M&A用語集
2019/01/08
法務デューデリジェンスとは、企業買収を行うにあたり、買収する対象企業を法務上のトラブルやリスクがないかについて調査する手続きです。
法務デューデリジェンスを行うにあたって、許認可の引継ぎについては注意して調べておく必要があります。
許認可が引継げない場合などは、そもそも売却できないという事態にもなりますので、注意が必要です。
それでは、法務デューデリジェンスの具体的な調査内容や注意点、また、その対処方法などについて詳しく見ていきましょう。
法務デューデリジェンスはM&Aを行うに先立ち、対象企業を買収した際、法務上に問題点がないか、現在問題を抱えていても改善は可能かなど法務上のトラブルやリスクについて調査する手続きです。
調査対象となる範囲は幅広く、会社組織や財務内容(資産・負債など)、許認可や知的財産権、契約内容や契約トラブルの有無、人事や労務など多岐にわたります。
対象企業の登記簿謄本などをはじめ、株主総会および取締役会議事録や主要な契約書、人事労務規程などの社内規程の閲覧などが専門家(基本的には弁護士が担当)を通じて実施されます。
取引先や顧客との契約関係のライセンスの問題、会計上の不正行為や法律違反などの違法行為がないか、あるいは取締役が訴えられる、その他にも訴訟の火種となるようなトラブルがないかについて調査を進め、事業の移転の際に障害となる法的事項はないかを調査します。
買手企業は、法務ディユーデリーの調査結果をもとにM&Aの実施の有無や、M&Aをする場合に契約書に特別な条件などをつけるべきかを検討します。
特に注意したい法務問題の1つとして、許認可問題が挙げられます。
M&Aを行うにあたり、売手、買手企業を問わず、事前に許認可を与えた関係当局への相談は必ず行いましょう。その際に事業主の変更に伴い、報告が必要なのか、届出がなどが必要かを確認しなければなりません。
また、現在取得している許認可の引継ぎが許可されているのか、事業を承継できるかの根本問題に関わるので、しっかりとした確認が求められます。
対象企業が事業に関して取得している許認可を1つひとつ調査するとともに、それに関する書類をしっかり調査しなくてはなりません。
もしも、新たに許認可を取得する必要性がある場合は、余計な時間がかかりますし、仮に条件を満たさないなどで許認可が降りなければ、せっかくM&Aをしても事業の継続は困難となってしまします。
許認可の引き継ぎや条件を整えての新規取得に時間がかかれば、M&A全体のスケジュールにも影響することになりますので、しっかりとした調査と判断、必要な手続きのスムーズな実行が求められます。
対象企業が事業を営むうえで特許権のような知的財産権の使用が重要な要素である場合も多いです。
知的財産権が法務上では誰の所有となっているのか、M&A取引実行後にも継続して使用するうえで、法務上どのような手続きが必要になるのかも精査しなくてはなりません。
もし、承継ができないとなれば、M&Aによる目的や成果が期待できなくなります。
取引先との契約書にチェンジ・オブ・コントロール条項がある場合には、注意が必要です。
ちなみにチェンジ・オブ・コントロール条項とは、例えば、ある一定の規模の会社と取引する際に、取引基本契約書などを締結することがあると思います。
その契約書の中に、
という項目があるかと思います。
この項目がチェンジ・オブ・コントロール条項です。
M&Aなどによって企業の実質的所有者である株主の構成が大きく変更になった場合に、契約を解除できるという条項です。
M&Aを実施しても主要な取引先がチェンジ・オブ・コントロール条項による契約解除に踏み切れば、対象会社の事業の継続や成長に大きな支障を及ぼす虞があり、M&Aの目的が達成できなくなります。
また、偶発債務や簿外債務がある場合や、将来的に金銭の支払いが発生する可能性がある法務上のリスクがないかも、十分に精査しましょう。
現時点で債務としては現れていなくても、契約上のトラブルや社内で起こされている不正行為や違法行為、労務上のトラブルをはじめ、重要な訴訟や紛争が生じている場合には、将来的に損害賠償などの支払いが発生するリスクがあります。
違法行為や訴訟などの内容によっては、M&Aを止めるのも1つのリスク回避策です。
また、あらかじめ損害賠償額や和解額を見積もったうえで、譲渡価額からあらかじめ減額をしたり、契約書中の補償条項において損失額が顕在化したりした場合は売り手が補填することを定めることで、M&Aの実行前にリスクの軽減や対策をとることも可能です。
中小企業のM&Aにおいて法務デューデリジェンスまで詳しく行うという会社は多くはありません。
どちらかと言えば、財務デューデリーに力を入れており、法務デューデリジェンスに対しては、譲渡契約書の中で、損害賠償条項を盛り込むことでリスク回避をしているというのが現状です。
また、許認可の引継ぎに関しては、クロージング(決済)の条件として、事業主が変更しても許認可の引継ぎが可能であることの確認が取れた段階で決済をするという方法でリスク回避を行っているケースが多いです。
中小企業のM&Aの場合、譲渡代金が1億円未満の場合は、こういったケースが多いと言えます。
買手企業も買収するにあたり、リスクは回避したいが、買収にかかるコストは抑えたいと考えるものです。
買収にあたり、すべてのデューデリーをきちっと行う場合は数百万単位で費用がかかります。
買手企業としては、将来のリスクと買収コストを天秤にかけ、どの程度までのデューデリーを行うかを決めているのが現状です。
法務デューデリジェンスは、買収する企業の法務的なリスクを調査する作業です。
具体的には、取引先との契約内容や現在抱えている訴訟があるか、許認可などの権利関係の引継ぎが円滑に行えるかなどを調査します。
中小企業のM&Aにおいては、詳細な法務デューデリジェンスまで行うことはあまりありません。
その代わり譲渡契約書内においてリスク回避の条項を加えることで対処しています。
この部分においては、M&Aアドバイザーの助言やアドバイスが重要になります。
経験豊富なアドバイザーに依頼することで、法務的なリスクの回避やどの程度のデューデリジェンスが必要かなど適切なアドバイスを得ることができます。
自社にあったM&Aアドバイザーを選ぶには「5つの質問」を行い、その会社が具体的に御社にとってベストな依頼先かどうかチェックすることが重要です。
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