると自分が思う通りに経営できなくてストレスが溜まるだけでなく、従業員や周りの取締役からの見られ方を気にして、ストレスが溜まってしまうことも多いです。
特に従業員や周りの取締役からは、「経営者だけ創業者利益を得て引退するのに納得がいかない」と思われてしまうかもしれません。
経営者はこれまで様々な責任を果たし、苦労してきた経験がありますが、これは経営者にしか分からないところで従業員や周りの取締役は理解できない部分が多いようです。
会社売却は業績が好調で、前向きな理由から会社売却を行うケースが増えてきたと前述しましたが、それでも全ての企業が順調というわけではありません。
業績不振に陥り、借入債務の問題が残っている中で会社売却に踏み切るケースもあるのです。
借入債務の問題がある時に会社売却を行うと、借入額の方が譲渡益よりも高いと全ての借入を返済できず、残りは経営者が負担しなくてはならない場合もあります。
もし数百万、数千万単位で負債が残った場合、私的整理や特別清算などを行えば自己破産のリスクから回避できるでしょう。
ただし、全てがそのケースで解決するわけではありません。
場合によっては経営者自らが負債を抱えなくてはならない場合もあります。
もしも業績不振に陥っている中で会社売却を行いたいと考えているのであれば、必ず豊富な実績と経験を持つ専門家へ相談しましょう。
会社売却には会社の規模や特性、現在会社や業界を取り巻いている環境、業種はニッチかそれともメジャーなのか、株式市場の動向など、様々な要素を考慮した上で値段が決められています。
そのため、会社売却の価格相場を具体的に示すことはできないのです。
ただし、M&A業界においては会社を評価する方法があるため、事前にどれくらいの価格になりそうか算出することは可能です。
中小企業の場合、一般的に「時価純資産法」と呼ばれる方法で売却価格を出していきます。
時価純資産法の場合、現時点での財産価値を時価で評価し、負債を差し引いた時価純資産に、ブランドや技術といった営業権(のれん代)を加えて計算して会社の価値を調べます。
計算も単純で分かりやすいため、非常に多く活用されている評価方法になります。
より高額での会社売却を目指すなら、まずは利益を出し続けることが大切です。
どんなに財務状況が良くても、直近の売上や利益が減少していれば、自ずと企業の価値は下がります。
また、少しでも高額で売りたい場合は、不動産や有価証券などの清算は売却前に行わないようにしましょう。
会社売却の相談から成約までの流れと、その中での注意点についてお伝えします。
会社売却を具体的に進めるには、まずM&Aの専門家である仲介会社もしくはアドバイザリー会社などへ相談してみましょう。
何も知らない状態で会社売却を進めてしまうと、交渉がうまく行かずにせっかく買い手企業を見つけても希望する条件で買収してもらえない可能性もあります。
また、売却できたとしても、売却後にトラブルになる可能性もあるので注意が必要です。
専門会社と契約をしたら、自社の企業価値を診断し、どれくらいの価値があるのか、売却までの適切なアドバイスを受けながら売却を進めていきます。
売却する際の希望条件もこの時に明確に決めておきましょう。
専門会社は条件や価値などを調べたら、希望に合う買い手企業を複数社ピックアップしてくれるので、ここから買い手側とのマッチングに入ります。
希望に合う会社を見つけたら、何度か面談(M&Aではトップ面談と言います。)を行い、買い手側が納得すれば「意向表明書」が提示されます。
意向表明書とは、現段階でのスケジュールや売却の流れ、どのようなシナジー効果を期待しているか、将来的な経営展望などを買い手から売り手へ伝えるものです。
意向表明書をチェックし、特に問題がなければ基本合意を締結するために、「基本的合意契約書」を締結させます。
その後、改めて買い手側によるデューデリジェンスが実施され、問題がなければ最終譲渡契約を締結し、決済(M&Aではクロージングと言います。)という流れです。
おおよそ、相談してから売却完了までの期間は最短でも3ヶ月。
通常は、6ヶ月から1年程度を想定しておいた方がいいでしょう。
会社を売却する際に注意したいのは、非上場会社が株式譲渡を行う場合に「株式譲渡制限」を設けているかどうか、という点です。
株式譲渡制限とは、株式を譲渡する場合に掛けられている制限で、会社の不利益になる可能性が高い第三者へ株式を渡らせないように、そして株式の所有者をハッキリさせるために設けられているものです。
会社売却の際に株式譲渡制限が設けられていると、会社売却の際に株式譲渡の手続きを行っても効力が出ないため注意しましょう。
株式譲渡制限を解除して譲渡できるようにするには、会社側から承認される必要があります。
制限を定めているのは、取締役会が設置されている会社なら取締役会、取締役会がない会社や特例有限会社であれば株主総会で承認されなくてはなりません。
これらの情報は定款もしくは、会社の法人登記簿謄本で確認できますので、売却を決断された際には、一度確認をしておきましょう。
会社売却時に発生する税金は、譲渡益を受け取るのが個人か法人かによって変わってきます。
株式を全て経営者自らが所有していた場合、譲渡益が支払われるのは経営者個人に対してのみです。
ここで発生する税金は、譲渡益に対する所得税(15%)・住民税(5%)であり、計20%が差し引かれることになります。
一方、株主が法人だった場合は譲渡益に対して法人税がかかってきます。
税率は会社によって異なりますが、おおよそ30%程度です。
そのため、個人の方が受け取れる利益は高くなります。
会社売却で失敗したいためのポイントは大きく4つあります。
会社売却を失敗しないためには、まず事前にしっかりと準備を行うことが大切です。
例えば、買い手企業からデューデリジェンスを受けて価格が正式に決まりますが、あまり管理体制が整っていない企業だとその杜撰さからあまり良いイメージを抱かれず、価格が下がってしまう可能性も考えられます。
逆に財務や人事面で管理がしっかりできていることが分かると、買い手側から高く評価され、価格アップにつながるかもしれません。
そのため、事前準備として財務・人事面は特に管理体制を整えておいた方が良いでしょう。
近年様々な業界でM&Aが盛んに行われていることから、仲介会社やアドバイザリー会社の数も増えています。
会社売却を失敗させないためには、数ある仲介会社・アドバイザリー会社から自社に合ったところへ相談する必要があります。
アドバイザーを選定する際には、
・取り扱っている案件の規模が自社の状況と似ているか
・対応エリアに属しているか、
・担当者と話してみて、相性が良いか
・M&A以外にも様々な選択肢を提供してくれるか
この4点は必ずチェックしておきましょう。
ほとんどのM&A案件で、交渉時に条件の違いが見つかり、そのまま交渉が長引きます。
明確な売却条件を設定しておかないと、買い手側の良いように取られてしまうので、あらかじめ売却条件を出しておき譲れない条件と場合によっては譲れる条件を確認しておきましょう。
会社売却が思うように進まないと、焦ってしまうこともあるでしょう。
しかし、いくら売却できないからと言って条件を変更してしまえば経営者はもちろん、会社自体にも不利益が被ってしまう可能性もあります。
会社売却は冷静に、焦らず進めていくことが大切です。
時には、明確に断るということも大切です。
決断せずにズルズルと時間が経過することは、売手側/買手側の双方にとって良いことではありません。
会社売却をするメリット・デメリットは下記の通りです。
社内の状況や経営者の立場などによって、メリット・デメリットのどれを優先すべきかが異なってきます。
メリット・デメリットを活用するためにもまずは現在の状況を全て把握し、自社の場合を考えて会社売却するかどうかを検討してみてください。
もしもどうすべきか迷っていたら、会社売却を手掛ける専門会社や顧問税理士などのアドバイザーに相談するのも1つの手でしょう。
どこに相談すれば良いのか分からないという方は、下記からあなたに適したアドバイザーを診断してみてください。
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