企業事例
2018/08/28
律儀な2代目社長の最後の大仕事
※守秘義務の問題もありますので社名等はアルファベット記載とさせて頂きます。
最初のご面談時に株式会社DのM社長から
「とにかく従業員と取引先には迷惑をかけたくないんだ」
というお話から本件の売却がスタートしました。
すべての譲渡が完了した後の社長の一言が今でも鮮明に覚えています。
「肩の荷がおりました」
それもそのはず。
弊社へご相談頂いた時の状況が状況でしたので。
それでは、どのようにM社長が悩み、決断をして
会社引継ぎが完了したのか紹介いたします。
目次
業種 | 建設資材の卸売業 |
社長の年齢 | 58歳 |
年商 | 6億円 営業黒字 |
純資産 | 約5,000万(実質は債務超過)※注1 |
金融機関借入 | 3億円程度 |
従業員 | 35名 |
注1:決算書上は資産超過であったが、回収不能の売掛金、
その他資産を時価で見た場合に実質的には債務超過状態であった。
当初、弊社へご相談頂いた際、会社の状況は
何とか資金繰りが回っているという状況でした。
それも、金融機関からの継続的な融資があれば
という条件付きです。
ご相談頂いた経営者は2代目であり、それも親族外で、
新卒で入社し、叩き上げで2代目社長になったという経緯。
先代が病気で急逝され、従業員、取引先に迷惑がかけれないという想いから、
当時は会社のナンバー2という立場も重なり会社を引継ぐことを決心。
しかし、引き継いでびっくり・・・
会社の財務状況がこんな状況なのかと。
経営の経験もなく、どうしたらよいかということで
弊社へご相談に来られました。
それは会社を引継いで6か月後のことでした。
社長の望みとしては、従業員、取引先を守りたい。
つまり、会社の継続を望まれていました。
その当時のことをM社長に聞くと
「6か月間はとにかくバタバタしていて何をしていたかもよく分からない状況。
目先のことが不透明すぎて行き当たりばったりで、不安だらけでしたよ。」
「とりあえず、インターネットでいろいろ見ている中で、
M&Aで新たな支援先を見つけることが解決につながるのではないかと、
数社に問合せしました。」
「最終的には御社ともう1社のどちらにしようか迷いましたが、
現在の状況からも単純にM&Aだけの支援ではなく、
現在の状況の改善からお手伝いして頂けるという
ご提案なども考慮した結果、御社に頼むことにしました。」
「もちろん費用面などを考えたら資金的に
余裕がある訳ではなかったので、
費用面だけ見ればもう1社の方が断然良かったですよ。」
「ただ、それだけでは、買手を探して頂ける間も、
現在の状況が続いて、状況が悪化する一途。
買手が見つかるまでもたないかもしれないとも思っていました。
最後まで迷いましたが、藁にも縋る想いで、
最終的には御社にかけてみようと。」
では、具体的にどういた内容をM社長に提案したのか?
①
現在の状況を落ち着かせ、通常の会社運営ができるように、
取引先、従業員、金融機関への対応を行う。
特に金融機関へは会社継続の為の支援を要請
②
資金繰り安定の支援
③
会社の財務状況から経営の建て直しと平行してスポンサー探しを行う。
業績が厳しい会社、資金繰りが厳しい会社、
いわゆる再生型のM&Aの場合、
スポンサー候補が見つかっても、譲渡完了するまでの間に
資金ショートするケースがあります。
刻一刻と変わっていく状況で、買手企業の条件面なども
変化していくこともありますので、弊社では、スポンサー選定時期から、
経営改善の支援も併せて行わせて頂くご提案をさせて頂きました。
実際にD社の支援を始めてスポンサー選定までには
約10カ月の歳月を要しました。
(支援開始から6ヶ月まで)
具体的な支援を開始して約6か月の間は、
会社の運営正常化に注力する方針を決定。
社長と金融機関への同行や従業員との面談などを行い、
2か月が経過した頃にはある程度、会社としても落ち着きを取り戻しました。
一方、M社長が会社を引継いだ際の状況は、
債務超過の状況であり、財務面は既に相当傷んでいる状況でした。
仮にスポンサーが見つかっても、現在の状況ではなかなか
支援に踏み切る判断は難しいのではと考えました。
そのため、財務リストラ(所有不動産の売却、事務所の移転)その他、
様々な経費面の見直しなども行い、売却がスムーズに行えるような
体制の整備を6か月程度かけて行いました。
資金繰り面に関しても、金融機関からの一定の支援を得ることができたので、
目先の資金繰りは安定させることもできました。
あとは、スポンサーを探すだけ・・・
(支援開始後3ヶ月目からスタート)
【会社の状況は落ち着いた。しかしその他の課題も】
スポンサー探しにはかなり苦労しました。
D社は少し特殊な工事に関する資材を取扱っていた為、
興味を持つ企業はありますが、
選択肢は決して多いという訳ではありません。
そのため、1社1社に対して慎重にアプローチを行い、
プレゼンさせて頂く機会を多くするような活動を行いました。
【スポンサーを探す上での最大の課題とは】
スポンサー探しに苦労した要因はそれ以外にもあります。
ズバリ【金融機関の借入】です。
いわいる再生型M&Aで大きな課題は【金融機関の借入】です。
D社は債務超過の企業でしたので、BS面での評価は0に等しく、
PL(損益)面の評価で金融機関の借入額を弁済できる、
もしくはキャッシュフロー上で弁済できる状況でないと、
事業譲渡、もしくは法的な手続きを加えたM&Aでないと成約が難しかったのです。
M社長の望みとしては、基本的には法的な手続き
(民事再生や事業譲渡後の会社の精算)
という手法は取りたくはないという考えでした。
それは取引先に迷惑をかける点、
D社自体を存続させたという想いからです。
もちろんM社長個人としても持ち家であり、
まだ子供も学生ということで、自身の法的な手続き
についても避けたいという想いでした。
そういった面からもスポンサー探しは難航しました。
【最後は何を優先するのか。M&Aで成功するための社長の覚悟とは】
M社長とは何度も面談を重ね、弊社からは
「現在の状況で100%の望みを満たすことはできないと思います。」
「最終的に何を優先するのかしっかり決めて、そこだけはしっかり守りましょう」
というお話の中で、
M社長からは
「面談当初の想いの通り『とにかく従業員と取引先には
迷惑をかけたくない』ということを第一に
スポンサー選定をお願いします」
というお言葉を頂きました。
【M社長の覚悟が良い結果と生んだ】
スポンサー探しを行って3カ月が経過した頃(ご依頼頂いて6か月程度経過)、
延べ8社程、案件のご案内をさせて頂きました。
そのうち3社に具体的な案件概要等を説明させて頂き、
その中の1社とトップ面談(社長同士の面談)を行わせ頂きました。
面談自体は非常によい雰囲気で進み、
その際スポンサー候補の社長からも
「前向きに検討していますという」というお言葉を頂き、
これで少しは前に進むかなと少し安心したのを覚えています。
面談から1週間ほどたった時に、スポンサー候補の社長から
条件面について連絡がありました。
内容はというと・・・
当初、案件紹介時にD社から
要望していた条件よりも厳しい内容でした。
A社から頂きた条件をM社長に伝え、
「どうしたものかな・・・」という中、
・従業員の雇用継続
・取引先の継続
・金融債務の連帯保証の問題
・法的手続きを取るか取らないか
譲渡代金以外の諸々の問題を
1つ1つスポンサー企業と協議を重ねました。
詳細の条件内容や交渉内容は割愛させて頂きますが、
トップ面談から2か月程度経った頃に
ようやく大枠の合意(基本合意契約の締結)に至りました。
その後はデューデリジェンス(企業の買収監査)を行い、
細かな点の条件修正事項なども出てきましたが、
最終的には社長の想いと覚悟がスポンサー企業に伝わり、
最終合意契約の締結、クロージングを迎えることができました。
クロージングも無事に終わり、帰り際に社長から
「やっと肩の荷がおりました」
という言葉がでてきたのを鮮明に覚えています。
私からも
「とりあえずはですね。本当にお疲れ様でした。
でも、これからが本当に重要ですね。
スポンサーの為、従業員、取引先のためにも
しっかりと職責を果たしていきましょう」
というお話をさせて頂いたのを覚えています。
結果、今回は法的手続きをとることなく、
株式譲渡という手法を取り、M社長には継続して
D社の責任者として働いて頂くこととなりました。
資金面についてもA社から支援を頂けているので、
今後は業績向上のため、従業員一同、
営業の陣頭指揮をとって頑張っていきますとのことでした。
引継ぎ後も細々した問題などもありましたが、
D社とA社は買収後も概ね順調にいっており、
ほっとしているところです。
再生型M&Aは売手側の条件を100%満たすことは非常に困難です。
その際に何を優先し、何を諦めるのか、何を守りたいのかなど、
社長がしっかりと「答え」を持っておくことが必要です。
その「答え」=「覚悟」があれば、スポンサー企業との交渉も
比較的スムーズに運びます。
お互いに譲歩する点、妥協点が見出しやすいからです。
また、再生型M&Aでもう1つ重要なことは、
スポンサー選定期間(6か月から1年程度)の
資金繰り面をある程度、確保しておくことです。
その辺りのスケジュールや資金繰りの計画なども
しっかりとコントロールしながら案件を進めていくことが重要です。
ご相談は無料です。お気軽にお声かけください。
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