M&A用語集
2019/11/05
M&Aの契約において、多くの「表明保証条項」を定めているケースは非常に多いです。
表明保証を簡単に説明すると、売手側が買手側に対して財務・法務などで提出した資料が真実であり、なおかつ正確であると表明し、内容を保証していることを指します。
M&Aを実施する際にはデューデリジェンスを必ず行い、売手側の法務や税務、財務面に現在問題を抱えていないか、将来どのようなリスクがあるのかを洗い出していきます。
買手企業は問題や将来のリスクも考慮した上で買収価格を検討していき、売手側と交渉しながら最終的に価格を決めていくのがM&Aの流れです。
ただし、短期間のデューデリジェンスでは十分な問題点・リスクの洗い出しができず、M&Aを実行して買収後に問題点が発覚する場合も少なくありません。
その一方で、十分すぎるほどのデューデリジェンスを行った結果、細かいリスクまで考慮することになると、売手側との価格交渉で決裂してしまい、M&Aが成立しない恐れも出てきます。
このようなケースを回避するためにも、売手側の法務・税務・財務などで重要な事項がある場合、表明保証条項を作って条件を調整する方法が普及し、一般化されています。
目次
表明保証とは、情報に間違いや嘘がないことを宣言し、それを保証することを指します。
条項を宣言し保証したにも関わらず、嘘や違反などの問題が見つかった場合はM&Aの取引は中止となり、場合によっては補償や損害の請求も認められる場合があります。
そもそも表明保証は買主側を保護するために作られたもので、売主側が買主側に対して嘘や違反ができないようにしているものです。
表明保証条項に違反すれば、故意であったとしても過失であったとしても、買主側がしっかりと責任を追及できるようになっています。
特に、契約事項と関連が深い項目について表明保証条項を定めているため、M&A契約においても重要な意味を持っていると言えます。
表明保証条項を定める場合、買主側と売主側とでは立場が大きく異なります。
買主側はデューデリジェンスでは調査しきれないリスクも回避したいという目的から、なるべく表明保証条項を多く盛り込んでいきたいと考えています。
一方、売主側は将来に影響するリスクが見えてしまった場合に買手企業側からの損害賠償請求額を抑えたいという思いから、条項の減少や内容を緩やかなものに修正を求めるケースは多いです。
表明保証条項の内容を決めるのも買主側と売主側で交渉・調整が必要になってくるので、ある程度時間をかけて話し合った方が良いでしょう。
表明保証条項は、買主側が知らなかった事実に対してもリスクを分配できるという機能を持っています。
条項を設けておけば、それぞれの当事者がどこまでリスクを負担すれば良いかが明確になるので、買主側も不安なく取引が行えるでしょう。
さらに、万が一デューデリジェンスでは明らかにならなかった事実が表面化してきた場合、クロージングの前提条件として「解除権」が発動できたり、必要に応じて補償を請求できたりすることも可能です。
あくまでも表明保証条項は安心して契約を行うためのものなので、問題が生じるケースも少ないのですが、万が一問題が表面化して裁判にまで至ってしまうと、表明保証条項を用意していなかったことで不利益を被ってしまった事例もあります。
また、表面化してきた問題による損害が想定よりもかなり甚大であり、表明保証条項の内容通りに解釈されてしまうと、十分な保護に至らない可能性もあるでしょう。
表明保証条項を定める際には、これまでの裁判例なども参考にしつつ、専門家と話し合いながら決めていった方がうまく機能しやすいでしょう。
表明保証の内容は案件によっても違ってくるため、一概に「この条項は必ず入れるべき」とは言えません。
しかし、そうであっても比較的多くの案件で記載されている条項も存在します。
・デューデリジェンスにおける開示情報がすべて正しいこと
・訴訟が提起されておらず、すべて隠していないこと
・財務諸表や会計帳簿などの書類が正確に作られていること
・買い手側に開示していない偶発債務が存在していないこと など
表明保証の内容を決めたら、保証期間も記載するようにしましょう。
なぜなら、保証期間を決めておかないと締結から数年後に違反が見つかったとしても、損害賠償請求や契約の解除がスムーズに行えない可能性があるためです。
さらに、違反があった場合にどのように対処するかも、具体的に記載した方が良いでしょう。
>>デューデリジェンスに必要な費用は?手続きの流れと実行のタイミング
表明保証は元々米英法によって生まれたものなので、日本の民商法上では表明保証に関して想定されていません。
そのため、表明保証の法的拘束力は裁判所の解釈によって変わってしまう可能性があります。
例えば表明保証条項に違反が見られたとしても、債務不履行に該当するわけではないため損害賠償請求が難しい場合もあるのです。
基本的には譲渡価格を上限に賠償額の上限として交渉していきます。
売主側としては、表明保証の法的拘束力が低いことに対し、なるべく損害賠償請求が発生しないように交渉できるのは良い点と言えます。
これは、売主側ですら認知していなかった問題が後から発覚した場合でも、表明保証条項によっては買主側に損害賠償請求されてしまう可能性があるためです。
買主側としては、なるべくリスクを回避した上でM&A契約を行うためにも表明保証は重要となってきますが、その一方で違反となった場合でも日本の法律だと損害賠償請求に至るまでが難しいため、これまでの裁判事例も踏まえながら条項を決めなくてはいけません。
細かいところまで定めておく必要はありますが、精度の高い表明保証条項を作っておけば将来襲いかかってくるリスクも回避できるでしょう。
万が一表明保証条項に違反が見られた場合、買主側は売主側に対して
・損害賠償請求
・M&A契約の解除
などを行うことができます。
もしも違反した場合、買主側に発生してしまった損失を補填するためにも、売主側に対して損害賠償請求が行えます。
損害賠償請求は故意・過失に問わず賠償請求することが可能です。
損害賠償請求されてしまうケースの多くは、情報開示不足が要因となっています。
条項には、情報をすべて開示しなくてはいけない条項が入る場合も少なくありません。
そのため売主はM&Aでの打ち合わせの際に買主へすべての情報を開示しなくてはならないのですが、必要以上にしっかりと説明しないと後から表明保証違反として損害賠償請求されてしまう恐れがあります。
条項に違反すると、前提条件が満たされていないと判断されてM&A契約自体が解除されてしまう可能性があります。
M&A契約後から数年経過して表明保証違反が発覚した場合、補償請求や損害賠償請求が行われても解決すれば事業や会社はそのまま買主側が経営を続けるケースが多いです。
しかし、あまりにも損失が大きく、被害が甚大であると判断されてしまうとM&A契約が解除されてしまう可能性もあるのです。
統合前に違反が発覚すれば、損害賠償請求ではなく契約解除によって対応されてしまう場合もあります。
M&A契約において、やはり表明保証違反はないに越したことはありません。
売手側にとってはもちろん、買手側にとってもせっかく見つかった対象会社なのに、表明保証違反の発覚によって契約解除となれば、また一から売却予定の企業の中から自社にとって良い影響をもたらしてくれる企業を選ぶ必要が出てきます。
表明保証違反を防ぐために、売手・買手が共に気を付けておきたいポイントをご紹介しましょう。
売手側・買手側のどちらも正確な情報を提供することが大切です。
例えば、話し合いの中で何気なく喋った内容が公表された情報と異なっていた場合、相手から責任を問われてしまう可能性もあります。
なるべくすべての情報を正確に伝えておくことは、売手側・買手側それぞれが重視すべきポイントと言えます。
表明保証は買手企業が売手企業に対して正確な情報が提供されていることを保証するものになりますが、例えば買手側が売手側の問題を事前に知っていたにも関わらず対応を放置していたり、デューデリジェンスが十分に行われなかったりした場合、売手側が責任を負わなくても良くなります。
そのため、売手側も相手をきちんと見極めるためにも、財務状況などは確認しておいた方が良いでしょう。
表明保証、並びにM&A契約を行う際には弁護士などの専門家へ事前に相談しておきましょう。
表明保証は故意・過失に問わず、違反によって損害賠償請求や契約解除に陥ってしまう可能性があります。
また、売手と買手で表明保証内容について交渉し、両者が納得する形を作らなくてはなりません。
第三者かつ法律のプロの視点から表明保証条項をチェックが入ることで、表明保証に関するトラブルも回避しながら、スムーズな契約へと移れるでしょう。
これは買手だけでなく、交渉する売手企業にとっても事前に専門家へ相談するのがおすすめです。
表明保証は売手・買手の両者にとって、M&Aに関するリスクを最小限に抑えるために設けられるものです。
お互いが情報を正確に提供しないと、公平な取引は行えません。
特に中小企業では情報管理が徹底されておらず、提供された資料の内容が誤っていたり事実と大きくかけ離れていたりすると、買手企業にとっては投資の判断も難しくなるでしょう。
このようなリスクを避けるためにも、表明保証は中小企業のM&Aにおいて重要な役割を担っています。
M&A契約で重要な表明保証は、事前に弁護士などのプロへ相談するようにしましょう。
ご相談は無料です。お気軽にお声かけください。
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