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財務戦略

企業統治(コーポレートガバナンス)についてわかりやすく解説

2020/07/10



企業統治(コーポレートガバナンス)の強化は、企業の能力を最大限に引き出すことに繋がります。反対に、コーポレートガバナンスに問題があると、社内で不祥事が連続したり、代表取締役社長の暴走を引き起こすことにもなります。


ここでは、そうした事態を招かないために、コーポレートガバナンスについて、わかりやすく解説します。


企業統治(コーポレートガバナンス)とは

コーポレートガバナンスは、企業経営の統治と監視を意味します。ただし、明確に定義が定められているわけではありません。企業経営統治・監視の「方法」のことをコーポレートガバナンスと呼んでいます。


例えば、監査役や社外取締役の設置、情報開示の徹底などが挙げられます。




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企業統治(コーポレートガバナンス)の歴史と日本における背景

「ガバナンス」という考え方の発祥はアメリカです。1960年代の黒人の権利を求める公民権運動や公害問題などで企業の社会的責任問題が問われるようになったことで、「ガバナンス」という用語が使われ出しました。


日本に入ってきたのは1990年代以降です。日本ではバブルが崩壊した頃、企業や銀行の不祥事が次々と明るみに出ました。そのため、不祥事の発生を防ぐということでコーポレートガバナンスが注目されるようになったのです。



企業統治(コーポレートガバナンス)の目的



コーポレートガバナンスの目的は、公平かつ透明性のある企業経営を行うことです。


上場を目指す場合は、コーポレートガバナンスの遵守が必須です。

上場を目指していなくても、企業経営の統治と監視は結果的に企業の利益に繋がります。




それでは、コーポレートガバナンスの目的について、さらに詳しくみていきましょう。


経営者による不正を未然に防ぐ


株主に利益を還元するには、企業が市場を見極めて適切な行動をとる必要があります。経営者が株主の利益に一致しない行動をとることを防ぐために、コーポレートガバナンスによって監視することが大切です。


企業全体の成長性が高いからといって、経営者が優れているとは限りません。


そのため、経営者が会社を私物化したり不正を働いたりするケースは少なくありません。経営者による暴走によって、顧客情報の漏えいや資金の不正利用などが起こり、企業の信頼性を失墜させてしまうのです。


そうなれば、自社だけではなく取引先の企業にまで多大な影響が及び、連鎖倒産が起こる恐れもあります。コーポレートガバナンスの遵守によって経営者の暴走を抑制するため、結果的として健全な企業運営が可能となります。



株主の権利を守る



株主には、以下2つの権利があります。


自益権・・・会社が得た利益を配当などの仕組みで受け取る権利

共益権・・・会社の意思決定に関与する権利


しかし、コーポレートガバナンスが遵守できていない企業では、株主の自益権と共益権が守られない場合があります。コーポレートガバナンスを遵守することで、株主が得るべき正当な権利を守ることが可能です。


また、株主の平等性を担保することも重要です。株主が得られる権利は、持ち株数や株式の内容によって異なります。持ち株数や株式の内容に応じた権利を渡す必要があるため、平等性が担保されていない場合、株主は不満に感じて株を売却してしまいます。


そのため、経営方針の変更や新戦略の立案などにおいても、株主に十分な説明が必要です。意思疎通がスムーズになることで、株主の権利を守れるとともに、企業に対する好感度が高まります。



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関係者の権利を守る


企業は、従業員や顧客、債権者によって支えられています。これらの関係者はステークホルダー(利害関係者)と呼ばれ、企業が経営を続けるうえで欠かせない存在です。


コーポレートガバナンスを徹底することによって、ステークホルダーの権利や立場が守られます。権利や立場を守られない場合、従業員の離職率が上がって人材不足に陥ったり、スキルが高い従業員が育たなくなったりするでしょう。企業を持続させるためにも、関係者の権利を守ることが大切です。



企業の透明性を確保する


企業の透明性の確保には、適切な情報開示が欠かせません。例えば、株主に不利な情報を伝えずにいると、株主に不利益が及びます。企業が持続的に存在し続けるには、株主の協力が必要です。企業の取り組みや課題への対処など、あらゆる情報を開示しましょう。


業績や財政の状況だけではなく、現在抱えている企業課題まで開示することで、株主や取引先、従業員などの利益を保護できます。


利益を保護する姿勢を見せることで、信頼関係の構築に繋がるでしょう。株主の信頼を得ることで、結果的に企業価値の向上や持続的な成長を得られます。


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取締役会の責務を全うする


取締役会の責務は、会社の持続的な成長や企業価値の向上、収益性の改善などです。コーポレートガバナンスの遵守によって、結果的にこれらの目的を達成できます。経営陣を監視することで不正を防ぎ、企業全体を監視することで事業をコントロールします。



企業統治(コーポレートガバナンス)が中小企業にも必要な理由

コーポレートガバナンスは法律で定められたものではありませんが、上場企業は「コーポレートガバナンス・コード」に沿って取り組めているか東京証券取引所へ報告が必要です。


「コーポレートガバナンス・コード」とは、金融庁と東京証券取引所が出しているコーポレートガバナンスのガイドラインです。先述したとおり、上場企業では重要なものといえます。


では、中小企業の場合は報告の必要がないからコーポレートガバナンスは気にしなくてよいのかというと、それは違います。


中小企業であっても、コーポレートガバナンスは重要です。なぜなら、どのような取り組みをしているか、きちんと会社経営がなされているかを、金融機関などのステークホルダーに情報開示できるからです。


きちんと情報開示をして、透明性のある経営ができていると示せると資金調達の際にもスムーズにものごとが進んでいくでしょう。また、企業として社会的信用にもつながります。



企業統治(コーポレートガバナンス)の問題点

コーポレートガバナンスの問題点は、企業活動のスピード感が失われる恐れがあることです。徹底した監視体制では、今すぐ行動すべきタイミングで行動できず、チャンスを逃す恐れがあります。


これは、イレギュラーにおける承認ルールなどを定めておくことで回避できます。そのためにもコーポレートガバナンスを整備したうえで、適切に運用していくことが重要です。


また、会社の成長の妨げになることもあるでしょう。ステークホルダーへ利益を還元するために、短期的な利益を追い求めてしまい、長い目で見た経営ができなくなります。また、経営陣によるリーダーシップを取りにくくなることで、現場のモチベーションの低下や離職率アップなどの問題が起こる危険性もあります。


しかし、会社を経営するうえで、コーポレートガバナンスは必要です。問題点を把握したうえで、自社に合ったコーポレートガバナンスを実施しましょう。


企業統治と内部統制やコンプライアンスとの違いとは



企業統治(コーポレートガバナンス)と内部統制やコンプライアンスとの違いをおさえておきましょう。


内部統制は、公正かつ透明性が高い経営のために、経営者や従業員が守る必要がある仕組みです。例えば、業績のモニタリングや事業継続のリスク評価、IT化に向けた整備、統制環境の整備などがあります。


そのほか、情報漏えいを防ぐための社内ルール、経費の上長承認のフローなども内部統制の一つです。


コーポレートガバナンスと内部統制の違いは対象者です。コーポレートガバナンスが経営者を対象としているのに対し、内部統制は経営者と従業員を対象としています


コンプライアンスは法令遵守や社会規範を守ることを指します。法令違反やモラルに反する行為は、世間からの信頼を失墜させます。一見、大きな問題にならないと思えるような小さな不正でも、企業の信頼を大きく揺らがせる原因になります。


従業員の不正やモラルに反する行為で倒産した企業は少なくありません。そのため、コーポレートガバナンスを遵守するうえで、コンプライアンスの徹底は欠かせないのです。そして、コンプライアンスの強化のために、コーポレートガバナンスの仕組みが必要です。


企業統制(コーポレートガバナンス)の取り組み具体例



それでは、コーポレートガバナンスの実施方法を具体的にみていきましょう。


1.社外社員や委員会の設置



コーポレートガバナンスの実施には、組織面の準備が必要です。まずは、社外役員や委員会を設置しましょう。経営体制を監視する機関の設置によって、不正への抑止力になります。社内から選定すると癒着問題が起こる恐れがあるため、社外取締役や社外監査役などを設置しましょう。


また、業務を執行する機関と意思決定をする機関を隔てるための執行役員制度を導入することが大切です。意思決定と執行の両方の権利を持つ人物は暴走しやすいため、それぞれ明確に分けたほうがよいでしょう。


2.会社全体の業務を可視化



コーポレートガバナンスを実施するために、業務の可視化を図る必要があります。日本企業は、各部門や部署ごとに単独で業務を遂行しており、横のつながりに乏しい傾向があります。また、経営層が会社全体を見渡すのではなく、利益に繋がる重要な部署や部門にのみ注目するケースが少なくありません。


このような体制では、管理の目をかいぐぐり不正を働く人物が出てきてしまいます。会社全体の業務を可視化して、管理しやすい体制を整えましょう。営業支援システムや顧客管理システム、基幹統合システムの導入などで、管理体制を整えやすくなります。


3.社内ルールの明確化と周知



コーポレートガバナンスを強化する際には、株主や従業員、取引先からの理解が欠かせません。理解を得られていないまま実施しても、成果は出ないでしょう。社内ルールを明確化し、コーポレートガバナンスの必要性や妥当性、従業員や株主にどのようなメリットがあるのかなどを伝えることが大切です。


>>株式の持ち分による株主の権利の違いとは


企業統治(コーポレートガバナンス)を強化するための方法2つ


コーポレートガバナンスを強化するための方法は以下の2つがあります。

・モニタリングシステム

・インセンティブシステム


モニタリングシステムは、経営者がコーポレートガバナンスに沿って適切に行動しているかを見ます。具体的には、社外取締役のみの会議開催や内部監査などです。


モニタリングシステムがあることで、不祥事が起きないよう牽制できますし、早期発見にもつながります。


インセンティブシステムは、経営者に企業価値を高めたら何かしらのインセンティブを与えることです。具体的には、ストックオプションや株式報酬などです。


企業価値が高まるほど経営者の報酬が増えるなどのインセンティブがありますが、過度になると粉飾決算に繋がるなどの恐れが出てきます。適切な制度をつくることが重要となるでしょう。


まとめ



コーポレートガバナンスの強化は、結果的に企業の成長や企業価値の向上に繋がります。コーポレートガバナンスに問題があると、代表取締役社長の暴走を招いたり、株主の間で不公平が起きたりします。

コーポレートガバナンスの目的をまとめると、以下のとおりです。

企業統治(コーポレートガバナンス)の目的

経営者による不正を未然に防ぐ

株主の権利を守る

関係者の権利を守る

企業の透明性を確保する

取締役会の責務を全うする

企業の崩壊を招く恐れもあるため、できるだけ早くコーポレートガバナンスを実施する必要があります。


以下が、コーポレートガバナンスの取り組み具体例のまとめです。


企業統制(コーポレートガバナンス)の取り組み具体例

1.社外社員や委員会の設置

2.会社全体の業務を可視化

3.社内ルールの明確化と周知



上記を参考にコーポレートガバナンスの実施の内容を検討してみてください。



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