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経営改善

経営者保証ガイドラインを運用するメリットと活用事例とは?

2020/01/04




中小企業の経営者にとって経営者保証ガイドラインは非常に重要なキーワードです。


経営者保証ガイドラインの具体的な内容は

1.経営者に個人保証を求めない

2.経営者の生活を確保する

3.保証債務の免除

です。


経営者保証ガイドラインが積極的に運用されることにより、中小企業における円滑化した事業承継や事業再生/再生型M&Aの実施など多くのメリットがあります。


今回は経営者保証ガイドラインの具体的な内容、経営者保証ガイドラインが運用されることにで中小企業の経営者がどういった恩恵を受けるのかについて詳しくお伝えさせて頂きます。

>>債務超過が経営に与える悪影響とは?


経営者保証に関するガイドラインとは



日本商工会議所と全国銀行協会によって共同で設置された経営者保証ガイドライン研究会が2013年12月に策定し、2014年2月1日から適用されている中小企業団体および銀行、日本政策金融公庫など金融機関団体共通の自主的ルールです。


現在、中小企業庁でも令和2年4月から事業承継における経営者保証に関するガイドラインの特則の実施が予定されています。


中小企業への融資においては、経営者の個人保証が求められるというのが、これまでの商慣習のように当たり前に行われてきました。


ですが、経営状態が悪化して廃業や倒産に追い込まれた場合、経営者が債務を肩代わりすることで、経営者個人やその家族の生活が成り立たなくなる弊害が生まれていました。


経営者として事業の再建や新たに経営をリスタートすることが難しくなるとともに、家族との離婚や別居など家族が離散してしまうケースも少なくありません。


そこで、こうした弊害を防止し、経営者への個人保証を求めないことや、既に個人保証を行っている場合にそれが現実化してしまった場合、寛容な対応を行い、経営者やその家族の生活を最低限守り、生活の立て直しや事業のやり直しなどができるよう定めたのが、経営者保証に関するガイドラインなのです。


経営者保証のガイドラインで定められる、大きなポイントは3点あります。

1.経営者に個人保証を求めない

2.経営者の生活を確保する

3.保証債務の免除

以下で個別にご紹介していきます。


経営者に個人的保証を求めないこと



第一に、法人と経営者個人が明確に分離されている場合は、経営者の個人保証を求めないことが挙げられます。


個人事業主の場合は別として、法人と経営者というのは本来別人格です。


ですが、これまでは中小企業においては、法人イコール経営者個人といった取り扱いが金融機関からなされており、経営者が事業のための多額の資金を借り入れる際に個人的に保証するのが一般的でした。


そのため、いざ経営が思わしくなくなり、弁済計画を立てるのも難しくなって、返済が困難になった場合に会社が倒産するだけでなく、経営者が個人的に多額の保証債務の請求に迫られ、立ち行かなくなるケースが非常に多くありました。


家族の生活が成り立たなくなって離婚する、仕事も失われて生活が困難になり、返済の負担に耐えきれずに自殺するといった事例も少なからずあったのです。


こうした悪しき慣習を解消し、法人については経営者への個人保証を求めないように、銀行などに自主的なルールの履行を求めるのが経営者保証に関するガイドラインの1つ目のポイントです。

経営者の生活を確保すること



第二のポイントとして、既に多額の個人保証を行っている事例が現実化してしまった場合についても定めています。


個人保証をしている場合でも、早期に廃業や事業再生等を決断した場合には、金融機関には経営者個人の一定の生活費を保障することや生活の場を失わないように配慮することが求められます。


具体的には倒産時に保障される自由財産99万円に加え、年齢や家族構成などに応じて100万円~360万円を残してあげるよう配慮しなければなりません。


また、成功をおさめていたときに建てた豪邸は別ですが、豪邸は競売などにかけられることになったとしても、華美でない住まいに住み続けられるように配慮してあげなくてはならないのです。

保証債務の免除



第三として、現実化した経営者個人の保証債務の履行にあたり、生活費などの保障された部分を除いて、その時点での個人資産をもってしては返済できずに債務が残った場合、原則として免除するようにと定められました。


極めて単純化して事例を挙げれば、たとえば、3,000万円の個人保証をして事業がうまくいかなくなってしまった場合に、その時点での個人資産が1,500万円であったとします。


最低限の生活費などとして認められた額が300万円であった場合、1,200万円を支払えば、残りの1,800万円は免除してもらえる、といった話です。


こうしたフォローアップを施すことで、これまで問題となっていた経営者の個人保証の弊害を解消し、経営者が早期に事業再建を図ったり、一からやり直したりして、思い切った事業展開などができるように支援しようというものです。


第三者保証人となった場合も、経営者本人と同様に一定の生活費の保障や、払いきれない場合の残債務免除が受けられます。


これまで、中小企業の経営者は個人保証を求められることを懸念し、家族のことなどを考えると思い切った事業展開ができないことがありました。


経営者保証に関するガイドラインが実行されることで、思い切った事業展開やチャレンジができると期待されています。

制度の策定の背景



経営者による個人保証には事業を確実に行い、会社を成長させていかねばならないという経営者の責任を明確化し、自身の規律としてモチベーションアップに役立つという側面もありました。


また、信用が低い中小企業の信用補完として経営者個人が保証することで、中小企業が資金調達がしやすくなるといった側面も持ち合わせていました。


ですが、経営者の個人保証に依存するのが慣習のようになると、経営者の交代がしにくくなり、円滑な事業承継の阻害や保証債務の残存リスクを恐れて、経営者による思い切った事業展開や早期の事業再生がしにくくなるという問題も抱えていたのです。


これらの課題を解決するために、中小企業が銀行などから融資を受ける際の契約時や個人保証債務の履行時において、中小企業、経営者および金融機関による対応についての中小企業団体・金融機関団体共通の自主的ルールが設定されたのです。

経営者保証ガイドライン適用にあたっての課題や運用について



上記の3つのポイントを見ると、経営者にとって有利で、金融機関にとってはこれまでの慣行を大きく覆す対応を迫られることになります。


もっとも、経営者保証に関するガイドラインには、より細かなルールも定められています。


まず、融資の際には従来のような経営者への個人保証を求めないことが定められていますが、それには法人と経営者個人が明確に分離されていることが求められます。


どういうことかと言えば、法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されており、法人と経営者との間の資金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えないことなどの条件を満たすことが必要です。


また、個人保証を得ずに融資を行うとなれば、それ以外の代替手段を求めるのが金融機関としての与信のポイントになってきます。


そのためのルールの指針として、融資先が将来にわたって次のような要件を充足すると見込まれるかを調査し、経営者保証のない融資ができるか、経営者保証を代替する融資手法を採用すると定められているのです。


法人のみの流動資産や収益力で返済能力があると判断し得ることや、法人から適時適切に財務情報が提供される見込みがあることなどが挙げられています。


また、経営者などから物的な担保融資があることも要件の1つに挙げられています。


ということは、融資を受ける時点で法人が潤沢な資産がある、または今後の収益が見込める状態にあるか、もしくは、経営者の個人宅や所有地、法人所有の本社や工場といった不動産に抵当権などが付けられないと、融資が難しくなるかもしれません。


それなら、従来の個人保証のほうが借りやすいではないかと経営者からも不安がもれそうです。


そこで、金融機関がやむを得ず経営者保証を求めなければならないような状況にある場合には、保証契約について不安を生じさせないよう、丁寧かつ具体的に説明をしなければならないとしました。


そのうえで、保証金額を従来のように融資額と同額とするのではなく、保証人となる経営者個人の資産や収入状況、信用状況などを総合的に勘案して、経営者個人に合わせた保証額にするよう促しています。


経営者保証ガイドラインを適用するにあたり、どのように運用されているのでしょうか?


ここで、活用事例をいくつか挙げてご紹介していくので参考にしてみてください。

新規借入や借換時の活用事例



保企業が金融機関から新規借入または借換を行う際、経営者保証ガイドラインの適用により、経営者保証なしで融資を受けられる可能性があります。


宿泊業者が新規の事業計画を目的に、主力取引先の銀行に借入を希望した事例があります。


借入金を要請した宿泊業者は公認会計士による監査をしっかり受けており、法人と経営者の関係性もきちんと区別・分離されていました。


また、定期的に営業実績や資金繰りなど経営状況の報告や直近の試算表の提出、公認会計士による決算資料の作成などで情報開示に透明性があり、取引先である銀行とは良好な関係でした。


銀行側は経営者保証ガイドラインに基づき融資の検討を行い、事業経営の実現性の高さや達成に銀行の支援が欠かせないという合理性を判断し、経営者保証なしでの融資が実行されています。

保証債務履行時や廃業/倒産時の活用事例



廃業・倒産時、その法人・会社の債務は経営者等の連帯保証人が保証債務を支払う必要があります。


経営者保証ガイドラインを利用して保証債務整理を行う場合、原則は規定に則って裁判所で行う法的債務整理ではなく、準則型私的整理を行います。


私的整理は債権者と債務者が協議し、倒産または再生を図る整理方法です。


しかし、純粋に債権者との合意で行われる私的整理はやや不透明さがあり、また合意を得られにくいという課題があります。


そのため、経営者保証ガイドラインでは一定の準則・ルールが定められた準則型私的整理で、一体整理で行うことを原則としているのです。


経営者保証ガイドラインを活用した債務整理では、信用情報登録機関に保証人の情報の登録や報告が行われないので、廃業・倒産後も融資やクレジットカードの作成などの審査への影響は響きにくくなります。


廃業・倒産時の活用では、早期再生で発生する回収が私的整理により上乗せするため、会長と社長の個人保証がガイドラインの適用対象となり、免除されている事例があります。


同時に介護の必要性を勘案し、介護に必要な費用や一定期間の生計費・生活費等を手元に残せました。


また、別の事例では債務整理終結後の申立てだったので、自由財産の範囲をオーバーする資産は保証人に残せませんでした。


しかし、債務整理の事実が信用情報機関に記録されないメリットがあります。


さらに、自宅を換価して住宅ローンの弁済を行ってもローン債務は残る事情から、弁済を継続した状態で住み続けられています。

事業承継時の活用事例



事業承継では、経営者個人が抱える債務や信用保証がよく問題に挙がり、解除されていないと後継者は債務と保証を受け継がなければなりません。


経営者保証ガイドラインでは、事業承継時の既存保証契約の見直しに関するルールも定めています。


ガイドラインを作成し、一定条件を満たしている場合は、金融機関が経営者の保証契約の解除に応じてくれる場合が高まるでしょう。


過去の事例では、一度保証解除を申し込んだところ、法人と経営者の分離・区分が不十分で認められませんでした。


しかし、事業用資産は法人の所有であり、役員への貸付もなく情報開示にも積極的で、ガイドラインで求められる経営・財産状況をクリアしていたため、銀行側は保証解除を認めています。

専門家派遣制度



経済産業省は、経営者保証ガイドラインの活用を促進させるために、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)の相談窓口で受け付けています。


さらに、中高機構はガイドラインを活用したい方に向けて、専門家派遣制度を作りました。


専門家派遣制度とは、ガイドライン事務局や商工会議所、中小機構の地域本部、取引先の金融機関などで相談・申し込むと、年3回までは無料で専門家が派遣される制度です。


具体的には、債務整理では弁護士、経営状況の改善では税理士・公認会計士・中小企業診断士が派遣されます。


再生・精算時の手続き、ガイドラインが求める体制を構築するためのサポートを受けることが可能です。

経営者の破産を回避するためのM&A



破産手続きを回避する手段として、M&Aを行う経営者は増加傾向にあります。


しかし、本当に倒産を回避できるのか、赤字でも売却が可能なのかM&Aに関する疑問の答えと事例を見ていきましょう。

株式譲渡や事業譲渡による倒産の回避方法とは



M&Aでは、第三者に自社株式を売って経営権を譲渡する株式譲渡と、会社ではなく事業の全てまたは一部を売る事業譲渡という2つの手段があります。


株式譲渡で経営権が第三者に渡れば、その人が持つ経営再建のためのノウハウを受けられ、経営状況が良好になれば倒産は回避されるでしょう。


事業譲渡では、譲渡で得た利益を会社の資金に配当でき、合理的に既存の事業を強化できます。


また、サブ事業や不採算事業を手放すことで、採算が見込める事業を主力にする体制ができるので、結果的に経営の建て直しにつながるというわけです。

赤字や債務超過でも売却ができる



赤字会社や債務超過でも企業を売ることは可能です。


M&Aでは、会社の評価を示す企業価値から売却額が決まっており、それを決めるのは買い手となる企業です。


買い手側は様々な理由から買収を行っており、OBJを達成できると見込める企業であれば価値はあると判断します。


実際は決済書の数字や利益、役員報酬以外にも、従業員や技術力、取引先など数字では出せない資産も踏まえた上で評価が付けられているのです。


そのため、赤字会社や債務超過でもM&Aを行える可能性は十分にあります。

赤字会社の売却に関する具体的な事例



電子機器メーカーの日本電産は、約30社の赤字会社を買収した実績を公表しています。


買収の基本方針には、経営者と従業員を代えない・ブランドを残す・買収後は数人の支援を出して再建を図り、その後は全員引き上げるという3つの方針を掲げています。


つまり、完全な統合ではなく、買収対象の企業のブランド力や強みを生かしたまま、再建に協力することを重視し、負債を抱えた赤字会社から黒字会社へと転向させてきました。


積極的なM&Aにより日本電産自体の規模拡大と増収増益になったと同時に、買収対象の企業は倒産から逃れて経営再建に至ったという、両者にメリットがある検証結果を残しています。

まとめ



経営者保証ガイドラインについては、今後各金融機関において積極的な運用が進められていくでしょう。


このことにより中小企業においては、スムーズな事業承継や個人保証を取らない融資などが浸透してくと考えられます。


既存融資の停止条件・解除条件などは依然ハードルが高いと言わざるを得ません。


財務基盤や現状に対する厳格な審査がありますので、既存融資の保証解除は非常に困難です。


一方、事業再生フェーズの企業において、再生型M&Aや事業譲渡後の会社の清算などにおける経営者への責任追及に関しては、経営者保証ガイドラインの運用により、以前に比べ各金融機関も柔軟な対応を取り始めています。


つまり、経営者保証ガイドラインの運用においては2つの側面があり

● 優良な中小企業の事業承継等においては、経営者の個人保証を取らないことによるスムーズな事業承継が行われる手助けとなります。

● 財務状況が厳しい中小企業においては、以前個人保証は解除されないが、万が一、法人の清算、廃業などを選択した際に負債が一部残る場合でも、今後の経営者の生活を十分に考慮した対応を各金融機関は取ることになっていくと考えられます。


各金融機関が民法改正も相まって、これから経営者保証ガイドラインの更なる徹底を図っていく流れとなるでしょう。


そうすれば中小企業の経営者にとって、今まで後継者問題や抜本的な経営改善をためらう原因となっていた、個人保証の適用要件が緩和され、経営に関する決断がよりやりやすくなる環境となるでしょう。

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