経営改善
2019/12/18
法人破産は、業績不振や債務超過などの理由で法人が支払不能となった、もしくはその状況が長く続くと予想される場合に法人破産を選択するしかありません。
経営者個人に影響が出ることは想像できますが、実は必ずしも自己破産しなければならない訳ではありません。
最近では経営者保証ガイドラインも策定され、強く保証要求を行うことは減少しました。
とはいえ、自己破産を必ず回避できるという訳ではありません。
今回は法人破産によって個人破産も必要になるのか、その関係について詳しく説明していきましょう。
目次
法人破産をすると法人の代表者はもちろん、取引先や従業員といった周りの関係者にも影響を与えます。
では、具体的にどのような影響が出るのか見ていきましょう。
会社倒産となれば、商品やサービスの購入先である取引先は売掛金の回収ができなくなってしまいます。
取引先は、債権の貸し倒れになってしまう可能性が高いです。
逆にシェア率が高い商品を販売していた会社が倒産した場合、取引先は仕入れができなくなり、製造や事業にマイナスの影響を与えることもあります。
これらの影響で取引先の資金繰りが悪化すれば、連鎖的に倒産を起こす場合もあります。
特に中小企業は連鎖的な倒産は少なくないので、弁護士に相談して対応について相談しましょう。
それ以外にも売掛先が倒産した場合に保証する保険などもありますので、リスク回避のために検討が必要でしょう。
さらに、会社の消滅となるので、従業員の雇用を維持ができなくなり全員解雇となります。
従業員は新しい仕事先を見つけなければならず、見つかるまでは給料がないので生活に支障で出る可能性が高いです。
一部従業員に関しては、独立行政法人「労働者兼呼応福祉機構」が提供している未払賃金立替払制度を利用すれば、最大で未払給与の8割は支払われる制度もありますので、従業員の方の生活の一部は保証されています。
また、法人側は従業員の未払い賃金や退職金などの対応についても考えなければなりません。
法人破産と会社の代表者個人は別人格と扱われます。
そのため、もし会社が破産となっても代表者の個人資産が差し押さえられるわけではありません。
しかし、代表者が会社の債務の連帯保証している場合は、個人に返済義務が発生します。
もしも代表者が個人の財産で返済ができず支払不能となった場合は、自己破産手続きが必要です。
法人破産により代表者の自己破産が決定すると、その情報は金融事故として信用情報に記録されます。
金融事故が記録されると、内容によって5~10年はブラックリストに入った状態になります。
その間は信用情報に傷が付いた状態であるため、金融機関で融資を申し込んでも審査に落ちやすいです。
また、自己破産の時点で代表者個人のクレジットカードも強制解約の対象になります。
ブラックリスト入りの間は新しいクレジットカードの作成もできないので注意が必要です。
法人とは、商法や会社法、民法などの法律により人格が認められた団体のことです。
そして、法人としての権利や義務を施行し、取引主体となって法に定められた活動ができます。
そもそも、法人の設立や運営を行う経営者は別人格となります。
法人経営が順調にいかず破産になってしまっても、本来は人格が違う経営者個人の自己破産には結びつきません。
実際、大手企業では事業の失敗で経営が悪化した際は代表者の解任や辞任、交替で責任を取らせる考え方が一般的です。
しかし、法人の倒産=経営者の自己破産というイメージが強い理由は、日本では中小企業や零細企業の数も倒産も多く、大手企業のような考え方が浸透していないからです。
日本企業のうち9割は中小零細企業が占めており、法人破産での廃業により代表者個人の自己破産につながってしまうケースは珍しくありません。
そのため、法人破産と自己破産はセットの考え方が強く根付いているのです。
中小零細企業が破産や倒産した際に、経営者個人まで自己破産に追い込まれる原因は中小企業への融資における商習慣が大きな影響を与えています。
信用力が低いと中小企業は融資を受けられず、経営者の個人的な保証によって融資を受けてもらうケースがほとんどです。
これは、銀行融資はもちろん、消費者金融のビジネスローンも例外ではありません。
場合によっては、自分が所有する不動産だけでなく、親族が所有する不動産まで抵当権を与えることもあるようです。
これで会社が破産すれば経営者個人に請求が行き、抵当権が実行されて不動産競売にかけられてしまうでしょう。
例えば、金融機関から1憶円の融資を受けて居る法人が破産となった場合、債権者は保証人となる経営者個人に請求が可能です。
大きな財を成している資産家であれば返済は難しくありませんが、通常、このような大金の返済は厳しいでしょう。
経営破綻に至るまで、自己資産を注ぎ込んだり、親族からお金を借りたりするなどの対応ができますが、それでも事業を立て直せなかった結果が法人破産です。
そのため、保証人になっていいて請求されても、手元に資金はほとんど残っていないでしょう。
結果的に、自己破産の選択肢しかなくなってしまいます。
町工場や家族経営の小さな企業などは、経営者のみならず取締役の配偶者・親族・番頭クラスの従業員まで保証人となっており、全員が自己破産に追い込まれてしまう可能性もあるのです。
法人破産に至っても、自己破産するかどうかは経営者個人の選択です。
個人保証の金額が少なく保証債務を支払えるケースや、抵当権に設定していない所有不動産や車を売却して資金にする、親族などの支援を受けられるなどの状況であれば、自己破産を回避できるでしょう。
自分や家族の生活を犠牲にせず、経済的な立て直しが可能です。
また、金融機関との交渉で一定の条件が満たされており、保証債務を分割で支払っていくことも認められると、自己破産しなくても良い場合があります。
さらに、日本商工会議所と全国銀行協会による「経営者保証ガイドライン研究会」は、経営者保証ガイドラインを2013年12月に策定しました。
ガイドラインは2014年2月1日から適用されています。
経営者保証ガイドラインでは、以下の3点を定めています。
1.経営者に個人保証を求めない
2.経営者の生活を確保する
3.保証債務の免除
ガイドラインによれば、経営者へ個人保証を求めないようにとあります。
もし個人保証をすでに行っており、現実化している場合は、寛容な対応を行って経営者や家族の生活を最低限守り、生活や事業の立て直しができるように定めています。
この方針から、最近は法人破産に至っても、経営者個人が必ずしも破産しなければならないケースは減ってきているのです。
法人破産はマイナスのイメージが強いものの、メリットと言える部分もあります。
メリットとデメリットの両方を把握し、破産手続きの決定を決めることが大事です。
・資金繰りの悩みが解消する
債務を抱えたままでの経営は、常に資金繰りに悩まなければなりません。
清算型の破産手続きでは、法人が消滅することになるので資金繰りの悩みから解放され、精神的な負担もなくなるという点が代表者にとって大きなメリットです。
・債権者からの督促がなくなる
法人破産の手続きは専門的で複雑であるため、弁護士に依頼をして手続きを行うケースが一般的です。
弁護士に依頼した時点で債権者に受任通知を送り、今後の督促は弁護士が窓口になります。
つまり、法人や代表者に直接督促が来なくなるので、精神的なストレスから解放されます。
・税金滞納や社会保険料の支払い義務から解放される
法人破産手続きが終了すると法人格は消滅します。
それにより債務だけではなく、滞納していた税金や社会保険料の支払い義務からも解放されます。
もちろん、代表者が納税義務を負う必要はありません。
ただし、代表者が保証人として納税保証書を提出している場合は、金融機関と同じく納税義務を負うことになります。
・代表者の債務が免責される
代表者が連帯保証人となっている場合、法人の債務は個人で対応が必要です。
法人破産と同時に代表者個人も破産申し立てをすることで、法人は消滅し、一方、代表者は債務が免責されます。
これにより、代表者個人は経済的な再建を進めることが可能です。
・債権者への迷惑を最小限に抑えられる
倒産した法人を放置すると、債権者は償却処理のために裁判を起こして、強制執行の手続きを取ります。
そして、強制執行ができなかったことを示す「執行不能調書」の取得が必要なので、訴訟や執行のために手間と費用がかかってしまいます。
破産手続きを行えば、債権者はその手続きを通じて貸倒処理が可能です。
貸倒償却の手続きができるので、債権者としては中途半端な状況が継続するよりも、会計上、明確に処理できるというのはメリットと言えます。
・事業の継続が不可能
清算型の法人破産は会社の存続をできないので、事業の継続は不可能となります。
会社で働く従業員は職を失うことになるので、その点を理解しておく必要があります。
・代表者個人は信用を失う
債務を支払えず、さらに会社を消滅させた事実は、会社だけではなく代表者個人への信頼を大きく下げることになります。
取引先や顧客、従業員など事業に関わる全ての人はもちろん、世間や金融機関などからの信頼は下がるでしょう。
しかし、夜逃げや第三者を保証人に選任して巻き込むなど不適切な対応をしている方が印象は悪くなります。
適切な時期で法的な清算を行い、誠意を持ち、きちんと責任を果たした方が信頼の回復は早いです。
・財産を失う
会社の財産は全て失われます。
連帯保証人になっている場合は代表者も自己破産に伴い財産を手放さなければなりません。
しかし、個人の自己破産では自由財産の確保が可能です。
全ての財産を手放すと経済的更生が図れないため、法律では自由財産と呼ばれる一定の財産は処分されず、破産者の手元に残すことが可能です。
具体的に残せる財産の条件は次のようになっています。
1.破産手続開始が決定した後に新しく取得する財産(給料など)
2.差押えが禁止されている財産(衣服や家具、食料などの生活に必要なもの、給料の3/4など)
3.99万円以下の現金
4.自由財産拡張により生活に必須と判断された一定のもの(預貯金、生命保険、自動車など)
5.換価処分が難しく財産管財人が破産財団から放棄されたもの(価値のない不動産など)
法人経営を続けるためには、破産しないことが一番です。
では、法人破産を回避するにはどう対応していけばいいのか、その方法を見ていきましょう。
負債の返済が難しく資金繰りが苦しくなると感じた時点で、会社破産や再生に強い法律事務所や専門家に相談をおすすめします。
相談のタイミングが遅くて法人破産を選択せざるを得なかったというケースは多いです。
そして、相談した上で第三者の支援を受けるためにM&Aの検討、もしくは自力で再建の方策を考えていかなければなりません。
M&Aは廃業や倒産の回避に活用されるケースは多いです。
赤字や業績不振でも事業にニーズがあり、再建が見込める場合は積極的に買ってくれる会社はいます。
買収先が豊富な資産を有していたり、再建経験があったりすれば倒産せずに事業は継続されます。
また、従業員の雇用も維持されるケースが一般的です。
代表者は譲渡の際に退職や会長・相談役・顧問などの役職に就くケースがありますが、買収した会社が代表として残ってほしいとお願いされる場合もあるでしょう。
金融機関と交渉し、支払期限の延長や毎月の支払額を減額してもらうリスケジュールをすることで、資金繰りに余裕が持てます。
そのうちに自主再建を目指していきましょう。
客観的な事実に基づき、現実的な再生計画を提出すれば、金融機関はリスケジュールの応じてくれます。
また、再建方法には民事再生や任意整理があります。
民事再生は裁判所の介入があり、債権者の中に再生計画に対して反対があっても多数決で同意を得られれば再建が可能です。
一方、債権者全員から同意を得られそうであれば、裁判所を介入せず、直接債務の減額などを交渉して再建を目指す任意整理も選択肢になります。
いずれも交渉や手続きに難しい部分があるので、専門家のサポートを受けた方がスムーズに再建を進められるのでおすすめです。
自己破産はデメリットばかりではなく、保証債務の求償を受け払える見込みがない時や終わらない返済で生活に苦労するのであれば手続きを行った方が良いです。
自己破産をすれば、全ての債務から免れます。
だからと言って、「法人破産をしたから自己破産もした方が良い」と安易に決めないようにしましょう。
経営者保証ガイドラインの策定に伴い、一定部分において法人と個人を切り離した考えを金融機関も行うようになってきました。
また、資金繰りが苦しくなる前にM&Aや自己再建などを行い、倒産や廃業を回避する方法は色々あります。
法人破産自体を回避できるように、経営者は早い段階で専門家に相談し、破産せずとも経営改善できる方法を選択してください。
ご相談は無料です。お気軽にお声かけください。
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