M&A
2019/01/15
アドバイザーの仕事は売手/買手の条件面の調整と案件成約のための実務支援です。
近年中小企業においてもM&Aが盛んにおこなわれるようになりました。
その支援を行っているのがM&Aアドバイザーです。
M&Aアドバイザーが具体的にどのような業務を行っているのか、理解している経営者は意外と少ないのではないでしょうか?
高い報酬や年収を得る職業でもあるM&Aアドバイザーは具体的にどのような業務を行っているのでしょうか?
今回はアドバイザーの業務内容から現在のM&Aアドバイザーに求められる能力まで、M&Aアドバイザーに関して可能な限り詳しくお伝えします。
目次
M&Aの仲介会社やM&Aアドバイザリー会社に売却を依頼すると担当のアドバイザーが付きます。
基本的には会社の売却先の紹介や交渉などを依頼される経営者(オーナー)と業務委託契約を締結し、その委託された業務の範囲内で支援を行います。
一般的な業務委託の内容は
(1)会社や事業の売却及び買収(以下、本件取引という。)の候補となる先の探索・選定に関する提案・助言
(2)本件取引のスキーム等の助言
(3)本件取引の交渉および諸手続きに関するスケジューリング
(4)本件取引に関する交渉の支援、助言
(5)本件取引に関わる合意書、覚書、契約書等の各種文書の草案の作成支援
(6)弁護士・公認会計士その他外部の専門家の紹介およびそれらとの折衝
(7)その他本件取引に関するアドバイザリー業務全般
です。
こういった内容の業務について、売却を希望される企業から委託を受け、業務を遂行していくことがM&Aアドバイザーの仕事になります。
上記の内容はあくまでも業務委託契約に記載されている内容です。
実務的な部分で言えば、
1.売却条件(譲渡価格、譲渡条件、スケジュールなど)を決定する
2.売却対象企業の簡易的な企業価値の算定
3.売却先に提出する譲渡企業の会社概要等の資料の作成
4.売却先の紹介、選定作業
5.売却先への事前プレゼン
6.売却先との面談や交渉、契約書作成実務
7.売却後のフォロー
こういった一連の業務を売手側の経営者の側に立ってアドバイスや実務的な支援をすることがM&Aアドバイザーの仕事です。
具体的な業務は上記の内容ですが、この一連の業務を滞りなく遂行するためにはアドバイザーにもそれなりの能力が求められます。
税務、財務、会社法などの企業に関する知識はもちろん、売却対象となる企業の業界知識や経営に関する知識も備えておく必要があります。
アドバイザーの最も重要な仕事は売手企業、売却先との条件面の調整です。
そのためには一定のコミュニケーション能力が求められます。
近年はその能力に加えてご依頼頂いた中小企業を売却できる状況するにコンサルティング能力も求められています。
なぜコンサルティング能力まで求められるのか?
それはM&A市場の最近の状況が大きく関わっています。
M&Aという言葉が新聞などで頻繁に目にするようになって10年程度経ちました。
その頃と今では実際に取扱われてる企業の規模などは大きく変わり、ここ数年は中小企業もM&Aを頻繁に行うようになりました。
10年前は企業の合併、買収という、どちらかと言えば、上場会社と投資ファンドが主要なプレイヤーでした。
それから、未上場の企業や中小企業もM&Aを行うようになり、近年のトレンドとしては事業承継時の親族外(第三者)への譲渡案件がメインでした。
そういった企業はある程度、財務状況も問題なく、組織的な問題もない、いわゆる譲渡代金は高いが譲渡しやすい会社でした。
多くのM&A仲介会社やM&Aアドバイザー会社がそういった案件を中心に取扱ってきたので、会社の売却や事業の譲渡案件の獲得競争が激化するという結果になったのです。
そのような状況から徐々に譲渡案件の規模は小規模化していき、現在のスモールM&A(年商1億円程度の企業のM&A)が多く取り扱われることとなりました。
その結果、単純に右から左に売却先が決まるような優良な案件は少なくなり、大なり小なり何かしらの問題を抱えた企業のM&Aでの売却案件が増えているのが現状です。
もちろん、その流れに合わせてM&Aアドバイザーに求められる能力も変わってきました。
以前は売却依頼を頂いた状況で、そのまま売却先を探せば良かったのが、現在は何かしらの問題の改善、売却できる状況へ導く(問題を処理する)能力がアドバイザーに求められているのです。
現在のM&Aにおいては、アドバイザーに求められる能力が以前に比べて非常に高くなっています。
特に中小企業を中心としてスモールM&Aは、M&Aアドバイザーの能力に依存する案件が増えいるのが現状です。
よって、依頼するM&Aアドバイザーの能力がM&Aの結果に大きく影響してしまうのです。
どのM&Aアドバイザーに依頼するかは慎重に選ばないと案件成約の結果に大きな影響が出てしまうことは事前に理解しておきましょう。
そもそもM&Aアドバイザーを入れて取引をした方がいいのかどうか迷われる経営者も多くいるのではないでしょうか?
仮に会社の売却や事業の譲渡を検討しているのであれば、買手企業を紹介してもらうというメリットがあるので、M&Aアドバイザーに依頼するというのは理解できるかと思います。
では、すでに社長同士が知り合いで、その会社へ譲渡することが決まっている状況でもM&Aアドバイザーを入れるメリットがあるのでしょうか?
「手数料を払うのがもったいないから契約書を弁護士に確認してもらう程度でいいでしょ?」
とお考えの経営者の方も多くいることでしょう。
知り合いの経営者同士の場合などは、M&Aアドバイザーを入れずに事業の引継ぎを行っている事例など多く存在するのも事実です。
では、実際はM&Aアドバイザーをいれて会社や事業の売買を行った方がいいのか、もしくはM&Aアドバイザーを入れずに行っても問題はないのか、その辺りについて見ていきましょう。
まずは、M&Aアドバイザーを入れるメリット・デメリットからです。
M&Aアドバイザーを入れるメリット・デメリットですが、下記のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
|
それぞれ個別に内容を見ていきましょう。
M&Aアドバイザーを入れることでのメリットで一番に挙げられるのが、価格交渉などがスムーズに行えるという点です。
経営者の中には、金額の交渉が苦手で…という方もいらっしゃいます。
どちらかの言い値で決まってしまう場合もありますので、双方にとって過剰な金額の取引とならないためにも、M&Aアドバイザーをいれて価格交渉は行った方が大きな損失はないでしょう。
M&Aアドバイザーを入れて取引する上で、最も重要視される(重要度が高い)のがリスク防止です。
特に、お互い知った間柄同士の取引の際に、細かな決め事をしておらず後々に問題が発生したという場合は非常に多いです。
具体的にあった事例ですが、M&A成立後におこった問題で本来はM&Aアドバイザーが間に入って調整すればよい事柄でも、調整する役割のM&Aアドバイザーを入れて取引していなかったために裁判になって争ったというケースもあります。
M&Aアドバイザーを入れることで、売手経営者/買手経営者が気が付かなったリスク防止についても、多くの実務経験があるM&Aアドバイザーからアドバイスを受けることでリスク防止ができるはずです。
近年はインターネット上で売手企業、買手企業のM&Aマッチングビジネスができるようになりました。
会社や事業の売却をしたい企業がそのサイトに登録するだけで買手側から問合せがくるという仕組です。
このように売主側がM&Aアドバイザーを入れずとも買手候補を募集することも可能になっているのも事実です。
一方、誰でも問合せができるので、買手側がどういった企業なのか?安心して会社や事業を託せるのかは、正直話を進めてみないと分かりません。
そういった意味では、M&Aアドバイザーから紹介を受けた買手企業の方が、実績がある企業や売手企業とマッチしそうな企業を紹介して頂けるので、売却した後の会社や従業員からすれば安心感はあるかもしれません。
関わる人間が増えれば増える程、スピード感が遅くなってしまうのは事実です。
また、相手方の想いや考え方などM&Aアドバイザーを通して伝えられるので、判断や決断を鈍らせてしまう場合もあります。
この点については、双方が直接やり取りした方が、相手の考えが理解できたり、疑問点などが発生した場合はスピーディに解決できたりなどメリットは非常に大きいです。
M&Aアドバイザーを入れることによる売手側/買手側のデメリットとして経営者が最も思いつくのは、成功報酬の手数料が発生するかしないかではないでしょうか?
実際に会社や事業の売却が決まった際の手数料は150万円から譲渡代金の額にもよりますが、1000万円以上になる場合もあります。
この手数料がネックになって譲渡価格を下げるケースなどもあるので、M&Aアドバイザーを入れるかどうかで迷う際の大きなポイントが成功報酬の発生(成功報酬の額)であることは間違いありません。
上記のM&Aアドバイザーを入れるメリットと成功報酬の手数料を天秤にかけ熟考した上で決めるのも選択肢の1つです。
売手側の企業はM&Aアドバイザーを入れた方がメリットがあります。
会社や事業を売却した経験が多くある経営者は別ですが、基本的に売手側の経営者は会社や事業の売却を多く経験することはありません。
殆ど経験がないこと会社や事業の売却を自身の判断で行うことは非常にリスクがあります。
M&Aアドバイザーを入れるメリットでもお伝えしましたが、
・ 適正な譲渡価格での取引
・ 売却後のリスク防止
この2点だけでもM&Aアドバイザーを入れるメリットは十分にあります。
仮に手数料の問題だけでM&Aアドバイザーを入れるかどうかを迷っているのであれば、M&Aアドバイザーを入れて取引をすることをお勧めします。
必ず手数料以上のメリットを売手側経営者に残してくれるはずです。
また、買収する企業がまだ見つかっていない場合などもM&Aアドバイザーに依頼することで、自社にあった買収先を紹介して頂けるので、そういった面からもM&Aアドバイザーを入れた方がメリットがあると考えます。
逆に買手企業の場合は、M&Aアドバイザーを入れるメリットは売手企業よりも少ないです。
会社や事業の売却を数多く経験している買手企業の場合は特にその様に感じるのではないでしょうか?
仮にM&Aアドバイザーを入れるメリットがあるとすれば、売却案件の紹介を受けることができる点は大きなメリットかもしれません。
独自の案件紹介ルートがあるのであれば、自社での内製化を行った方が、買手企業にとってはメリットがあるかと思います。
M&Aアドバイザーの具体的な業務は下記の通りです。
1.売却条件(譲渡価格、譲渡条件、スケジュールなど)を決定する
2.売却対象企業の簡易的な企業価値の算定
3.売却先に提出する譲渡企業の会社概要等の資料の作成
4.売却先の紹介、選定作業
5.売却先への事前プレゼン
6.売却先との面談や交渉、契約書作成実務
現在のM&Aにおいては、これらの業務を円滑に遂行する能力がM&Aアドバイザーには求められています。
取扱う案件が多岐にわたる(優良企業だけでなく、中小の企業も売却の対象となったため)今までよりも会社売却の成否がM&Aアドバイザーよって決まるケースも増えてきています。
M&Aアドバイザーを入れるメリット・デメリットは下記の通りです。
メリット | デメリット |
・譲渡価格の交渉がスムーズに行える ・譲渡後のリスク防止策などきめ細やかな対応ができる ・売手側からすれば安心した買手企業を紹介して頂ける
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・スピード感の欠如 ・成功報酬の手数料が発生する |
売手側の企業については、M&Aアドバイザーを入れることを強くお勧めします。
それは
・ 適正な譲渡価格での取引
・ 売却後のリスク防止
この2点だけでもM&Aアドバイザーを入れるメリットは十分にあるからです。
最後に1ポイント
仮に売手・買手が決まっている状況で、M&Aアドバイザー会社に契約や条件面に関する業務を依頼する場合は、成功報酬の手数料の減額を依頼してみてください。
一般的には、契約や交渉のみの業務依頼の場合は、通常の成功報酬の50%程度が相場です。
ご参考になれば幸いです。
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