経営改善
2021/01/30
バンクミーティングとは、業績が悪化して融資返済が困難になった企業に対して、取引のある金融機関(バンク)が、一堂に会して今後の対応について話しあう(ミーティング)ことです。
今回はバンクミーティングについて、基本事項からメリット、デメリットまで解説します。
目次
バンクミーティングは業績不振の企業に対する話し合いの場であり、そこで話し合われるのは基本的に前向きなないようではありません。そのように前向きでない話し合いに、どうして取引銀行が一同に会する必要があるのでしょうか?
ここからは、まずバンクミーティングの意味から解説していくことにします。
そもそもバンクミーティングは、特定の日時に全取引銀行が集まり、議題について話し合い、共通認識や対応方針を相互に確認、同意をします。
そこで話し合う議題は主に「リスケ」についてです。
業績悪化から、融資返済が困難になり、これまでの返済金額、返済期間、金利などを見直し(融資条件の変更、単に条件変更とも)返済可能な金額に減額するのがリスケ(リスケジュールRescheduleの略)です。
3つの金融機関から融資を受けている企業がリスケをする場合、まずメイン行であるA銀行と話し合いをし、その結果をもってB銀行に出向いてまた相談し、最後にC銀行にリスケを頼みに行くといった具合で、何度も銀行に足を運ぶ必要があります。
ところがA銀行でOKをもらったのに、B銀行が難色を示す場合があります。
例えば
A銀行は融資のシェアが60%(全融資1億円のうち6千万円がA銀行、この場合A銀行のシェアは60%となる)。この場合でも、融資の期間や短期/長期/保全(担保)の有無などの条件で、B行やC行がすんなりリスケに同意するとは限りません。
企業としては返済を減らしてもらう(リスケしてもらう)立場なので強くは言えず、時間と労力を消費しているうちに事態は悪化します。
そこで、リスケについて1対1の話し合いをズルズル続けるより、全関係者が一度に協議したほうがスムーズに進むと言うのがバンクミーティングの基本的な考え方です。
複数金融機関に融資がある場合、リスケをしてもらうには一定のルールがあります。
大原則は「平等」「抜け駆け禁止」
AがリスケしたらBもCもリスケしなければならない
銀行間では規模などの上下関係はない
融資額のシェア、返済額のシェア、とにかくシェアが重視されます。
上記のシェアに関してもそうですが、融資している銀行にとってリスケに応じるかという自行の判断だけでなく、他行に比べ損していないかも重要です。
往々にしてリスケ相談が進まないのは、こうした銀行同士の腹の探り合いや面子、プライドなども関係してきます。
そのように話しがこじれてきたなら、いっそのことまとまって主張をぶつけ合った方が、余計な腹の探り合いも不要で、調整や取引などもその場でぶつけることもできるのです。
腹を割って主張をぶつけ合い、恨みっこ無しで話しをまとめるのがバンクミーティングのメリットと言えます。
ここからは、具体的なバンクミーティングの進め方を説明します。
バンクミーティングの参加者は、主に以下の通りです。
場所は企業の事務所や指定したホテルなどの会議室や、メインバンクなど銀行で開催する場合もあります。議事進行も基本的にはメインバンクの担当者が取り仕切ります。
これがメインバンク以外からの発案なら、発案した銀行が日時、場所、議事進行を受け持つのが一般的です。
リスケに至った経緯や各金融機関に、どのように返済減額を頼みたいかなどのリスケ全体の説明をおこないます。そして希望通りのリスケが叶ったならいつまでに、どのように業績が回復するかと言った再建計画の説明が、債務者側からなされます。
その後は、各銀行がそれぞれの対応方針を発表し、情報交換、意見交換を行ないます。
バンクミーティングに臨む前に、各銀行は戦略を練って事前準備もしています。また想定される他行の反応とその対策などもシミュレーションしてからバンクミーティングに参加するので、基本的にこの場で何かがすぐに決定されることはありません。
しかしながら、すべて平和裏に終わるかというとそうでもなく、話し合いがまとまらなければ各々が持ち帰り検討したり、再度バンクミーティングを開催したりする場合もあります。
バンクミーティングを円滑に進めるには、メインバンクの協力が必要不可欠です。
メインバンクとは、単に融資残高が一番多いなどシェアが一番と言うだけではなく、その企業のあらゆる面に重大な影響を与えるものです。
銀行間の規模で上下関係は無いと書きましたが、メインバンク、準メインバンク(サブメイン)それ以外という差では、ハッキリと上下関係があります。
これはメインバンクだからエラいとか、メインバンクが有利にことを進めるという意味ではありません。
企業のことを最も知り、だからこそ融資残高が一番であるメインバンクは、その企業に対する発言権と責任も一番なのです。
したがって、メインバンクが主導してバンクミーティングを取り仕切らなければ、準メイン以下の反応も冷たくなります。
「メインバンクのA銀行が手を引こうとしている」
「Aが助けられないのに、うちがその後始末をする必要は無い」
このように、メインバンクの方針、姿勢がバンクミーティングの結果を左右しますので、メインバンクの協力無しではバンクミーティングは成功しません。
バンクミーティングでは、リスケを依頼するに至った経営責任や手腕を問われる厳しい声も上がるでしょう。また、リスケに応じる条件として資産の売却や経費節減、経営者の生活レベルの見直しまで、求められる場合があります。
しかし、支援を求める以上はそうした厳しい反応も真摯に受け止める姿勢が必要です。
そしてなにより重要なのは、リスケに応じてもらうことで事業再生ができる、ということを誠心誠意伝えることです。
再生の意思が無い会社には、何回バンクミーティングを行なったとしても、支援してくれル銀行はありません。
バンクミーティングを行う上で、必要なことは各銀行への事前の根回しや調整です。
バンクミーティングを開催するにあたり、その場で資料や提案事項を聞くよりも、事前に各金融機関へバンクミーティングの課題を説明し、意向を確認しておくことが必要です。
その上で、実際に開催されるバンクミーティングで各金融機関の温度感や実際の発言を経て合意形成をしていくという流れが一般的です。
ここまで説明したように、メリットがあるバンクミーティングでも話しがまとまらない場合には、中小企業再生支援協議会があります。
中小企業生支援協議会(支援協とも)は、中小企業が事業再生に取り組む支援をする公的支援機関です。
経済産業省の委託事業として、全国の47都道府県に設置されています。
バンクミーティングが不調で進展が見られない場合などに、支援を依頼することができます。
まず窓口相談といって、専門知識のあるスタッフが事業内容やリスケの依頼状況などをヒアリングします。
また必要に応じて中小企業診断士、税理士、公認会計士、弁護士などを紹介してくれます。
希望すれば「再生計画(事業改善計画)」の策定や 金融機関等との調整もしてくれます。この場合には個別のチームを編成して 再生を長期的に支援してくれます。
そして、中小企業支援協議会の主導で会議を行ない(この場合はキックオフ会議と呼びますが、実際はバンクミーティングのことです)リスケの調整をしてくれます。
中小企業再生支援協議会を利用するのは、原則として無料です。ただし紹介してもらった税理士などには個別の報酬支払が必要です。また再生チームに専門家が含まれる場合は、やはり報酬が必要になります。
なんといっても、公平中立な立場で調整してもらえる点が最大のメリットです。
バンクミーティングがまとまらない要因として、銀行の思惑、利害関係があります。銀行も企業なので、これはいわば当然と言えるでしょう。しかしそれ故に協議がまとまらなくなってもいるのです。
しかし中小企業再生支援協議会はこうした利害関係を超越した立場なので、調整がスムーズにできるのです。
また、公的機関として発言に重みもあります。
中小企業再生支援協議会の指示には拘束力などありませんが、金融機関としては公的機関に対し無下な対応もできませんので、概ね調整に従うことになります。
バンクミーティングの意味を知り、金融機関とリスケの話し合いを進め、それでもうまく行かないときは、公的機関の中小企業再生支援協議会が支援してくれます。
企業経営の参考にしてください。
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