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財務戦略

銀行が考える運転資金とは?

2020/12/27



事業を継続させるには絶えずお金が必要です。

そこで今回は、事業にとって不可欠な運転資金について銀行がどのように考えているのか説明していきます。

銀行が考える運転資金とは?



事業にとっての運転資金は、人間で言えば「血液」です。

人間に血液が必要なように、企業においても運転資金がなければ倒産してしまします。


銀行が考える運転資金とは、

事業に必要なお金が「事業資金」

工場や機械など、人間で言えば身体にあたる設備に使う事業資金が「設備資金」

設備を動かす事業資金が「運転資金」

です。




では融資にはどのようなものがあるのでしょうか?

>>銀行との上手な付き合い方とは


融資の種類とは



銀行の融資には大きく「信用保証協会付き融資」と「プロパー融資」に分けることができます。


また「手形貸付」「証書貸付」「当座貸越」などは融資手法のことです。


本質的な融資の種類とは資金使途の違い、つまり「設備資金」「運転資金」あるいは「つなぎ資金」など借りたお金で何をするのか?という目的(使途)の違い、これが融資の種類です。


それぞれ詳しく説明してきます。

1)設備資金



設備資金は設備導入に必要な事業資金のことです。


工場や機械など形ある設備(有形固定資産)だけでなく、ソフトウエアなど目に見えない設備(無形固定資産)などへの融資が設備資金(融資)です。


設備の内容や規模、また建築期間中から本格稼働まで時間がかかることも多く、一般的に設備資金の返済期間は10年から、長いものでは20年、30年になることもあります。


2)運転資金



一言に運転資金といっても、様々な考え方があります。それだけ企業にとって重要なので、多様な資金使途があります。


こうした運転資金の中でも代表的なのが「経常運転資金」です。

まずは経常運転資金以外の運転資金を簡単に説明してきます。


経常資金以外の運転資金には、

季節資金:季節要因がある仕入など(春物衣料の仕入、新茶、酒用米など)

決算資金:企業が決算で必要とする運転資金(納税資金など)

賞与資金:人件費は運転資金で、とくに賞与資金は運転資金融資で良く利用される

などがあります。

経常運転資金とは?



経常運転資金は運転資金の代表格です。


銀行の事業資金融資でもやはり代表格で、言葉の意味や算出法など知らないと思わぬところでつまずく可能性もあります。


では、経常運転資金について詳しく説明していきます。


運転資金の基準~経常運転資金の定義



季節資金のような季節限定ではなく、日常的に事業を継続するために必要な運転資金が経常運転資金です。


経常という文字のとおり、経常的に必要となる運転資金です。経常を言い換えればいつまでもずっと必要ということなので、返済期間は1年以上の長期になるのが一般的です。


本来、運転資金は売上が回収できたら返済し、また必要になったら必要な期間だけ借りて、また返済して、継続して借りては返し手を繰り返されていくものですが、これが実務では融資⇒回収の繰り返しとなり顧客、銀行双方で事務手続き上においても負担になります。


そこで「経常的に必要なお金なら、融資の返済期限が来ても返済しないで、そのまま期間だけリセットすることにしよう」という論法で、書換(又は継続)するのが一般的です。


参考:書換、継続とは? 返済期限が到来したら、もう一度同程度の期間で融資しなおすこと。実務的には、手形貸付なら新しい手形に署名捺印し、古い手形を返却する。証書貸付も同じ。


経常運転資金の計算方法



運転資金の代表格である経常運転資金は、銀行の営業マンも積極的に売り込んできます。なぜなら経常的に必要な運転資金なので、融資するチャンスがあると考えるからです。


ところが経常運転資金の意味や、その計算方法、根拠を知らない経営者の人も以外と多く、知らないということは「自社の運転資金をコントロールできない」「会社の実態が把握できていない」経営者だと、銀行員に見られかねません。


運転資金の循環活動


<運転資金の循環活動>


手もとにある運転資金で、

原材料を仕入れて商品に加工し、あるいは完成した商品を仕入れて

商品を販売し、その対価として代金を回収して

仕入資金は買掛金や支払手形で後払い

売上代金も売掛金や受取手形で後払い

仕入資金の支払期限は来月だが、売上回収は2ヶ月後

来月の支払にまわせるお金がない(資金ショート)



だから銀行から融資を受けて、支払う(経常運転資金融資)

翌月に売上が回収できたら、これを次の仕入資金にする(再投入)




事業では上記のように運転資金というお金がぐるぐる回り(循環)つづけます。

これを「運転資金の循環活動」といいます。




上記「運転資金の循環活動」のなかで来月の支払にまわせるお金がない状態を「資金ショート」と言います。


代金が回収できれば支払可能なのですが、とにかく今お金はない!

これが、運転資金が足りなくなる理由です。


「支払いが先になり、売上回収が間に合わないから、支払うお金がない!」

当然といえば当然ですが、この理屈がわからず、資金ショートしてから、あわてて銀行に融資申込みする経営者もいるのが現状です。


なので、銀行から融資を受けて仕入代金を支払うのが経常運転資金(融資)となります。


では、次に計算式を用いて経常運転資金の算出について説明します。

ちなみに、事業資金の循環活動のことを「回転」とも呼びます。「回転期間」「回転率」という言葉を聞いた人もいると思います。これは財務分析で使われる用語で、「期間」とは年(1年)、「率」は月(1ヶ月)を表しています。

経常運転資金の計算式


経常運転資金の計算式

①売上債権(売上債権=受取手形+売掛金)+②棚卸資産-③買入債務(買入債務=支払手形+買掛金)=経常運転資金



「経常運転資金は①売上債権と②棚卸資産の合計から③買入債務を引いた不足分」です。


買入債務、すなわち支払うお金が不足するから、経常運転資金融資が必要になります。


(参考 用語解説)———————————–

受取手形=平均月商×受取手形回収率×受取手形期間

売掛金=平均月商×売掛期間

棚卸資産=平均月商×売上原価率×在庫期間

*棚卸資産とは在庫のことです    

支払手形=平均月商×売上原価率×支払手形発行率×支払手形期間

買掛金=平均月商×売上原価率×買掛期間 

平均月商:通常は前期決算の平均月商(年商÷12

ただし決算後半年以上なら、直近36ヶ月の平均月商とする


具体的な算出事例



では実際に数値を用いて経常運転資金を計算してみましょう。


<モデルケース>



-銀行側から見た新規営業先を開拓するための着眼点として-



小売業のA社の、現在の状況は下記のとおり、ここからA社の経常運転資金を算出

①売上債権:受取手形1千万円 売掛金1千万円

②棚卸資産:商品在庫1千万円

③買入債務:支払手形3千万円 買掛金2千万円



<計算>



①売上債権(受取手形と売掛金)2千万円+②棚卸資産(商品在庫)1千万円ー

③買入債務(支払手形と買掛金)5千万円⇒

⇒①売上債権2千万円+②棚卸資産1千万円ー買入債務5千万円=▲2千万円


▲とは不足の意味、ここで2千万円不足、つまり2千万円の経常運転資金(融資)が必要となる。




銀行の担当者が新規開拓をしたい場合は、このように今後の支払いが大きくなるため、その補填として融資の検討を提案してくるケースがあります。


逆に自社が銀行の担当者へ提案する際は

①売上債権(受取手形と売掛金)4千万円+②棚卸資産(商品在庫)1千万円ー

③買入債務(支払手形と買掛金)3千万円

⇒①売上債権4千万円+②棚卸資産1千万円ー③買入債務3千万円=2千万円



ここで2千万円を日々の資金繰りで立て替えているので、つまり2千万円の経常運転資金(融資)を融資してほしいと話をすることができます。

>>黒字倒産をする理由とは?


運転資金を借りるポイントとは



運転資金を借りるときのポイントをいくつかあげます。

「資金使途」~お金の使い道は妥当か?



銀行は公共性を重んじます。融資したお金が、いわゆる公序良俗に反する使われかたをされた場合は、即刻返済を求められることがあります。


また、当初融資申込みのときに伝えたつかいみちと、実際のつかいみちが違う場合も問題になります。程度にもよりますが、当初の資金使途以外に使うのは「流用」といってネガティブに見られますので注意が必要です。


「申込み金額」~自分で決める?それとも決められる?



経常運転資金を正確無比に算出でき、財務分析用語もすらすら出てくるなら別ですが、通常申込み金額は銀行が決めます。


大まかなヒアリングが済むと、決算書や試算表を分析して、銀行が融資可能額を決めるのが良くあるパターンです。


銀行と顧客のパワーバランス次第ですが、よほど有力な企業でもない限り

 「これくらい貸して欲しいから」と言われて融資するのではなく

 「貸して欲しい」と言われたからいくらまでなら貸すことができるか銀行が決める

実態はこういったケースが多いです。


「決算書」~銀行はここを見る



決算書は、銀行では隅から隅まで見ます。

ただし、融資審査の観点から一般論としていくつかポイントをあげると

ⅰ)減価償却

減価償却費が法律で定められた、正しい処理をされているか?銀行は決算書を見ると、償却不足はないか?(というより、償却不足があるはず、という視点で)決算書の償却明細を事細かにチェックします。


ⅱ)「仮」という科目

「仮受金」「仮払金」といった科目はきびしくチェックされます。「仮」とは一時的という意味で、いつかは帰結すべき科目に変わります。


たとえば仮受金1千万円が何年にもわたり決算書に計上され、最終的には同業者からの借入金となり(というか、仮払金に計上して誤魔化していたのがバレて)、銀行の審査や格付作業のときに、マイナス評価となります。


>>銀行が決算書を見るポイントとは?融資を受けるためのヒント


「試算表」~銀行はここを見る



原則的には決算書とポイントは同じですが、触れておきたいのは「期間損益」です。


試算表は年度の途中、リアルタイムの業況が記載されています。年度の途中なので借入金利息や期末の配当や役員報酬など未反映です。その状態ですでに赤字(期間損益で赤字)になっていると

「期中ですでに赤字なら、決算期には大赤字になる。今のうちに取引を検討すべき」

このように銀行の見方が厳しくなることもあります。


「資金繰り表」~作り方と銀行の見方



資金繰りをコントロールして、上手く運転資金を操作して回す(循環させる)ために資金繰り表があります。


内容は決算書と同じ、スタートのお金(前期繰越金、資金繰り表なら前月繰り越し)から経費(運転資金)を引いて、残ったお金が手元現預金として積み上がっていけば、事業は黒字と考えられます。


銀行では融資審査や、リスケ対応するとき銀行員が資金繰り表を作成して、申込をした会社の資金繰りを掴もうとします。


「保全」と「回収」~銀行の「返せないとき」への防御策



保全とは「保護して安全であるようにすること」


回収とは「融資を返してもらうこと」この場合は毎月の定例返済ではなく、返せなくなった人に「返済させる」「融資金を埋めるために手を打つ」ことを指します。


保全とは?



銀行融資で保全といえば、融資したお金(銀行からみると債権)が安全であるようにすることです。(これを債権保全と表現)


債権保全の方法は、不動産などの「担保」が代表的です。ただし不動産は短期間で資金化できないこともあり、最近は生命保険や年金保険など換金可能な資産を担保にするケースが増えています。


(厳密にいうと保険は担保でなく「質権設定」という方法をとります。意味は担保とほぼ同じです。)


回収とは?



回収というより「借金を取立てる」と表現した方がイメージしやすいと思いますが、回収とは融資したお金を取立てることです。


定例的な返済は、約束通りに、なにもいわなくても返済してくれるから「返済」

返せなくなったり、返そうとしなかったりすると、手を打って返させるので「回収」


回収の手段は、電話や文書による「督促」、保証人への返済依頼、担保の差し押さえや売却(競売(けいばい))など、金貸しが取立てるやり方です。


もちろん銀行としては世間体もあるので、脅迫まがいの強引な回収はしません。


>>リスケジュールで経営改善はできますか?


まとめ



意味や算出法など知っていないと、思わぬところでつまずく可能性もあります。


経常運転資金についての知識がないと、経営者としての資質まで疑われかねません。


「金のことは信頼できる部下に任せている」と堂々と話す経営者もいますが、そういった人が信頼していた部下に裏切られるのも良くある話しです。


部下に任せていると発言した時点で「自分にはできないから、部下任せにしている」と能力不足を宣言しているようなものです。


だからこそ、運転資金発生のメカニズムを押さえておくとメリットは大です。


なにも理論や計算式をすべて暗記する必要はありません。大事なのは、運転資金の発生するメカニズムなど要諦を押さえておけば良いのです。


そうすれば、銀行員のあなたを見る目は変わるはずです。


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