企業事例
2018/07/13
まだまだできることは残されています。
※守秘義務の問題もありますので社名等はアルファベット記載とさせて頂きます。
きっかけは弊社への相談のメールでした。
飲食業をしているO社長。
新規出店が思うようにいかずに、会社の今後について不安を感じてのご相談でした。
当日は奥様(会社の取締役として事業に携わっている)とお二人でご面談に来られました。
弊社でのご面談事例としてO社長とどの様な面談をしたのかご紹介させて頂きます。
目次
業種 | 飲食業3店舗経営 |
社長の年齢 | 46歳 |
年商 | 1億円 営業黒字 |
純資産 | 約600万 |
金融機関借入 | 3,000万円程度 |
従業員 | 18名 |
弊社へご相談頂いた際の会社の状況ですが、カフェを2店舗、
県外に1店舗を構えて事業を行っていました。
会社を設立して5年目。
2店舗目を出店するまでは、会社としても順調に利益を上げてきていたが、
設立4年目に県外に出店したことがきっかけで業績が大きく傾いてしましました。
立地や店舗内装などにもこだわり出店経費も膨らんでしまい、
出店費用の融資支払いなどの負担が増加し、
既存の2店舗の利益を食いつぶしてしまっている状況でした。
新規出店当初は1年程で利益を出して、という計画でしたが、
1年経過しても当初計画を下回る状況が継続していたため、
徐々に資金繰りも厳しくなり、今回の相談に至りました。
弊社では、面談時間をより有意義にして頂くために、上記の内容については、
事前にメールや電話で確認して面談をさせて頂くようにしています。
現状を把握した上で、会社に提供できる選択肢を想定し、
市場の状況、M&Aで会社や事業の売却を選択した場合の買手候補の有無など
事前準備をして面談にご対応させて頂いております。
今回のケースでは、
● 既存2店舗と県外の1店舗が距離的に離れていた点
● 1年前に県外に新規出店が出来た点
を踏まえて、事前に
● 既存2店舗は黒字であり、安定した収益を生んでいる
● 遠方への出店で人材面、管理面で苦労している
● 仮に会社や事業の売却の場合は、2店舗と新規出店店舗は切り離して考える
● 既存2店舗と新規1店舗を分けても立地次第でそれぞれの売却は可能
と想定していました。
当日はO社長と奥様のお二人でお越しになりました。
まずは、O社長のこれまでの経歴や事業展開など、現在に至るまでのお話をさせて頂きました。
いわゆるアイスブレークの時間を設け、具体的なお話がスタート。
私の方から
「先日、お電話でもお話して頂きましたが、現在の会社のご状況を再度お話頂けますか?」
と切り出しました。
O社長から
「お電話でもお話しましたが、新規出店した店舗の業績が思わしくなくて
毎月の赤字を既存2店舗の利益で賄っている状況です。」
「それでも足りない分は個人的に補てんしているんですが、それも限界が近くて」
「つい先日ですが、新規1店舗を閉鎖しようと思い、
テナントオーナーに解約の通知をしたところです。」
経営者の判断としては、既存の赤字店舗の閉鎖をすぐに判断する点など、
決断はしっかりとできる経営者なんだなという印象を受けました。
続けて、
「撤退に新たな費用が発生しないように居抜きでの撤退を不動産会社と次回打合せ予定です」
とのこと。
私の方からは
「確かに遠方となるとサービスや料理の質、人材の管理など労力を費やして
既存店舗へも影響が出てしまうので、よい判断をしましたね」
とお伝えました。
おおよそ、この間に事業の内容、従業員の人数などをヒアリングできることは最低限行い、
面談スタートから40分程が経過。
ある程度のヒアリングが終わった段階で、
ご準備して頂いていた決算書や店舗別の収支を確認。
こういった面談の際は、財務諸表の細かいことを聞いても仕方がないので、
ある程度、要点を絞って数値に関して質問をします。
・過去からの売上の推移
・借入の状況
・租税公課、社会保険の支払い状況
・月での収支(売上がどれだけあって、支出がどの程度あるか?)
※質問としては、会社が苦しい場合は、どの程度毎月足りていませんか?などと質問します。
・損益計算書内の経費で事業に関係のない経費の利用
・保険加入状況
など
この辺りについて確認程度でお聞きした段階で約1時間が経過。
この間、奥様はあまり口を挟まずにメモを取っていました。
最初の1時間で一通り現在の経営内容、状況を把握し、
O社長とのコミュニケーションも円滑に取れるようになった段階で、
私 : 「O社長。社長としては、どうしたいですか?」
と質問し、
O社長 : 「従業員はとにかく守りたい」
私 : 「新規出店の店舗の従業員も同様にですか?」
少し迷ったO社長でしたが、
O社長 : 「そこは仕方がないと思っています」
との回答でした。
私からは
「社長自身はどうですか?」
O社長は
「うーん・・・」
少しの沈黙の後、今まで発言のなかった奥様が
「もともとこの仕事がしたくて以前の仕事をやめたんでしょ?」
「私は続けてほしいと思っているけど」
するとO社長は
「続けたいと思っても、どうにもならないこともあるよね。」
「資金的に支払ができなくなれば・・・」
この会話を確認した段階で弊社としては、
既存2店舗の継続で現体制を維持する方針でアドバイスすることにしました。
というのも、
新規出店に対する投資で借入金が膨らみ、現在の既存2店舗の利益から算出される
企業価値が借入総額を下回る可能性が高いと判断したからです。
本人たちはまだやりたい気持ちがある。
(気力/モチベーションがあるかどうかがポイント)
しかし、企業価値<借入金の状況であれば、仮に会社や事業の売却ができたとしても
売却した後に借金が社長個人に残ってしまう懸念がある。
また、ヒアリングをした限り、まだまだ会社として改善できる余地がある。
現在は遠方の店舗管理と資金繰りの問題で既存2店舗の売上まで落ちている状況のため、
今後は既存2店舗へ集中することで、業績の回復が見込めると考えました。
そこで弊社からO社長へのご提案内容
この2点をご提案させて頂きました。
以下の内容については、O社長、奥様も既存体制の継続を同意のもとお話をさせて頂きました。
これが1番重要です。
期限をしっかりと設けること。
仮にもう一度頑張ろうとなっても業績が回復しないこともあります。
その際には再建の可能性を見切るという判断も重要になります。
限界ギリギリまで継続した結果、最終的には会社や事業の売却もできなくなりましたでは、
何のための継続する判断だったのかということになります。
であれば、あの時の売却しておけばと良かったとなります。
ですので、弊社からは期限を設ける上で下記のアドバイスをさせて頂きました。
①
資金繰り表を作成し、現状の収支で6か月後にマイナスになると想定される場合は
すぐに会社や事業の売却を検討してください。
理由はどんな企業でも会社や事業の売却には6か月の時間がかかります。
②
社長個人での借入はNG
会社の資金繰りが厳しくなるとどうしても経営者自らが
カードキャッシングなどで借入を行う場合があります。
しかし、現在の状況からそこまでするのであれば、会社や事業を売却した方がメリットが大きい為、
そこまでしての継続はしないように伝えました。
③
家計への影響が出ない程度で頑張ってください。
この点は奥様にお伝えした点ですが、家計に影響が及ばない程度で、
しっかりと管理してくださいとお伝えしました。
経営者の奥様が会社の経理などを見ているもしくは一緒に働いている場合によくあることなのですが、
会社の状況が厳しくなると夫婦喧嘩もよく起こるものです。
とにかく、家計と仕事を切り離して、生活ができる環境は維持してくださいとお伝えしました。
既存2店舗のみであれば、売却は可能な状況でしたので、
そこまでのリスクを個人として背負うことは避けた方がよいという理由でお伝えしました。
④
何かあれば早めの相談を
とにかく、状況が変化した場合は早めに相談してくださいと伝えています。
事業や会社を売却する際は、どのタイミングで相談したかというのが、
売却できるかできないかの大きな要因になります。
早いに越したことはありません。
これは飲食店ならではの収益改善の方法かもしれません。
飲食店ではよくFLコストというものがあります。
売上に対してF(フード【食材費】)とL(レイバー【人件費】)を足した費用の割合が
〇〇%以内に抑えるという意味で用いられます。
一般的には売上の60%以内というのが1つの目安です。
また、家賃も加えれば、70%以内というのが1つの目安です。
食材費/人件費/家賃という3つの項目の中で一番削減できる経費
つまり、一番利益改善に貢献する経費項目は人件費です。
特に正社員の人件費です。
決してブラック企業になりましょうと言っているのでありません。
今回の場合は、とにかく正社員が働いてパート/アルバイトの人件費を削減しましょう
という提案ではありません。
O社長が新規出店や資金繰りに悩んでいる時間は、とにかく現場に出て働きましょうということです。
正社員の長時間労働は残業代の発生や労働環境の悪化を招きますので、お勧めはできません。
しかし、経営者については、話は別です。
会社をどうにかするためにとにかく働く。
特に飲食店などの業態では、その効果は絶大です。
私の方からも
「O社長の頑張りが一番の利益改善に繋がるんですよ」
とお伝えし、奥様もうなずいておりました。
面談も終盤にかかりO社長と奥様も
「まだやれることがある」という想いになって頂き、最後の方は
「こういったことができませんか?」
「こういった方法で売上が上がる方法がありますよね」
と前向きな議論ができるまでになりました。
とにもかくにも、社長のやる気と覚悟で会社の業績は大きく変わります。
どうにもならないこともありますが、大半のことはどうにかなることです。
1人で悩んで、1人の頭の中で
・ 選択肢がない
・ もう会社の継続は厳しい
と思い込んでいる経営者は世の中に非常に多いと思います。
1人で悩まず、まずは相談してみることをお勧めします。
きっと1人では考えも及ばなかったアイデアや方法が出てくるはずです。
今回はそんなO社長の面談事例をお伝えさせて頂きました。
面談も終わり、最後に私の方から
「何かあったら連絡してください」
とお伝えすると
O社長と奥様から
「何かはない方がいいですけどね」
と言われて苦笑いしてしまいました。
「では、良いご報告をお待ちしてますね」
と言ってお別れしました。
全ての面談がこういった内容であるかと言えばそうではありません。
今回は
● 既存2店舗が利益を出している状況であった点
● 借入総額が課題ではない点
● 業種業態が社長の頑張りで改善できる点
などの条件が当てはまったので、この様なご面談になりました。
多くのご相談を受ける中で、選択肢が限られた中で
決断をしていかなければならない場合もあります。
また、会社や事業を売却するように面談を進めることも十分可能でした。
仮に売却の選択をされれば、債務が一部残る可能性はありましたが、
売却自体可能でしたし、恐らく残った負債に関しても社長が破産などをせずに
処理する可能性も十分にあったと考えます。
しかし、まずは社長がどうしたいか?
ということに向き合うことが弊社の方針です。
可能な限り、ご相談頂いた経営者に寄り添ってアドバイスをさせて頂くことを
念頭に置いて日々業務に携わっております。
弊社ではご面談をさせて頂く上で下記の3つの方針を掲げています。
1.面談に来た時よりも少しでも前向きになって帰って頂く
2.考えが整理できてやるべきことが明確になって頂く
3.1人悩まずに何かあれば相談してもらえる環境を提供する
少しでも多くのお客様の答えが「ミツカル」ようにご面談やご相談事に関しては
誠心誠意ご対応させて頂いております。
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