M&A
2019/03/19
できれば高く売りたい。
多くの経営者が会社や事業の売却の際にそう思うはずです。
では、具体的に会社や事業の売却価格はどうやって決まるのかご存知ですか?
中小企業のM&Aの場合は、売手側が提示した譲渡代金が1つの目安になります。
では、どのような方法で譲渡価格を決めれば良いのでしょうか?
売手側が示す譲渡代金には買手企業を納得させるだけの根拠が必要です。
中小企業のM&Aの場合は3つの企業評価方法(インカムアプローチ/コストアプローチ/その併用)があります。
この評価方法は決算書に依存しており、経営が順調に推移している企業にとっては有効な評価方法です。
事業を承継する際に、必ずしも経営状況は芳しいものとはいえません。
仮に赤字であれば譲渡代金は0円となるのでしょうか?
もしくは売却はできないのでしょうか?
そんなことはありません。
M&Aで買手企業が評価するポイントは決算書など数字に表されている評価以外にも価値を見出し買収してくれる場合も多くあります。
詳しく見ていきましょう。
目次
会社を売却する際の条件を決めるためには、まずは数字が必要です。
どの数値(データ)を参考として、適正な価値で会社は売却代金を算出しているのか?
どういった数字を元に譲渡代金を決めていくかは企業の方針にもよるのですが、多くの中小企業のM&Aで用いられる方法としては営業利益を参考にするものです。
中小企業のM&Aの場合は、将来的にどの程度の利益を生み出せるかで譲渡代金を算出します。
一般的には経常利益の3~5倍の価格で評価されます。
これは言ってみれば、買収される企業の3~5年分を買い取ると捉えてもいいでしょう。
この考え方は、3~5年で投資金額を回収したいという買手側の考え方です。
不動産で言われる投資利回りは20%です。
不動産のように担保もしくは換金可能な資産がある訳ではありませんので、ハイリスクハイリターンと考えれば3~5年での投資費用の回収は納得がいく範囲かもしれません。
この算出方法が、M&Aでは「インカム・アプローチ」と呼ばれています。
かつては会社の純資産を元に譲渡代金が算出されていました。
これが、「コストアプローチ」という方法であり、時価純資産を基準として譲渡代金が決定する方法です。
しかしながら、そうした方法ではかつて隆盛を誇ったものの、今では低調な営業にとどまっている、という企業が過大評価されやすくなってしまいます。
そのため、近年の中小企業のM&Aでは、
「時価純資産」の評価額+「営業利益の3~5年」の評価額=譲渡代金
という方法で企業価値の算定を行っているのが一般的です。
これが、「コストアプローチ」と「インカムアプローチ」を併用した算出方法です。
営業利益から算出される「インカムアプローチ」も単純に利益の何年分という算出方法以外にDCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)というものがあります。
このDCF法(ディスカウントキャッシュフロー)は事業計画を元に決定されます。
会社を売却する企業が策定した事業計画を基に、将来に利益を生む可能性がどの程度あるかを売手企業が買手企業側に説明をしなくてはいけません。
買収する側がその計画に妥当性があると判断した場合、売主が提示した譲渡代金で買い取ることを決定します。
過去の数値からの評価(実績評価)ではなく未来の収益評価なので、非常に不確定な数字をあてにする方法であり、ややリスクのある評価方法かもしれません。
その他にも上場会社や情報開示している競合企業や同業他社を参考にして譲渡代金を算出する「マーケットアプローチ」という方法もありますが、中小企業のM&Aにおいては、
「時価純資産」の評価額+「営業利益の3~5年」の評価額=譲渡代金
が一般的な譲渡代金の算出方法であり、一部DCF法などで利益の算出方法が変わるという認識でよいでしょう。
>>会社売却の時に行うデューデリジェンスって具体的に何をしているのか?
これはでは企業価値を数字ありき(決算書をベースに評価する)で評価する方法を紹介してきました。
しかしながら、企業の価値はそれだけで決まるものではありません。
企業には見えない価値や無形資産があるので、それを元に価値を決めることもあります。
その見えない価値とはどのような要素が加味されるのでしょうか。
まずは取引先が挙げられます。
企業にとってたくさんの取引先を持っておくに越したことはありません。
企業を買収するような大きな企業であればなおさらでしょう。
とはいえ、新規の取引先口座の開設はすぐにできるものではありません。
その相手先が大手企業であればなおさらです。
提携を取り付けるためにも膨大な労力や費用が必要になります。
一方で、売却する企業が多くの取引先を持っているならば、こうしたコストを省略できるでしょう。
これまでに営業しても取引先にできなかった企業が、他の企業を買収することで簡単に関係を結べるとなれば、買収した方が早いです。
こういった理由で取引先の多さで買手企業から評価される事例は数多くあります。
もう一つの無形資産として従業員が挙げられます。
従業員の技術力やスキルが確かなものであれば、それもまた評価の対象となるのです。
企業は通常新入社員を雇用することによって人材を育成しなければいけません。
人材を育成するにもやはり膨大なコストがかかってしまいます。
一方で、企業を買収することはその企業に元いた人材を獲得することも意味します。
M&Aで買収した企業の人材はすでに育成も終わっているので、必要以上コストをかけなくてもよいはずです。
単純にこれから払う給料のことを考えればいいのです。
ですので従業員の数やスキルの高さなども企業価値を高める要素となります。
もっとも、従業員をそのまま数字に置き換えられるかというと難しい問題です。
実際の中小企業のM&Aの現場では、エンジニアなど転職市場でも評価の高い人材や優秀な人材がいる場合は、1人辺りの評価額を決め、譲渡価格に反映させる場合もあります。
その他にも、新たに同程度の人材を確保する場合の広告宣伝費(人材紹介会社への手数料の支払い)などを考慮して譲渡代金の上乗せ材料として交渉するようなケースもあります。
現在は中小企業においても人材不足が経営の大きな課題の1つと言われています。
その解決方法としてM&Aが有効であることを多くの経営者は認識しています。
その点をうまく企業評価に反省させられるかがポイントです。
業種業態も大きな評価の材料です。
買手企業からすれば、今まで社外に外注していた部門を内製化することで、利益率のアップを目指すといって目的でM&Aをおこなう場合もあります。
また、売手企業の顧客リストに対して、自社の商品の販売による利益の拡大を目指してM&Aをおこなう場合もあります。
新規事業の一環や、自社への内製化に適した企業であれば、利益が出ているかどうかは関係ありません。
むしろ売却する企業が行っている業務内容やそれに携わっている人材、資格、許認可に興味をもってM&Aをおこなっている場合は非常にあります。
こういった点も買手企業は評価しています。
DCF法(ディスカウントキャッシュフロー)は将来の計画から生み出される利益に対する評価方法でした。
買手企業も同様に、売手企業をM&Aすることにより将来的に生み出される利益を評価することがあります。
その際に中小企業のM&Aでよく言われているのが、買収後のシナジー効果です。
売手企業を買収することにより、自社の損益がどの程度改善されるのか?
売手企業の業績を自社のリソースを利用することで、どの程度業績が上がるのか?
この辺りの評価は決算書など数値に表れない評価となります。
よって、現時点での損益で買収の可否を判断することはありません。
もちろん業績が良いに越したことはありませんが、現時点の財務状況で投資の可否を判断することは、M&Aによる買収先の選択肢を狭める要因にもなります。
買手企業にとっては、選択肢を広げる意味でもシナジー効果を見る力をつけることがM&Aでの企業成長を助けることになるでしょう。
数字にあらわれない企業の評価をする上で重要になるのがマーケティングの視点です。
マーケティングとは、一般的に市場調査、競合他社の分析、自社の強みや差別化などを把握して今後の自社の営業戦略に役立てるというイメージかと思います。
自社のマーケティング戦略を立てる上で、PEST分析やSWOT分析、3C分析、4P分析などを利用して戦略を立てているのではないでしょうか。
このマーケティング分析の視点はM&Aにおいて非常に有効な方法です。
自社の戦略や強み弱みを理解し、営業戦略のみならず、経営戦略として、弱みを補完するためにM&Aを有効活用する際に非常に役に立ちます。
マーケティングの視点を持つことでM&Aにおいて下記のメリットがあります。
それ以外にも多くの買収候補先を見る機会が増えるため、案件を精査する能力(目利き力)が養われます。そのことでM&Aで成功する確率も上げることができるでしょう。
買収先の評価も決算書だけに頼る評価ではなく、マーケティングの視点を取り入れ、強み、弱み、顧客、セグメント、商品の市場価値などを考慮することで損益にとらわれない企業評価が可能となります。
また、買収後のシナジー効果を考える際も、自社と買収先をしっかりと分析することで、より精度の高い買収後の計画が策定できます。
是非、マーケティングの視点をM&Aに取り入れ、、スピード感を持った企業成長に役立てて頂ければと思います。。
中小企業のM&Aにおいて、企業評価をする際には2つの視点から評価することをお勧めします。
1つ目は、決算書からの評価です。
2つ目は、決算書には表れない事業の評価です。
決算書からの評価については
「時価純資産」の評価額+「営業利益の3~5年」の評価額=譲渡代金
この手法が一般的に用いられます。
もちろん、業種業態など様々な条件で営業利益の評価年数が1年の場合もあれば、10年の場合もあります。
決算書に表れない事業の評価については、マーケティングの視点を持つことが非常に有効となります。
マーケティングの視点から売手企業の強み、弱み、顧客、セグメント、商品の市場価値などを考慮した上で、自社とのシナジー効果を考え投資するかどうかの判断をすることで、買収する先の選択肢は非常に広がるはずです。
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