M&A
2019/12/24
会社の売却を検討している方の中には、会社売却の際に、どれくらいのお金(手数料やその他の費用)がかかるか不安になる方も多いでしょう。
「タダほど怖いものはない」と言われる現代において、売却決定後にかなりの手数料が発生してしまった場合、何のために売却をしたのかと思う人もいます。
買手企業とは異なり、売手側の経営者が何度もM&Aを経験するケースはそれほど見られません。ほとんどの経営者が、会社売却を初めての体験として行います。
そのため、経験がないことに加えて、何がどうなるのか分からず、なかなか決断できない方も少なくありません。
そこで今回は、初めてM&Aを経験する経営者の方に向けて「会社売却時の手数料」に内容を絞り、詳しく解説していきます。
目次
M&A業界においては、許認可や法律が定められているわけではないので、決まった報酬体系は存在しません。
そのような取引環境の中においても、各M&A会社が採用している報酬形態がいくつかありますので、それぞれ見ていきましょう。
M&Aにおける手数料は、一般的にレーマン方式が採用されています。
レーマン方式とは、株式譲渡や事業譲渡を行う際に算出された譲渡金額に応じて、パーセンテージが決まる計算方法です。
例えば取引金額が8億円だった場合の報酬がどれくらいになるかというと、
①5億円(5億円未満)×5%=2,500万円
②3億円(5億円以上10億円未満)×4%=1,200万円
①+②=3,700万円が、成功報酬として支払われることになります。
また、M&A業界ではレーマン方式による算出以外に「最低報酬制度」があります。
リテイナー報酬(月額報酬)は、仲介会社に対して月額で支払う手数料を指します。
レーマン方式ではM&Aの成立によって報酬を算出できますが、リテイナーの場合は毎月支払う費用が決まっており、まだ成立に至っていなくても支払う必要があります。
月額は仲介会社によって異なるものの、およそ30~50万円程度が相場と言えるでしょう。
着手金は、仲介会社へ依頼した後に発生する手数料を指します。
こちらは成功報酬とは別に支払う手数料であり、M&Aが成立されなかったとしても戻ってくることはありません。着手金の相場は約100~200万円ですが、企業規模が大きかったり、大きな案件になったりすると相場以上になってしまう場合があります。
着手金については、売却案件の取り掛かりに際して、資料作成やその他契約に向けた業務費用の対価です。
レーマン方式も成功報酬に分類されますが、完全成功報酬とは成功報酬しか費用が発生しないという意味を持ちます。
例えば、レーマン方式を採用していても着手金が発生し、報酬以上の費用がかかってしまうこともあるでしょう。しかし、完全成功報酬なら着手金は発生しないため、できるだけ費用を抑えたい場合におすすめです。
>>M&Aにおける成功報酬型とリテイナー報酬型のメリット・デメリットとは?
M&Aにおいては、案件成約時の報酬以外にも費用が発生する場合があります。
基本的には、発生する費用の実費を依頼主が支払います。
M&Aでは買手側が売手側企業に対し、企業調査としてデューデリジェンスを行い、財務・法務などに問題がないか調べます。
しかし、売手側の場合も調査しておくことで、正確な売却相場を見極めたり、仲介会社からアドバイスをもらったりすることができます。
売手側は株価算定や企業価値の算定を目的に利用するケースがあります。また、上場企業などでは、適正価格での売却であることを証明する目的で、売手側が企業価値算定を行う場合もあります。
何より適正価格でのM&A成約につながりやすいため、調査は必要不可欠です。費用は数十~数百万が相場です。
M&Aを成立させるまでに、さまざまな関連する業務をこなしていく必要があります。
例えば企業を調査する際にかかるのが、事務所に行くための交通費や人件費です。こうした業務上発生した経費は、基本合意がなされた後に請求されることが多くなっています。
譲渡が無事成約となった場合、仲介会社へ支払う費用以外に税金を納める必要があります。
納める税金の種類は、「株式譲渡」と「事業譲渡」によって異なります。
株式を売却することで得た利益には、「譲渡所得税」がかかってきます。
譲渡所得は基本的に譲渡価額から必要経費(取得費や委託手数料など)を差し引いたもので、譲渡所得税は所得税と復興特別所得税(15.315%)に住民税(5%)を加えた「20.315%」を掛けると算出されます。
株式譲渡だと株式を売却した株主(経営者など)に譲渡所得税がかかりますが、事業譲渡だと会社が売却益を得られるため、会社に法人税などがかかります。
また、事業譲渡の場合、譲渡価格に消費税が発生します。買手企業側は【譲渡代金+消費税】の支払いが必要であることを認識しておきましょう。
譲渡価格が大きくなれば、消費税の負担額も大きくなります。その点も踏まえて譲渡価格の設定を行う必要があります。
法人税は会社規模によっても異なるため、どれくらいの費用が必要になるかはアドバイザーや仲介会社、もしくは顧問税理士に事前に相談してみると良いでしょう。
M&Aの報酬自体はレーマン方式を採用しており、各社ある程度の統一はされています。しかし、M&A業界では最低報酬制度というものを採用しているため、各社の最低報酬額にはバラつきがあります。
それでは各社の報酬体系を比較してみましょう。
売上規模で言えば、1億~5億程度の会社を多く扱っています。
成約実績数が多いことでも知られる日本M&Aセンターの手数料は、レーマン方式を採用した成功報酬+着手金となっています。
最低報酬額は1,000万円以上に設定されており、着手金の相場は200万円程度が相場です。相談に関しては無料で対応しています。
提案型M&A仲介の専業会社であるインターリンクも、レーマン方式を採用した成功報酬+着手金です。
ただし、着手金は成功報酬の一部前払いとなっており、成功報酬を支払う際には着手金分が控除されます。最低報酬額は500万円に設定されています。
事業引継支援センターは国が運営する、公的な相談窓口です。公的な相談窓口になるので何回相談に訪れても無料で利用できます。
しかし、事業引継支援センターに登録している機関や弁護士・税理士などの士業のサービスを受ける場合は、別途手数料が必要となるので注意が必要です。
M&Aのマッチングプラットフォームであるトランビは、売手側だと基本的に無料で利用できます。
ただし、成約後は期日までに報告手続きを済ませないと成約手数料(成約価額×3%もしくは30万円のいずれか高い金額)と、遅延損害金(成約価額×3%もしくは30万円のいずれか高い額に年率14.6%を掛けた金額)が発生してしまいます。
また、専門家からアドバイスをもらう場合や、優先枠として表示してもらう場合は、オプションで有料となるので注意しましょう。
近年、M&Aをサポートする仲介会社が急増しており、ある意味「M&Aバブル」と言っても過言ではない状況です。また、最近では上記でご紹介したトランビのように、プラットフォーム型のマッチングサービスを提供する企業も増えてきました。
これだけ多種多様な仲介会社・マッチング会社が増えてくると、どこに売却を依頼すべきか迷ってしまう方も多いでしょう。
ここまで会社売却の手数料や相場についてご紹介してきましたので、今回は最低報酬額だけをピックアップし、どういったM&A案件を得意としているのかご紹介します。
基本的に最低報酬額を見れば、その会社がどんな案件を得意としているのか、取扱い会社の規模まで大体を把握できます。最低報酬額は「この規模より小さな案件は積極的に行っていません」という意思表示でもあるため、ぜひ確認しておきましょう。
自身が経営する会社規模とM&A仲介会社が得意とする会社規模が異なる場合、ミスマッチが多くなってM&Aがなかなか成立できない場合もあります。
自身の会社に見合った仲介会社などから支援を受けたい場合は、最低報酬額を参考に検討してみましょう。
最低報酬額が1,000万円以上と高額に設定している場合、売却額が2億円程度、売上規模が10億円程度の企業案件が得意です。
ただし、あくまでも最低報酬額になるので、実態で見れば売上規模15億円以上、営業利益5,000万円以上となります。
主に上場している大手M&A仲介会社や銀行、証券会社などが当てはまります。
350万~500万円を最低報酬額に設定している場合、約1億~5億円の売上規模の企業案件を扱っています。
営業利益で見るなら、1000万円未満の企業が多いです。 主に中小企業のM&A案件を豊富に取り扱っている企業が当てはまります。
最低報酬額を150万円に設定している場合、売上規模は3,000万円~2億円程度、営業利益は500万円程度の会社を得意としています。
例えばネットメインで仲介サポートを担う企業や事業承継支援センター、M&A専門会社、地元の税理士などが当てはまります。
「M&Aの手数料は他の業種に比べて高額か?」「M&Aアドバイザーという資格があるのか?」と疑問に思う方がいらっしゃるかもしれません。
M&A業界の内情はあまり知られていません。高額な報酬がもらえるのだから、交渉など難しい仕事だと思っている方が少なくないでしょう。
例えば不動産取引の場合、手数料は一般的に売買した金額の3%、売り手・買い手双方の仲介を行うと6%の手数料となります。
M&Aの場合、レーマン方式だと1億円の譲渡額になった場合は5%、双方の仲介を行うと売り手側・買い手側から5%ずつもらえます。
この時点で不動産取引よりも高額な手数料率であるにもかかわらず、加えて最低報酬額まで存在します。さらに、不動産取引だと宅地建物取引主任者の資格を持っていないと仲介できないのに、M&Aは特定の資格がなく、独学でもアドバイザーになれてしまうのです。
不動産取引は仲介会社が重要事項を説明する責任義務と瑕疵担保責任がある一方、M&Aには法律で決められた責任事項はありません。
当然、M&Aのアドバイザーが虚偽の内容を伝えた場合は責任を負うことになりますが、基本的には売手と買手が持つ責任の範囲内で行われます。
不動産取引に比べてM&Aは、責任も軽く資格が必要にないのに手数料は高額であるというのが現実です。
M&Aの仲介やアドバイスを利用する場合に手数料が発生しますが、相場は自社の規模によって変動します。
M&Aで発生する報酬以外の費用
・デューデリジェンスの費用
・業務上発生する費用
・譲渡成約後に発生する税金
M&A業界には特有の「最低報酬額」という制度もあるので、基本的には不動産取引よりも高額な手数料が発生すると考えておきましょう。
手数料の支払いに不安を感じる方や、適正な手数料を望んでいる方は、自社の規模に見合ったM&A仲介会社への依頼がおすすめです。
自社に最適なアドバイザーを見つけたい方は、下記の「アドバイザーを選ぶポイント」で簡単に判断できるので、ぜひお試しください。
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