M&A
2018/08/02
会社売却や事業売却の際に、よく売手側の経営者から
「売上が小さいですが、売却は可能ですか?」
というお話をよく聞きます。
答えは、
「全く問題ありません」
です。
もちろん売上の大小は会社売却や事業売却時の評価の一部ではありますが、その売上や利益の内容の方がより重要です。
例えば、
A社:売上2億円で利益が2000万の会社
B社:売上1億で利益が800万の会社
があったとします。
お互いに不動産業を行っている会社とします。
単純に売上と利益だけをみれば、A社の方が評価される企業かもしれません。
では、追加で下記の条件を付けくわえたらどうでしょうか?
A社は不動産の売買業
B社は不動産の管理業
この条件が加わるだけで企業評価は逆転しB社の方が評価されます。
※買手企業にもよりますが、一般的にはB社の方が企業の価値は高いですという意味です。
もしかしたらA社は内容によっては会社売却自体、困難かもしれません。
つまり、売上/利益だけでは企業価値を決めることはできないという意味です。
具体的に売却しやすい(企業価値が高い)企業のビジネスモデルについて見ていきましょう。
ビジネスモデルとは収益構造とも言えます。
売却した企業や事業がどういったビジネスモデルで売上を構成しているのかが重要です。
ビジネスモデルは大きく2つに分けることができます。
それは
【ストックビジネス(農耕型)】と【フロービジネス(狩猟型)】
です。
一般的に評価されるビジネスモデルは【ストック型】です。
上記の例で言えば、B社の不動産管理会社です。
ストック型のビジネスモデルは、取引先と継続的な取引が発生して、毎月一定金額の売上が見込める取引形態です。
取引先が増えれば増えるほど、売上は積みあがっていくので、ストック型(ためる、蓄える)と言われています。
会員制、顧問型、月額払、定期メンテナンスなどがストック型ビジネスモデルと言われています。
会員制のジムや税理士などの顧問業務、サプリメントなどの定期購入、保険の販売などの事業があります。
その他、完全なストックビジネスではありませんが、根強いリピーターが多くいる飲食店や熱狂的なファンを構築しているビジネスも、ある意味ではストック性を持っているビジネスです。
そういったビジネスモデルは収益が安定しているため、買手企業は高く評価してもらえます。
また、そういったビジネスモデルの事業はM&Aにおいても非常に人気がある業種です。
一方、フロー型のビジネスモデルは、商品や人に売上(収益)が依存しやすい点があります。
事例のA社の様に、一見利益も出ていて魅力的な会社に見えますが、収益構造自体が不安定な要素を含んでいるので、安定性に欠ける面があります。
また、販売している商品の単価が高額すぎると更にビジネスの安定性はなくなります。
・ 高額な商品を取り扱っている1社に対する取引割合が高すぎる
・ 人に依存しすぎている
この様な売上構造の場合は目先の利益や売上に惑わされることなく、精査することをお勧めします。
そういった意味で、フロー型のビジネスモデルの場合は、内容を十分に精査する必要がありますので、注意してください。
例えば、建設業で公共工事に依存している企業(入札で売上が左右される)、不動産の売買事業、コンサルティング会社などはこの分野に入ります。
投資のリスクを最小限に抑えるという見方からも買手企業から好まれるビジネスモデルはストック型のビジネスモデルです。
まずは、M&Aにおける企業価値評価について簡単に説明させて頂きます。
M&Aにおける企業価値評価方法は大きく分けて3つあります。
純資産価額法、DCF法、類似会社比準法です。
一般的に中小企業のM&AやスモールM&Aと言われる小規模のM&Aの場合は、【純資産価額法+営業権法】が取り入れられることが多いです。
純資産価額法は、
会社が保有している資産を簿価(決算書の記載の価格)ではなく、時価で評価し、その時価から負債の額を控除し、企業価値を算定する方法です。
営業権法は、
損益計算書の純粋な利益を導き出し、そこから将来価値(営業権の価値)を算定する方法です。
もう少し譲渡価格や企業規模が大きくなるとDCF法という企業価値評価方法を採用する企業が多いです。
DCF法とは、
ディスカウンテッド・キャッシュフローの略称で将来の事業計画を基に将来のフリーキャッシュフロー(返済や設備投資後に残った純粋な利益)を現在の価値に算定したものです。
評価のポイントは現在価値を算定する割引率です。
実務的なことで言えば、この割引率によって企業価値は全く違うものになってしまうというデメリットもあるので、その点で買収する側と同様の評価方法であるDCF法を採用したとしても結果は大きく乖離することもあります。
最後に類似会社比準法についてですが、こちらは大企業(上場企業)の株価を参考に、対象企業
が上場していたらどの程度株価がつくかを予想し算出する方法です。
では、なぜストックビジネスが評価されるのでしょうか?
それは中小企業におけるM&Aで採用される純資産価額法+営業権法とDCF法で高く評価されるからです。
特に営業権法に関しては、何年分の営業権(利益分)を評価するのか?ということで、企業価値は全く違ってきます。
通常は3年程度が一般的ですが、ストックビジネス型の場合は5年や10年という業種業態もあります。
つまり、顧客数に対して比例して利益が上がっていくので、そのような評価になるのです。
DCF法については、ストックビジネスであっても設備投資なども加味されるので、一概に高くとは評価されるとも言い切れませんが、評価のキーポイントである割引率にはかなりの影響を与えます。
よって、フロー型ビジネスよりもストック型ビジネスの方が高く評価される傾向があります。
こういった評価方法からも買収する側から見た企業評価はフロービジネスよりもストックビジネスの方が、高いと言えるでしょう。
見た目の売上が利益だけが企業の評価ではありません。
買手企業はその内容(売上構造)もしっかりと見て企業の評価を行っています。
買手企業が評価するビジネスモデルはストック型のビジネスモデルです。
その理由は安定した収益が見込めるため投資リスクを抑えることが可能だからです。
現在のビジネスモデルをフロー型からストック型に急激に変更することは非常に難しいです。
現在フロー型のビジネスモデルであってもストック性を持たせる工夫や、人や取引先に依存しすぎない収益構造に変更していくことは必要かもしれません。
これはM&Aで会社売却を行うからビジネスモデルを変更しましょうということではなく、企業の継続性を維持するために会社の売却をする、しない関係なく、どの企業もこの視点で事業構造の改善を図ることをお勧めします。
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