M&A
2019/04/22
「シンプルな株式譲渡」と「身軽になれる事業譲渡」による売却の方法
会社売却の方法は大きく分けて2つです。
1つは「株式」を売却して会社の経営権を譲渡する「株式譲渡」。
もう1つは「事業」のみを売却して法人格は残す「事業譲渡」です。
この2つの方法にはそれぞれメリット・デメリットがあり、注意するべきポイントも異なってきます。
今回は「株式譲渡」と「事業譲渡」の違いと売却時の手続きについてお伝えします。
目次
売却を決断した会社は経営状態が悪い、事業に失敗して資金繰りに困っているなどのマイナスイメージもつきものですが、今の時代はそういった事情ばかりではありません。
後継者がいない、今後の時代を見越して新たに別の事業を始めるための資金の獲得など、企業の存続のための選択肢の1つとして会社や事業の売却を活用することも増えてきました。
中小企業において会社を売却する代表的な方法について、手続き面も含めご紹介していきます。
株式譲渡の方法は多くの中小企業の売却で利用される手法の1つです。
経営者が保有している株式を、会社を買いたい別の企業などに譲渡するとともに、企業の経営権も譲り渡すスタイルです。
株式譲渡を決断する理由として、中小企業や町工場などの零細企業などで、高い技術や優れた事業、育てていきたい従業員などがいるのに後継者がいないケースや、自分たちの今ある力や資金力では現在の経済環境やグローバルな時代に太刀打ちできないといった場合に行われることが多いです。
手続きがシンプルであるのがメリットで、買い手が見つかれば、売り手と買い手が同意をすることですぐにでも行うことができます。
目安として最短で3ヵ月から6カ月程度で譲渡は完了します。
基本的に株式譲渡の場合、法人の経営権をそのまま譲渡するので、会社で借入を行い、代表者が連帯保証していた負債も買手企業は引き継いでもらえます。
実際に株式譲渡した代金を受け取った売手側の経営者は、老後の勇退資金に充てたり、別に新たな事業を行う開業資金などに充てることができます。
大手企業でよく行われている株式公開(IPO)よりも迅速に現金が手に入るので緊急の資金ニーズがある場合にも適している方法です。
つまり、資金繰りに困った状況での解決策の1つとして利用することも可能です。
従業員や取引先にとっては経営者が変わるといった不安があるにせよ、対外的には株主に変更があっただけで、すべてが引き継がれます。
もちろん、法人をそのまま引き継ぐので、買手企業側は負債や見えない債務(簿外債務)も一緒に引き継ぐので、デューデリジェンスはしっかりと行いましょう。
事業譲渡も中小企業の売却における代表的な売却方法の1つです。
株式譲渡のように経営権をすべて手渡して経営から退くのとは異なり、会社が運営している複数の事業の一部などを売却できるのが事業譲渡の最大のメリットです。
事業売却と言われる場合には、その事業に関わるすべての事業を売却します。
事業譲渡の対象には事業を一体化して譲渡するのが基本で、事業のノウハウだけでなく、商品やサービス、人材や工場、ブランドやのれんなどに至るまで含まれます。
不採算事業を譲渡して身軽になる、評価が高い事業を譲渡して資金を獲得して経営を建て直すなど、目的もさまざまに活用ができます。
買い手にとっては一から事業を開発して行うより、低コストでリスクを抑えながら、ノウハウや商品、ブランド力などを手に入れられるメリットがあります。
交渉や契約条件の設定により、負債は引き継がない、受け継ぐ事業用資産や従業員を選べるなどもでき、常行に応じて様々な内容での引き継ぎが可能です。
売却したい企業にとっては不採算事業であっても、他の企業にとってはニーズがあり、買い手がうまく見つかればお互いにWin-Winの関係が得られます。
ただし、すべての事業の譲渡や重要な事業の譲渡を行うには株主総会の特別決議が必要です。
譲り受ける会社の側では事業全部の譲渡を受ける際には株主総会の特別決議を得なくてはなりません。
株主の招集が必要なため、大企業では時間や手間、コストがかかるのがネックであり、反対も予想されます。
一方、中小企業であれば、株主が経営陣のみや親族など同族会社であることも多いため、株主も招集しやすく、同意も得られやすいと言えます。
さらに一定の大きな事業譲渡になる場合は、公正取引委員会への届け出も必要です。
事業の譲受を行う企業の国内売上高の合計額が200億円を超える場合や、国内売上高が30億円を超える企業の事業すべてを譲り受ける場合などが該当し、届出書の受理日から30日を経過するまで事業譲渡を行うことはできません。
中小企業の場合は、こういった条件に該当することが少ないですが、許認可の引継ぎなど行政の届出や許可が必要な場合もありますので下調べは必要です。
このように株式譲渡と事業譲渡の手続きには簡便さやスピード、手間などに違いがみられます。
株式譲渡と事業譲渡には目的や譲渡後の態様、具体的な方法にも違いがあるものの、大まかな流れでは共通するポイントもあります。
たとえば、最初に会社売却の決定をするにあたって売り手となる企業は売却方針を決めなくてはなりません。
今後の事業計画や従業員の処遇をどうするかなどをしっかり検討して、企業の生き残り策や従業員や取引先、顧客への影響なども考えながら、企業の未来を考えることが必要です。
中小企業や零細企業などであれば、経営者個人とその家族の今後の生活やどのように仕事をしていくのか、勇退する場合には、老後の資金確保や税金の対策なども考える必要があります。
多方面から検討を巡らせ、しっかりと方針や将来計画などを立てたうえで、会社の売却方法として、株式譲渡か事業譲渡のどちらを採用するのか、またそれに伴い売却代金の目標金額を決めていく必要もあるのです。
基本的な方針が決まった後は、株式の買い手や事業の買い手を見つけなくてはなりません。
単にお金を出してくれるところではなく、従業員を大切にしてくれるか、会社を預けられる企業や人物であるのか、これまで築いてきたブランドや技術、優秀な人材を預けるに足る企業や人物であるかを見極めることが重要です。
この段階でも経営者個人や中小企業だけで探すのは難しいので、一般的にはM&Aの仲介会社といった専門業者を選んで売却相手探しや契約条件の交渉や金額交渉などを行ってもらいます。
専門業者の選び方も重要なポイントです。
満足のいく相手をスムーズに見つけてもらえるよう、実績が多く、料金面でも納得できる業者を探すようにするといいでしょう。
どのアドバイザー会社に依頼するかで、譲渡代金や売却条件が違い生まれるのをご存じですか?
この記事を読めばその理由がわかります。
専門業者を通じて売却相手の候補が見つかったら、報告書類や資料などを踏まえて経営陣などで検討を重ねます。
そのうえで、気に入った相手が見つかったら、企業の経営者どうしや経営幹部などを含めて面談を重ね、売却相手として適切かを判断していきます。
お互いに条件が合い、売却相手としてふさわしいと感じれば、売却価格をはじめ各種条件についてより具体的に詰めていくという流れです。
売却および売却条件の合意が得られたら、基本合意書を取り交わします。
買い手側の弁護士や公認会計士などが、売り手企業の企業価値についてさまざまな角度から監査を行った結果を踏まえ、諸条件の調整を行います。
そのうえで、株式譲渡の場合には株式譲渡契約書、事業譲渡の場合には事業譲渡契約書を用いて契約の締結を行い、実際に譲渡の実行へと進みます。
この点、事業譲渡の場合は契約書で合意した事業資産などが譲受企業へ移転することとなるため、預金や土地や建物などの不動産の名義変更手続きなども必要になってきます。
ここまで、会社売却をする際の方法と実際に会社や事業の売却を決断してからの流れについてお伝えさせて頂きました。
実際に会社や事業の売却を決断して譲渡が終了するまでは早くて3ヵ月、通常で6カ月~8カ月程度の時間がかかります。
その中で、経営者として様々な苦労や決断を強いられる場面があります。
そういった際にブレずに決断するためには、経営者としての「覚悟」が必要です。
そもそも
「なぜ売却を決断したのか」
「売却をして何を守りたかったのか」
「売却したあとに何をしたいのか」
「優先する条件は何なのか」
最低でも以上のことを売却する前に明確にすることがM&A成功の秘訣と言えるでしょう。
経営者にとって会社や事業の売却はとても大きな決断ですので迷って当たり前です。
その時に「立ち返る場所」、「当初の想い」をしっかり持つことが重要なのです。
ご相談は無料です。お気軽にお声かけください。
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