M&A
2019/06/09
会社の売却を検討するにあたり知っておくべきポイントがいくつかあります。
それは譲渡方法とそれぞれの譲渡方法の注意点です。
この2つのポイントを抑えることが会社や事業の売却をする上では非常に重要です。
まずは知ること。
知って経営者自身で判断すること。
会社や事業の売却は経営者にとって大きな決断です。
まずはしっかりとM&Aを理解し、適切な判断を下しましょう。
目次
せっかく起業した会社で、従業員もいて経営を続けてきたものの、後継者の不在、経営の悪化など何らかの理由から売却をしなければならないという事態は必ずやってきます。
その際に納得のいく譲渡を目指すのであれば、第三者への売却を含めた会社の引継ぎをする際の注意点は必ず押さえておく必要があります。
会社を売るとはどういうことなのか?
一口に会社を売却するといっても、その方法にはいくつかあり、どういう理由で売却することになったかによって、社会的な受け止め方がポジティブにもなればネガティブにもなります。
また、会社の売却をすることで事業ができなくなるという訳ではなく、事業継続をすることも条件によって可能です。
したがって、事業継続を前提にした売却では、できる限り、従業員や取引先、金融機関などにネガティブなイメージを作らないように手続きをすることが大事です。
こうした会社を売るということへの理解がしっかりできているか否かが、最も注意すべきポイントと言っても過言ではありません。
会社を売却することに至る理由として最も多いのは後継者の問題です。
単に後継者がいないというよりは、会社の将来の展望への不安や後継者に任せていいのかという不安があることがあります。
そこで第三者への譲渡ということで昨今増えているのがM&Aです。
一方、いまだにM&Aに対する経営者の印象が、敵対的買収といったケースが大々的に取り上げられ、ネガティブなイメージが先行している感があります。
M&Aによって会社が引継がれても、これまでよりも良くなるという保証はありません。
いわばリスクがあることを承知の上で会社や事業の売却を行う必要があります。
その上で、押さえておかなければならない注意点について譲渡方法別にお伝えします。
株式譲渡は会社を売却する際に最も簡単な方法で、自社の株式を買手企業へ譲渡することで、会社の経営権を移行します。
中小企業に多い売却の方法で、経営者が筆頭株主という場合によくとられる選択肢です。
とはいえ、株式譲渡による会社の売却には負債もまとめて譲渡しますので、その点は注意が必要です。そのため、負債を抱えている会社が売却したいとなれば、まずは負債の問題を解決する、あるいは解決の糸口を見出してから、買い手を探す必要があるところが最大の注意点です。
株式譲渡で最も注意が必要なのが負債の引継ぎです。
株式譲渡は会社ごと譲渡しますので、会社に付随する契約、保証、その他全てのものが買手企業に引き継がれます。
買手企業として最も注意して見なければいけない部分が負債です。
決算書などに記載されている負債はもちろんのこと、見えない負債や今後発生する可能性のある負債などは事前にしっかりと調査、把握しておきましょう。
また、売手側の企業としては、事前に買手企業へリスクの開示をしっかりとしましょう。
後々になって、伝え忘れていた負債や隠していた負債が表に出てきた際は、M&Aの交渉自体が破談になるリスクがあります。
その点も十分に理解した上で、情報の開示は行いましょう。
株式譲渡において最も注意すべきポイントは偶発債務の把握です。
偶発債務とは現時点で決算書などには記載されていない負債で、将来的に負債になる可能性のある債務のことを言います。
具体的には、保証債務、未払労働債務、裁判関連の損害賠償債務です。
保証債務とは、他人や他社の債務を法人として保証している債務を言います。
現時点では、保証している人や会社が、遅れることなく支払を行っているので、保証している側へは何ら支払請求は来ません。しかしながら、保証している側が、財務状況の悪化などによる支払不能状態となった場合は、債権者から保証をしている先へ支払請求をしてくるので、代わりに支払をしなくてはなりません。
近年、労働問題が事業主側にとっても大きな問題となっています。
M&Aで会社を譲渡した場合においても労働債務はそのまま引き継がれますので、買手企業にとっては継続した問題として残ります。
特に未払残業代における債務については、十分にケアしておく必要があります。
従業員の退職や急激な環境の変化などは、従業員の退職のきっかけになります。
退職がきっかけで従業員から未払残業代の請求がおこる可能性もありますので、売手側、買手側において未払残業代の取扱いは譲渡契約内でしっかりと取り決めをしておきましょう。
現時点で取引先と問題がない場合でも、今後の中で取引先から訴えられる可能性も十分にあります。
そういった場合に発生した損害賠償請求は偶発債務と言えます。
その他の債務としては、退職金の積み立てなどがあります。
就業規則の中に退職金規定があるにも関わらず、退職金の積み立てが行えていない中小企業は多く存在します。
株式譲渡の場合は、退職金の積み立て及び支払についても、そのまま引き継ぎを行います。
買手企業側は、就業規則の内容もしっかりと目を通しておき、退職金の積み立てが不足している場合は、譲渡代金から差し引くなど調整が必要です。
事業譲渡は株式譲渡と違い、事業の一部を譲渡することを言います。
法人は残ったまま、売却する事業に関わる人材、取引先、資産(設備など)を法人から切り出し譲渡する方法です。
この場合のメリットは経営者はそのまま法人に残ることができ、譲渡した代金で新規事業への投資や既存事業への投資を行うことができます。
最近では資金調達の1つとして用いられるケースも増えてきました。
買手企業からすれば、事業譲渡は負債の引継ぎがないので安心して事業引継ができます。
この点は株式譲渡との大きな違いです。
事業譲渡の注意点は引継ぎ作業の煩雑さです。
事業を会社から切り出すため、取引先の入金口座、従業員の雇用契約、店舗の場合は不動産の賃貸借契約、許認可事業であれば、許認可の引継ぎなど事業に関わる全ての契約や許認可を買手企業へ移転させる必要があります。
特に、従業員と許認可は確実に引き継げるかどうかは不透明な部分があるので事前に注意しておく必要があるでしょう。
また、事業規模が大きすぎる場合は、すべての契約等を書き換える必要があるので、いくら負債のリスクがないといえども事業譲渡での譲渡はお勧めできません。
M&Aを行うにあたり全般的な注意点についてお伝えします。
M&Aは何といっても情報の取扱いには十分に気を配る必要があります。
特に譲渡が完了する前に従業員や取引先、金融機関に情報が漏れてしまい契約が破談になることも多くあります。
また、M&Aは不動産と違い常に浮き沈みがあり、人(従業員など)が関与しているため、簡単に決断ができるものではないという認識は持っておきましょう。
それほどデリケートに取扱わなければいけませんし、最終的な譲渡が完了するまでは、間違いなく成約できるかどうかは分からないものであると考えて対応した方が良いでしょう。
>>会社や事業の売却において必要な契約書内容とその注意点とは?
M&Aにおいてリスク回避する方法は2つあります。
デューデリジェンスを行うことと、契約内容で売手企業側に保証をしてもらうことです。
中小企業の場合、財務デューデリジェンスは行いますが、その他のデューデリジェンス(労務や法務)については、費用面を考慮して行われないことが多いです。
そういった場合は、偶発債務や簿外債務の支払いが発生した際に、責任の所在がどちらにあるのかを明確に譲渡契約書内に明記しておく必要があります。
また、永久に売手側が債務の保証をすることは現実的ではありませんので、売手側、買手側で決めた保証期間を設けるのが一般的です。
中小企業のM&Aの場合は1年程度が一般的です。
まずはM&Aのことを知ることから始めましょう。
いまだにM&Aに対してネガティブな印象を持っている経営者も多くいるかと思いますが、昨今は中小企業の経営戦略の重要な1つとしてM&Aは取り扱われるようになり、譲渡代金も500万円程度からできるまで世の中に浸透してきました。
そういった状況から安易に会社や事業の売却、購入ができると考えトラブルも増えてきているのが実情です。
だからこそ、経営者にはしっかりとM&Aのことを理解して頂き、経営者自身で冷静に判断できるだけの知識を持って頂きたいと考えています。
それが必ずM&Aの成功につながることなので。
ご相談は無料です。お気軽にお声かけください。
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